初版発行日 2002年6月30日
発行出版社 徳間書店
スタイル 長編
私の評価
十津川班vsシャドーX!!謎の集団からの宣戦布告。爆弾を仕掛けられた亀井が重症を負った。十津川の怒りが燃えさかる!
あらすじ
捜査が難航している殺人事件の犯人を教えたり、ある人物の殺害を予言し的中させる手紙が何度も警視庁へ届いた。差出人はいずれも<シャドーX>。正体を探り始める十津川班に<シャドーX>は宣戦布告し、翌日には亀井が乗ったエレベーターが爆破された。激怒する十津川も過激な報復にでる。そして恐るべき「平成維新計画」の全貌が露わになる!?
小説の目次
- 神の声
- 深まる謎
- プランS
- 神は予告する
- 逃げる女
- 絶対音感
- 侵入
- 見えざる敵
- 逃げる
- 反撃
- シャドー・キャビネット
- 秘密
- 戦争
- 終りなき勝利
冒頭の文
最初から、捜査は難航しそうな気がした。事件が起きたのは十月一日の夜である。この日は満月だった。
小説に登場した舞台
- 伊東(静岡県伊東市)
- 河口湖駅(山梨県・富士河口湖町)
- 西湖(山梨県・富士河口湖町)
- 新大阪駅(大阪府大阪市淀川区)
- 浜松駅(静岡県浜松市中区)
- 浜名湖(静岡県浜松市)
- 三鷹駅(東京都三鷹市)
- EXPASA浜名湖(静岡県浜松市北区)
- 掛川駅(静岡県掛川市)
- 静岡駅(静岡県静岡市葵区)
- 戸田漁港(静岡県沼津市)
- 下田市街(静岡県下田市)
- 御殿場(静岡県御殿場市)
- 出雲縁結び空港(島根県出雲市)
- 松江市街(島根県松江市)
- 松江駅(島根県松江市)
- 倉吉(鳥取県倉吉市)
- 三朝温泉(鳥取県・三朝町)
- 日比谷公会堂(東京都千代田区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 片山明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 手島:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 白木:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 加倉井:
警視庁捜査一課の警部。十津川警部の同僚。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 入江:
警察病院の医師。 - 佐藤:
山梨県警の警部。 - 吉田:
山梨県警の刑事。
十津川警部の仲間
- 十津川直子:
十津川警部の妻。 - 田島:
中央新聞会社部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。 - 長谷川:
十津川警部の大学時代の同級生。レジャーボードの輸入販売を営む。 - 中野:
弁護士。十津川警部の友人。
事件関係者
- 青木徹:
36歳。国土開発省の課長補佐。 - 青木美加:
36歳。青木徹の妻。井の頭公園近くの道路脇に停めてある車の中で死体となって発見された。 - 相原功:
43歳。青木美加の不倫疑惑を報じた週刊誌Kの編集長。三鷹市のマンションに在住。奥多摩湖に停めてあった自動車の車内で死体となって発見された。 - 大久保茂:
45歳。ゲームソフト会社OK画像の社長。世田谷区松原に在住。 - 平山千秋:
28歳。フリーライター。相原功の不倫相手。 - 安岡一行:
65歳。代議士。業者から賄賂を受け取った罪で逮捕された後自殺した。浜松出身。 - 堀井喬一郎:
65歳。公益法人「伝統美を守る会」の会長。通産省のOB。青木ヶ原近くの別荘で死体となって発見された。 - 大須賀:
和服メーカーの秘書課長。堀井喬一郎を殺したのは自分だという遺書を残して自殺した。 - 君原さつき:
楽器の調律師。絶対音感の持ち主。河野宏の車に乗っている途中、海老名SAで車が爆発して死亡。 - 河野宏:
28歳。不動産会社の社員。明大前のマンションに在住。君原さつきを乗せて海老名SAに停車中、車が爆発して死亡。 - 江端尚子:
売れない音楽家。絶対音感の持ち主。平山千秋の知り合い。通信会社NSSで高給で雇われた。 - 柏崎進:
通信会社NSSの広報担当。 - 佐々木要:
通信会社NSSの理事長。かつて公安調査庁にいた。 - 西尾隆一郎:
元首相。政財界に影響力をもつ。 - 塩田:
60歳。防衛大臣。突然、辞任する。 - 篠田了介:
若手の代議士。塩田防衛大臣の辞任により、防衛大臣に就任した。 - 小田島:
財務大臣。自宅で突然、自殺した。 - 小田島啓子:
小田島財務大臣の妻。本多捜査一課長の妻の友人。 - 永井実:
若手代議士。自殺した小田島に代わり、財務大臣に就任。 - 早見:
松江駅前にある早見エンタープライズの社長。小田島財務大臣の後援会長をしていた。 - 足立徳太郎:
三朝温泉のZ旅館の社長。 - 浅倉:
代議士。西尾隆一郎代議士の懐刀。
その他の登場人物
- 井上:
青木美加の父親。世田谷で大きな家具店を経営している。 - 井上美佐子:
井上の妻。 - 小林:
週刊誌Kの出版部長。 - 斉藤真二:
ゲームソフト会社OK画像の社員。 - 野中一枝:
大久保茂がもつ伊東の別荘のお手伝い。 - 水口:
安岡一行の秘書。 - 江原慎一郎:
浜松タイムスの社長。 - 大島:
大手町に事務所を構える弁護士。安岡代議士の弁護を担当していた。 - 堀井保江:
60歳。堀井喬一郎の妻。 - 井坂匡:
かつて公益法人「伝統美を守る会」で働いていた。 - 片桐美津子:
37歳。和服デザイナー。堀井喬一郎の不倫相手。 - 井川紀子:
40歳。ピアノ教師。
印象に残った名言、名表現
(1)バイオサイド理論。
満月と新月の夜には、犯罪が多発すると聞いたことがある。バイオサイド理論というらしい。満月の時は、月の引力が強くなり、海の干満の差が激しくなる。逆に、新月の日は、月の引力が弱まり、その分、太陽の引力が強くなるので、同じように、干満の差が大きい。人間の身体は、海と成分が同じだから、当然、この日は、変調をきたすというのである。
(2)最新テクノロジーvs古代の戦略。
「孫氏さ。向うは、近代的な通信機器を信じているが、私の方は、紀元前の戦略家の言葉を信じているんだよ」
感想
かつて、これほどまでに、十津川班が追いつめられたことは、あっただろうか?
そう思えるほど、過酷な状況だったと思う。今回起きた状況を並べてみる。
- 亀井刑事が爆弾を仕掛けられ重症。
- 西本刑事と日下刑事もトラックに追突される。西本刑事は肋骨を折って入院してしまう。
- 十津川班は盗聴と通信傍受ですべての情報を調べられ、携帯電話も盗聴されている。
- 警察上層部への圧力で捜査中止の指示が出る。
- マスコミ捜査で十津川警部が誘拐に仕立て上げられる。
- ヘリコプターで常に尾行をつけられ監視されている。
- 敵は政治的権力があり、資金力も豊富。
まさに四面楚歌といえる状況の中、十津川警部は孤独に捜査を続けなければならなかった。正直、不安だったと思う。
とくに、亀井刑事がいないのが痛恨だった。十津川もこんな風に本音を暴露している。
十津川は亀井が、全快するのを待ちこがれていた。今の十津川が、何よりも必要としているのは、亀井の力だった。
相手はとにかく強大であり、最初から最後まで、緊張感あふれる展開になっている。
十津川警部史上、最大の難敵のひとつであった今回の事件を、スピード感あふれるタッチで描かれる。これぞ、ミステリー。
コメント