初版発行日 2002年3月20日
発行出版社 新潮社
スタイル 長編
私の評価
最初から最後まで続く緊張感。スピード感あふれる極上ミステリー!列車ジャック、現金強奪、誘拐。連続凶悪犯vs十津川警部!
あらすじ
報酬は一億円。大明寺と名乗る人物にそう声をかけられた六人の男女。スリの達人、元JR運転士、射撃のオリンピック候補など、特殊な技能を持つ彼らが実行したのは、特急サンダーバードの乗っ取りだった。三時間以内に十一億円用意できなければ、四百人の乗客もろとも爆破するという。ノンストップで疾走する特急。刻限迫る中、十津川警部は犯行グループにどう挑むのか?
小説の目次
- 計画
- 再生の道
- 決行
- 列車が走る
- 潜伏
- 三行広告
- 最後の賭け
冒頭の文
原口利夫の職場は、特急サンダーバードの車内である。
小説に登場した舞台
- 特急サンダーバード
- 金沢駅(石川県金沢市)
- 千里浜(石川県羽咋市)
- 艫作駅(青森県・深浦町)
- 黄金崎不老ふ死温泉(青森県・深浦町)
- 八尾空港(大阪府八尾市)
- 和倉温泉駅(石川県七尾市)
- 軽井沢(長野県・軽井沢町)
- 新宿中央公園(東京都新宿区)
- 湯河原(神奈川県・湯河原町)
- 石垣空港(沖縄県石垣市)
- 西表島(沖縄県・竹富町)
- 船浦港(沖縄県・竹富町)
- 由布島(沖縄県・竹富町)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 林田:
大阪府警の警部。 - 根本:
大阪府警の巡査。 - 上田:
大阪府警の刑事部長。 - 三宅:
石川県警の警部。 - 北原:
長野県警の警部。 - 浅井:
神奈川県警の警部。
事件関係者
- 大明寺一郎:
49歳。謎の資産家。 - 原口利夫:
38歳。スリの達人。 - 小森重男:
53歳。元JR運転士。問題を起こし懲戒処分になり、借金を抱えている。 - 加藤明:
37歳。元射撃のオリンピック候補。現在は、練馬のD製パンの配送運転手。 - 沢木めぐみ:
26歳。OL。ホストにはまり借金を作った挙げ句、捨てられた女。 - 角田英男:
28歳。クビになったプロボクサー。山形出身。 - 角田進:
28歳。角田英男の双子の弟。クビになったプロボクサー。
その他の登場人物
- 章子:
大明寺の通いのお手伝い。 - 愛川:
西新宿の美容整形外科。 - 鈴木:
角田英男が所属するジムのオーナー。 - 木本:
特急サンダーバードの専務車掌。 - 前田:
特急サンダーバードの運転士。 - 笹原:
58歳。JR西日本の社長。 - 渡辺:
JR西日本の社長秘書。 - 三浦年支子:
国土交通大臣。 - 川口:
赤坂Kホテルの副支配人。 - 岩田保子:
昨年死亡した岩田代議士の妻。世田谷区尾山台に在住。 - 秋山:
美容整形外科医。日本最高の腕をもつといわれる。 - 加倉井洋子:
50歳。世田谷区深沢にある愛華幼稚園の園長。 - 小野崎文子:
愛華幼稚園のスクールバス運転手。 - 玉造みどり:
西表島に住む中学3年生。 - 玉造孝子:
玉造みどりの母親。由布島ホテルの従業員だったが解雇された。
印象に残った名言、名表現
(1)加賀温泉郷。
一昔前まで、加賀温泉郷や和倉温泉といえば、男たちはニヤッとしたものである。加賀温泉郷の片山津、山中、山代は、男にとって、桃源郷みたいなものだった。少なくとも、その匂いがあった。
(2)千里浜。
風もなく、海は凪いでいる。
ぼんやりと水平線に眼をやる。
のどかである。
水平線に、小さな貨物船が見えてきた。それがのろのろと移動していく。
(3)ぜいたくの効用。
「ぜいたくをすると、一つだけいいことがある。それは、物怖じしなくなることだ。自分に自信が持てる。」
感想
素晴らしいミステリーは、こんな読書体験を提供する。
「読みはじめてすぐ、物語の世界観に入り込み、気がついたら、読み終わっていた」
本作は、この素晴らしい読書体験を、提供してくれた。
最初から最後まで続く緊張感とスピード感。次に何が起きるのか?予測のつかないストーリー展開。そして、納得性のある終わり方。
三拍子そろった秀作であった。
ここでは、ストーリーについての説明はしないが、一つだけ、挙げるなら、最初から犯人はわかっている。犯人たちの紹介、犯行を犯すことになる経緯から、物語がスタートするからだ。
この犯人たちを、いかに追いつめ、捕まえていくか?これが、今回のミッションになる。本作を手にとって、極上のミステリー体験をしてもらいたい。
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