初版発行日 2004年4月15日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 長編
私の評価
政財界を巻き込んだスキャンダルに、十津川警部が挑戦する!
あらすじ
事件は、東京の高級マンションと、宇奈月温泉のトロッコ電車から始まった。いずれも青酸を注射されて殺されたのだ。両方の事件の被害者に共通するものは何か?捜査の指揮を執る十津川警部は、事件の背後に政財界の大物の存在を知る。しかし、その政治的影響力を考えると、うかつには手が出せない。だが、犯人たちの魔手は、次のターゲットを狙っている。残された時間は少ない。十津川警部の懸命な捜査が続く……。
小説の目次
- 宇奈月温泉
- 渡辺グループ
- 箱根
- 由布院
- 指宿温泉
- 事態急迫
- 最後の戦い
冒頭の文
宇奈月温泉には、JR富山駅で降りて、富山地方鉄道、通称地鉄に、乗り換えて、行く人が多い。
小説に登場した舞台
- 宇奈月駅(富山県黒部市)
- 黒部峡谷鉄道トロッコ電車
- 欅平駅(富山県黒部市)
- 宇奈月温泉(富山県黒部市)
- 名剣温泉(富山県黒部市)
- 強羅(神奈川県・箱根町)
- 小田原駅(神奈川県小田原市)
- 熱海温泉(静岡県熱海市)
- 熱海駅(静岡県熱海市)
- 由布院温泉(大分県由布市)
- 由布院駅(大分県由布市)
- 特急ゆふいんの森
- 特急つばめ
- 西鹿児島駅(鹿児島県鹿児島市)
- 指宿温泉(鹿児島県指宿市)
- 鹿児島空港(鹿児島県霧島市)
- 京都駅(京都府京都市下京区)
- 出雲市駅(島根県出雲市)
- 出雲大社(島根県出雲市)
- 城崎温泉駅(兵庫県豊岡市)
- 城崎温泉(兵庫県豊岡市)
- 有明(東京都江東区)
- 修善寺温泉(静岡県伊豆市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 青木:
富山県警捜査一課の警部。 - 菅原:
警視庁捜査二課の警部。十津川警部の友人。 - 中島:
警視庁捜査二課の警部。 - 田口:
中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。 - 浅野:
大辻代議士の秘書。十津川警部の大学時代の同級生。
21世紀の日本の経済を考える会
- 坂井利夫:
54歳。コンサルタント。元大蔵省の職員。世田谷区成城に在住。黒部峡谷鉄道トロッコ電車の車内で青酸を打たれて死亡していた。 - 小野田康夫:
43歳。国立大学の助教授。経済学専門。東京・月島の自宅マンションで青酸を打たれて死亡していた。 - 小暮裕三郎:
51歳。経営コンサルタント。指宿海岸の岩礁で死体となって発見された。 - 富永安枝:
50歳。人材派遣会社「富永エンタープライズ」の社長。 - 林礼二:
40歳。株式評論家。修善寺近くの狩野川で死体となって発見された。
事件関係者
- 小暮明日香:
小暮裕三郎の娘。『週刊現代』の記者。 - 野口玲子:
銀座にあるクラブ「玲子」のママ。林礼二と親しくしている。修善寺近くの狩野川で死体となって発見された。 - 渡辺圭一郎:
80歳。巨大コンツェルン「渡辺グループ」の会長。 - 影山由美:
渡辺圭一郎がもつ箱根の別荘の住み込みのお手伝いをしていた。N短大のミスキャンパスに選ばれた美人。現在、行方不明。 - 原口秀夫:
渡辺圭一郎がもつ箱根の別荘の管理人。 - 小早川邦夫:
保守党の幹事長。次期総理大臣と目されている。 - 三浦智明:
38歳。K興業の幹部。 - 真田弘:
三浦智明の部下。 - 白川勝:
三浦智明の部下。 - 加藤修三:
三浦智明の部下。 - 川西達男:
弁護士。
その他の登場人物
- 坂井昭子:
坂井利夫の妻。坂井利夫と別居し、札幌に在住。 - 三浦由里子:
六本木のクラブ「渚」のママ。 - 富永純一:
富永安枝の息子。大学生。 - 木下透:
45歳。六本木に事務所をかまえる経営コンサルタント。元「渡辺グループ」の重役。 - 吉浦圭吾:
58歳。かつて渡辺圭一郎がもつ箱根の別荘の管理人をしていた。 - 金子:
京都の祇園にある料理屋「金子」の店主。かつて、渡辺圭一郎がもつ箱根の別荘の料理人をしていた。 - 小山美津子:
渡辺圭一郎がもつ箱根の別荘の通いのお手伝い。強羅駅近くのマンションに住む主婦。 - 影山綾子:
影山由美の母親。 - 影山信吉:
影山由美の父親。小田原で文具店を営む。 - 岡村:
M銀行新宿支店の支店長。 - 近藤登:
富永安枝の顧問弁護士。
印象に残った名言、名表現
■相手を見定めようとする十津川警部。
(この女は、本当に、訳がわからなくて、怯えているのだろうか。それとも、すべてを、知っていて、とぼけているのだろうか)
感想
政財界を巻き込んだ巨大スキャンダルというお題目がふさわしい事件であった。
容疑者の男は、与党の幹事長で次期総理大臣と目された男と、日本の政財界に強い影響力をもつ男。わりと早い段階で、この2人が黒幕だということがわかっていたが、如何せん、相手は政財界の大物。簡単に尻尾を出すわけがない。警察にも圧力を加えられるほどの強敵である。
警視庁捜査一課の刑事でも、そう簡単には、捜査できない。だから、必要なのは決定的な証拠なのだ。
この難題に、十津川班が挑むことになったのである。
地道な聞き込みを行い、証言者の裏をとり、さらに、関係者からお金の動きを徹底的に探っていく。一つ一つの小さなピースを集め、やがて、大きなストーリーを作り上げていく。少しずつだけど、確実に犯人たちに迫っていく、その緊迫感が、本作の醍醐味であろう。
さらに、宇奈月温泉、名剣温泉、熱海温泉、由布院温泉、指宿温泉、城崎温泉、修善寺温泉と、十津川警部と亀井刑事が、犯人を追いながら、各地の温泉を旅する。読者もいっしょになって旅をしている気分になる。これも、本作の楽しみ方である。
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