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「丹後 殺人迷路」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

丹後 殺人迷路小説

初版発行日 1995年9月15日
発行出版社 新潮社
スタイル 長編

私の評価 4.1

POINT】
事件そのものが生きもののように急いでいる!?天橋立から城崎へ……十津川も急いだ。

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あらすじ

真夜中……十津川警部の家の電話が鳴った。電話の主人は八年前、妻殺しで服役していた平野という男だった。一週間前に出所したが、男は殺害した筈の妻を新宿で見たというのだ。ところが、同日、この男はアパートの一室で惨殺されていた。駆けつけた十津川の眼にとびこんできたのは壁にかかれた奇妙なマークと血文字「文殊に聞け!」だった……。いったいこれはどういうことなのか?

小説の目次

  1. 文殊に聞け
  2. 予告殺人
  3. 死のオリエンテーリング
  4. よみがえる死者
  5. パトロンの顔
  6. 亡霊との出会い
  7. 最後の殺人

冒頭の文

電話が鳴っている。が、眠い。
(何時だと思ってるんだ?)と思いながらも、事件発生かなと、十津川は手を伸して、受話器を取った。

小説に登場した舞台

  • 京都駅(京都府京都市下京区)
  • 急行丹後号
  • 天橋立駅(京都府宮津市)
  • 智恩寺(京都府宮津市)
  • 天橋立(京都府宮津市)
  • 傘松公園(京都府宮津市)
  • 天橋立ケーブルカー(京都府宮津市)
  • 宮津駅(京都府宮津市)
  • 特急タンゴエクスプローラー
  • 久美浜駅(京都府京丹後市)
  • 城崎温泉駅(兵庫県豊岡市)
  • 城崎マリンワールド(兵庫県豊岡市)
  • 綾部駅(京都府綾部市)
  • 四所駅(京都府舞鶴市)
  • 三朝温泉(鳥取県・三朝町)
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登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

警察関係者

  • 八木:
    京都府警の警部。
  • 三浦:
    兵庫県警の警部。
  • 中山:
    京都府警の刑事。
  • 森田:
    警察庁の職員。十津川警部の大学時代の友人。
  • 仲田:
    練馬警察署の刑事。去年の10月、柴田敬一郎が焼身自殺した事件を捜査した。
  • 尾上:
    警視庁捜査二課の刑事。十津川警部の同期。
  • 十津川直子:
    十津川警部の妻。
  • 田口:
    中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。

事件関係者

  • 平野栄:
    46歳。平野交易の元社長。8年前、妻殺しで十津川警部が逮捕し服役していた男。1週間前に出所した。池袋駅から車で12分の自宅アパートで刺殺された。
  • 吉田雅美:
    平野栄の恋人だった女性。元モデル。8年前、平野栄が車に仕掛けた爆弾で死亡したとされている。
  • 小城勇:
    30歳。元高校教師。渋谷区神泉のマンションに在住。天橋立ケーブルカーで射殺される。
  • 柴田敬一郎:
    元自衛隊員。陸上自衛隊・朝霞駐屯地にいた。かつてオリンピックのライフル射撃で入賞したことがある。詐欺事件で逮捕され、自衛隊をクビになった。去年の10月に焼身自殺したとされていた。
  • 和田広志:
    陸上自衛隊・朝霞駐屯地の元隊員。柴田敬一郎の高校時代の後輩。城崎マリンワールドで何者かに毒をもられて死亡する。
  • 吉沢誠之介:
    柴田敬一郎とともに詐欺事件に関わったとされる男。
  • 豊田一:
    柴田敬一郎とともに詐欺事件に関わったとされる男。
  • 狩野重之:
    綾部市の資産家。

その他の登場人物

  • 高見吾郎:
    37歳。タレント。8年前、雅美の浮気相手だった男。
  • 日野:
    陸上自衛隊・朝霞駐屯地の一尉。
  • 名取勇:
    27歳。陸上自衛隊・朝霞駐屯地の元隊員。現在は池袋にあるクラブでホストをしている。
  • 小野田:
    練馬消防署の隊員。
  • 細井彰:
    狩野重之に金銭の支援をしてもらった男。世田谷区代田のマンションに在住。

印象に残った名言、名表現

(1)文殊の町と知恩寺。

前方に、大きな寺が見えてきた。二層の山門がそびえ立ち、知恩寺の名前が読める。文殊の町は、この寺の門前町なのだろう。山門に至る道の両側は、旅館、土産物店、射的屋などが、びっしりと並んでいた。

(2)若者特有の全能感。

十津川は、自分を平均的な人間だと思っている。これは、別に自慢でも、卑下でもなかった。彼にも、自分が特別な人間ではないかと思ったりした時がある。十代の後半から二十代にかけてである。

誰でも、自分が特別な人間でありたいと思う時期がある。十津川も同じだったというだけのことなのだ。

(3)事件が急いでいる。

事件自体が急いでいると感じることが、十津川にはある。

もちろん、犯人が、急いでいることによることが大きいわけだが、捜査に当る十津川は、まるで事件そのものが生きもののように急いでいると感じることがある。

感想

奇妙な事件だったと思う。

連続して殺人事件が起こるのだが、いずれも、現場に何かしらのヒントが残されている。もちろん、これらのヒントをもとに捜査を進めていくのだが、このヒントだけを見ていたら、事件の本質が見えなくなってしまう、というものであった。

だから、大局的な視点で、物事を俯瞰的に眺めてみることが必要なのだが、さすが、十津川警部。小さな情報を拾い集めるだけでなく、これらを統合し、全体から眺めてみたことで、事件を解決に導いた。

まさに、「鳥の目 虫の目 魚の目」を使い分けたのだ。

今回の十津川警部の捜査を象徴していた一節があるので、紹介しておこう。

殺人事件の捜査は、ジグソーパズルに似ていると思うことが多い。捜査を進めていけば、小さな事実がわかってくる。それは、ジグソーパズルの小さなピースのようなものである。小さな事実の断片が、いくら沢山集っても、その断片が、事件の何処に当てはまるのかわからなければ、犯人の姿は浮んで来ない。一つ一つの断片が、うまく並べられれば、ジグソーパズルが完成するように、犯人が見えてきて、事件は解決に向うのだ。

十津川警部の思考法の裏側が垣間見えた、そんな作品だったと思う。

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