初版発行日 2002年7月16日
発行出版社 双葉社
スタイル 長編
私の評価
西本刑事の恋が実るか?歴史の街、金沢を舞台に、西本刑事が奔走する!
あらすじ
東京で発生した出版社編集部長射殺事件と加賀百万石の城下町・金沢での交通事故死。二つの事件を結ぶ糸は、女流カメラマンが撮影した写真のなかにあると推理した捜査一課は、西本刑事を金沢に派遣、容疑者を特定するが、彼は犯人の罠に落ちる。最大の危機に陥った十津川警部と亀井は、最後の闘いに臨むが。
小説の目次
- 香林坊の女
- カメラの眼
- 関係者
- 動機とアリバイ
- 攻防
- 幻の映像
- 手さぐり
- 最後の闘い
冒頭の文
警視庁捜査一課の若い西本刑事は今、金沢の女に恋している。
小説に登場した舞台
- 小松空港(石川県小松市)
- 香林坊(石川県金沢市)
- 兼六園(石川県金沢市)
- 犀川(石川県金沢市)
- 長町武家屋敷(石川県金沢市)
- 犀川大橋(石川県金沢市)
- 妙立寺(石川県金沢市)
- 石伐坂(W坂)(石川県金沢市)
- 桜橋(石川県金沢市)
- 見城亭(石川県金沢市)
- 月心寺(石川県金沢市)
- 全性寺(石川県金沢市)
- 龍國寺(石川県金沢市)
- あめの俵屋 本店(石川県金沢市)
- 太郎(石川県金沢市)
- ひがし茶屋街(石川県金沢市)
- 卯辰山(石川県金沢市)
- 伊東(静岡県伊東市)
- にし茶屋街(石川県金沢市)
- 深大寺(東京都調布市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
 警視庁捜査一課の警部。主人公。
- 亀井定雄:
 警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
- 西本明:
 警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
- 日下淳一:
 警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
- 北条早苗:
 警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
- 三田村功:
 警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
- 田中大輔:
 警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
- 片山明:
 警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
- 本多時孝:
 警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
- 三上刑事部長:
 刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 酒井千沙:
 24歳。西本刑事のメル友。金沢・香林坊にある姉の喫茶店で働く。カメラマン。
- 酒井由美:
 29歳。酒井千沙の姉。香林坊で喫茶店「二人」を営む。軽自動車に運転中、トラックに追突され死亡する。
- 本橋利男:
 45歳。酒井由美の軽自動車に追突したトラック運転手。
- 小倉敬一:
 40歳。東英出版の書籍編集部長。新宿通りにあるそば屋「尾張屋」から出てきたところを何者かに射殺される。
- 八代伍郎:
 K組の元幹部。
- 西方広太郎:
 51歳。K大学の助教授。社会評論家。歴史小説家。
- 小川明子:
 35歳。モデル。西方広太郎の不倫相手。
- 近藤武彦:
 西方広太郎の母親の実家の党首。近藤運輸の社長で市議会の議長。去年の10月に事故死している。
- 原和也:
 42歳。K大学の助教授。西方広太郎の友人。
- 原みゆき:
 原和也の妻。
- 伊集院あき:
 金沢市内でCG工房を営む。酒井千沙の高校時代の同級生。
- 田代守:
 51歳。大物総会屋。西方広太郎の大学時代の同級生。
- 加東実:
 K組の組員。
- 池内元:
 K組の組員。
その他の登場人物
- 山本:
 警視庁初動捜査班の警部。
- 井上:
 東英出版の編集者。
- 清水宏:
 有名な写真家。
- 日野:
 金沢西警察署交通課の刑事。
- 松本弘:
 40歳。俳優。
- 井本:
 小川明子のマネージャー。
- 小松久美子:
 35歳。新進画家。小川明子の親友。
- 栗田:
 石川県警の警部。
- 永井:
 S大学の助教授。原和也の大学時代の同期生。
- 深沢道子:
 女性講師。原和也の大学時代の同期生。
- 小山:
 経済評論家。原和也の友人。
- 三沢:
 中央テレビの番組プロデューサー。
- 倉田:
 伊東の派出所の巡査部長。
- 佐藤:
 R運送熱海営業の配送員。
- 鈴木:
 石川県警の刑事。
- 川地:
 西方広太郎の友人。
- 中村:
 警視庁捜査四課の警部。
印象に残った名言、名表現
(1)兼六園のシンボル、徽軫灯籠。
兼六園の中止にある霞ヶ池に出る。
そこには、絵ハガキに必ず写る徽軫灯籠がある。日本の足を、ふん張った形のこの石灯籠は、兼六園のシンボルで、観光客も、ここで、記念撮影を撮りたいらしく、傍の石橋のところには、小さな行列が出来ていた。
(2)金沢は歴史の町。
「戦国時代から、江戸三百年をへて、今に続いている。古い歴史の町」
(3)江戸時代を感じさせる金沢。
長町武家屋敷でも、そうだったが、この寺町を歩いていると、同じように、江戸時代に、引き戻された感じになってくるのだ。
(4)金沢名物、あめの俵屋。
二人は、観光パンフレットに必ず出てくる俵屋に向った。
「あめ」と書いた大きなのれんで、有名である。江戸時代の商家の面影を、今でも、残している建物だった。
二人は、水飴を固くしたおこし飴を買い、それを、なめながら、浅野川沿いを、歩いた。
(5)にし茶屋街。
茶屋街は、いつもの夜と同じだった。
立ち並ぶお茶屋には、灯がともり、三味線の音がかすかに聞こえてくる。道の両側に並ぶぼんぼりが、妙になまめかしい。
感想
本作を語る上で、3つのポイントがある。
まず、金沢の観光スポットが、数多く登場している。ひがし茶屋街やにし茶屋街をはじめ、兼六園、長町武家屋敷、石伐坂、卯辰山。さらに、あめの俵屋まで登場させる徹底ぶりである。
ある意味、金沢の観光ガイドと言っても、過言ではない。
2つ目は、西本刑事の活躍である。
西本刑事は、十津川班のエースである。恐らく、十津川、亀井につづく、重要人物と言っても過言ではないだろう。そんな、西本刑事が、金沢の女性に恋をし、彼女を守るため、行動をともにするのだ。
彼女の前で良いところを見せたい。
男なら当然もつであろう、見栄が、事件解決の突破口にもなり、罠にかかるきっかけにもなった。
十津川警部シリーズで、こうした恋心を描く作品は少ない。貴重な作品である。
3つ目は、地道な捜査である。
この地道な捜査こそ、十津川警部シリーズの真骨頂だと思う。徹底的な聞き込みをして、情報の断片を拾っていき、つなぎ合わせ、検証し、仮説を立てる。この仮説をもとに、さらに捜査を進めて、犯人を追い込んでいくのである。
今回も、この地道な捜査が、実を結んだかたちとなった。
全体的には、良作だと思うが、不満に思った点がひとつ。それは、本作の「金沢 歴史の殺人」というタイトルである。
このタイトルは、「金沢の歴史」が殺人に結びつくような印象を与えるが、今回の事件と、金沢の歴史はほとんど関係ない。ここだけが、唯一、不満だった。

 
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
  
  
  
  


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