初版発行日 2007年1月25日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 長編
【POINT】
一瞬も気を抜けない、圧倒的なスピード感。天橋立、城崎、東京、京都、大阪を舞台に繰り広げられるアクショントラベルミステリー!
一瞬も気を抜けない、圧倒的なスピード感。天橋立、城崎、東京、京都、大阪を舞台に繰り広げられるアクショントラベルミステリー!
あらすじ
大江山く野の道の遠ければまだふみも見ず天橋立ー美由紀が営む飲み屋で出会った男は、なぜか、彼女の生まれ故郷を謳う有名な和歌を口にした。数日後、テレビで天橋立に向う特急が爆破され、死亡者も出たとのニュースが。あの男が事件に関係しているのかー疑いをもった彼女のもとに十津川班の刑事たちが訪れて…
小説の目次
- 特急「文殊一号」
- 男の顔
- 城崎へ
- 国道178号線
- 男の肖像
- 最後の殺人
- 最後の爆弾
小説に登場した舞台
- 巣鴨(東京都豊島区)
- 箱根湯本温泉(神奈川県・箱根町)
- 天橋立(京都府宮津市)
- 天橋立駅(京都府宮津市)
- 文珠荘(京都府宮津市)
- 特急「はしだて」
- 傘松公園(京都府宮津市)
- タンゴディスカバリー
- 城崎温泉駅(兵庫県豊岡市)
- 西村屋本館(兵庫県豊岡市)
- 特急「きのさき」
- 香住駅(兵庫県・香美町)
- 大井競馬場(東京都品川区)
- 河原町通り(京都市下京区)
- 関西国際空港(大阪府泉佐野市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 片山明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
その他の警察関係者
- 三浦:
京都府警の刑事。 - 前田:
京都府警の警部。 - 三沢:
神奈川県警の警部。 - 中村:
組織犯罪対策部の警部。
事件関係者
- 岡本美由紀:
京都の宮津市出身。巣鴨にあるバー「プチモンド」のママ。 - 中西武彦:
60歳。著名な弁護士。特急「文殊一号」爆破事件で死亡した。 - 中西啓子:
中西武彦の妻。特急「文殊一号」爆破事件で死亡した。 - 水野和子:
35歳。巣鴨の飲み屋「和子」を営む。 - 加藤昭夫:
38歳。殺人未遂の前科がある男。 - 川野健太郎:
42歳。IT産業の会社の社長。 - 浅井慶子:
女優。32歳。 - 北村喜一郎:
S大学の教授。環境経済学。S大学の学長候補の選挙に立候補していた。 - 本橋邦夫:
中央自動車の取締役。警察庁の元警視。 - 森田誠二:
40歳。元陸上自衛隊の爆発物処理班に所属。元K組の組員。 - 設楽幸恵:
40歳。ファッションデザイナー。
その他の登場人物
- 荒井:
弁護士。 - 井上:
埼玉の自衛隊基地の班長。
本作のツボ
小式部内侍の短歌、
「大江山いく野の道の遠ければ まだふみも見ず天橋立」
のゆったりとした雰囲気と、激しいアクション。この緩急の差が素晴らしい。
総評
本作は、圧倒的なスピード感のある極上のミステリーである。
とくに終盤の勢いは凄まじい。ハリウッドのアクション映画さながらの展開だった。京都の繁華街が次々と爆発し、車が爆発し炎上し、激しい戦い繰り広げられる。河原町通りは戦場と化す。
最後のカーチェイス。大阪の街中を100キロ以上で逃げる犯人、それを追う十津川たち。車からの射撃でフロントガラスが割れる。それでも怯まない西本。「絶対に逃さない」という十津川班の執念が実った。
事件の冒頭から、犯人はわかっていた。しかし、影しか見えず、実像がまったく見えない。名前すらわからなかったのだ。やっかいな犯人をやっと追い詰め、手錠をかける瞬間。筆者に何とも言えない感慨と達成感をもたらした。
それまでの捜査の苦節、激しい攻防線によって、自分が十津川警部になりきってしまったのだ。それぐらいの力強さがこの作品にはある。
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