初版発行日 2005年3月20日
発行出版社 新潮社
スタイル 長編
私の評価
ネット上に突如現れた<坂本龍馬>。現代に甦った龍馬による天誅連続殺人!土佐、京都、船中……。龍馬と十津川警部の息詰まる対決!
あらすじ
「日本の洗濯」を宣言した<龍馬>は、防衛庁への賄賂を噂される大会社の社長を東京で射殺。その後も、京都、フェリーの船中と、あたかも龍馬の足跡を辿るかのように、次々と殺人を繰り返していく。必死で<龍馬>を追う十津川警部と亀井刑事。しかし、二人をあざ笑うように、高知・桂浜の龍馬像に、犯行報告が書き込まれる。そして、同志を募った<龍馬>は、ついに首相を標的に定めた……。
小説の目次
- 日本洗濯
- 高知(土佐)
- 危険な同志たち
- 決断の行方
- 身代金
- 新たな野望
- 龍馬の亡霊
冒頭の文
佐伯が編集している『歴史ジャーナル』では去年の十月に、龍馬特集をやった。
小説に登場した舞台
- 高知龍馬空港(高知県南国市)
- はりまや橋(高知県高知市)
- 上町一丁目停留場(高知県高知市)
- 坂本龍馬生誕の地(高知県高知市)
- 龍馬郵便局(高知県高知市)
- 桂浜(高知県高知市)
- 坂本龍馬像(高知県高知市)
- 高知県立坂本龍馬記念館(高知県高知市)
- 木屋町(京都府京都市)
- フェリーこうち
- 仙石原(神奈川県・箱根町)
- 海老名サービスエリア(神奈川県海老名市)
- 大洲(愛媛県大洲市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上本部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 川辺豊:
60歳。川辺重工業の社長。世田谷区等々力在住。防衛庁への賄賂容疑があった。早朝の散歩中、何者かに射殺される。 - 東海林文昭:
38歳。漫画家。京都の鴨川近くの料亭で射殺される。 - 長谷川友昭:
45歳。東京都内にある複数クラブのオーナー。不倫旅行中、フェリーこうち内で射殺される。 - 沼田敦美:
25歳。長谷川友昭が経営するクラブの店長。不倫旅行中、フェリーこうち内で射殺される。 - 木戸英介:
25歳。三輪電機で経理の仕事をしている。Nチャンネルで現代の坂本龍馬を名乗っていた男。 - 小暮健太郎:
総理大臣。 - 飯沼:
首相秘書官。 - 久保田明江:
小暮健太郎の隠し子。 - 久保田健一:
5歳。久保田明江の息子。 - 野村秀夫:
小暮健太郎の個人秘書。 - 大田黒雄作:
45歳。Nチャンネルに「海外に行く」と書き込みをした男。
その他の登場人物
- 佐伯:
『歴史ジャーナル』の編集者。 - 中村:
『歴史ジャーナル』の編集長。 - 川辺恵子:
55歳。川辺豊の妻。元CA。 - 木村:
川辺家の運転手。 - 井口博子:
46歳。川辺豊の元秘書で愛人。 - 井口みどり:
20歳。T大学の2年生。川辺豊と井口博子の娘。 - 藪井麻希子:
38歳。川辺豊の愛人。元女優。現在は中野駅前にあるスナックのママをしている。 - 藤原史江:
川辺豊の愛人。銀座のクラブのママ。 - 藤本:
京都府警捜査一課の警部。 - 井川:
Nチャンネル運営会社広報室の社員。 - 鈴木香織:
四ツ谷駅近くにあるM観光の添乗員。 - 淡口:
フェニックス海運の専務。 - 谷中:
高知県警の警部。
印象に残った名言、名表現
(1)景勝地、桂浜。
二つの岬の間に、弧を描いて延びる桂浜は、確かに、文字通り、白砂青松の浜辺だった。
(2)今一度日本を洗濯致し候。
「坂本龍馬の活躍した幕末は、日本中が、動乱の最中だったからね。過激な方法を使ってでも、日本を洗濯しなければどうしようもなかったんだ。少なくとも、坂本龍馬は、そう考えていたに違いない。しかし、今は違う。確かに、悪い世の中だが、過激な方法で、洗濯をしなくたって、よくする方法は、いくらでもあるんだ」
(3)京都の夏の風物詩、鴨川納涼床。
この納涼床で、食事をしたり、酒を飲んだり、あるいは、舞妓や芸姑を呼んで遊んだりするのは、京都の夏の名物になっている。
(4)坂本龍馬の軌跡。
十津川は、黒板に、龍馬が足を運んだ主な地名を書き込んでいった。
江戸、下田、福井、大阪、京都、山口、下関、門司、萩、熊本、長崎、鹿児島、これに、船旅が加わってくる。
感想
本作は、坂本龍馬が、テーマになっている。
坂本龍馬は、幕末日本の英雄であり、日本に登場する歴史上の人物の中で、トップクラスの人気を誇るといっても過言ではない。もし、日本人全員にアンケートを取ったら、人気トップ3に入るのではないだろうか?
そんな坂本龍馬がのこした名言のひとつが、「今一度日本を洗濯致し候」である。
今回の事件を端的にいえば、この坂本龍馬を尊敬しているグループが、現代の腐敗し堕落しきった日本を、洗濯すると称して、起こした連続殺人事件および誘拐、襲撃事件であろう。
東京、京都、船中と坂本龍馬に関係のある場所で、事件が起こる。犯人は、その報告を高知桂浜にある坂本龍馬像に書き込むのだ。
個人的に残念だったのは、高知の登場シーンが少なかったこと。
確かに、犯人は、高知の桂浜にある坂本龍馬像で、犯行の報告をしていたし、十津川と亀井が、高知に行った。犯人の追跡撃の最終盤で、桂浜が登場した。
だが、事件の舞台は、東京がメインになっており、高知が舞台になったとはいえない。高知を舞台に事件を起こしたほうが、個人的には、おもしろかったと思う。
まぁ、坂本龍馬は土佐藩出身だけど、脱藩したし、海援隊を結成したのも長崎だから、坂本龍馬=高知ではないのは、確かなのであるが。
ただ、終盤の船での戦闘シーンは、迫力満点で見ごたえのあるものだった。船同志で戦闘が起こるのは、いかにも坂本龍馬らしいとは思う。
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