〈景品表示法に基づく表記〉当サイトはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。

十津川警部「愛と絶望の台湾新幹線」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

愛と絶望の台湾新幹線小説

初版発行日 2016年10月5日
発行出版社 講談社
スタイル 長編

私の評価 3.5

POINT】
女将殺害の目的は!十津川&亀井コンビが台北、阿里山、高雄で集中捜査!戦後台湾で秘された罪が十津川を呼ぶ。
スポンサーリンク

あらすじ

中華料理店の女将おかみ戸田一子とだかずこが殺される。一子は、娘の二三子ふみことともに台湾に招待されていた。十津川警部の忠告を聞かず単身台湾へ向かった二三子の消息が掴めない。十津川が入国すると、「すぐに日本へ帰れ」という脅迫電話が。誰が、何の目的で?台湾を縦断捜査する十津川と亀井がたどりついた驚愕の真実。

小説の目次

  1. ハッピーロード
  2. 台北松山タイペイソンシャン空港
  3. 阿里山ありさん
  4. 二・二八事件の傷跡
  5. 北回帰線
  6. 戸田家の歴史
  7. 愛する台湾

冒頭の文

かなり昔の話になるが、東京近郊の私鉄を比べるという内容の歌があった。その歌の中で、もっともほめられた私鉄が東急電鉄である。

小説に登場した舞台

  • ハッピーロード尾山台(東京都世田谷区)
  • 台北松山空港(台湾)
  • 台北駅(台湾)
  • 台湾高速鉄道(台湾)
  • 阿里山(台湾)
  • 嘉義駅(台湾)
  • 阿里山森林鉄道(台湾))
  • 沼平駅(台湾)
  • 阿里山賓館(ALISHAN HOUSE)(台湾)
  • 阿里山駅(台湾)
  • 祝山駅(台湾)
  • 玉山(台湾)
  • 左営駅(台湾)
  • 紅毛港保安堂(台湾)
スポンサーリンク

登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三上本部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

事件関係者

  • 戸田一子:
    75歳。尾山台駅前ハッピーロードにある「中華料理 七店目」の女将さん。戦時中、台湾で生まれ、戦後に日本へ。店舗のある自宅2Fで殺される。
  • 戸田二三子:
    戸田一子の娘。母とともに「中華料理 七店目」を営む。
  • 陳公一:
    台北市警察局の刑事。
  • 落合明:
    25歳。交流協会台北事務所の職員。

その他の登場人物

  • 林:
    ハッピーロードにあるクリーニング屋の女将。
  • 古川:
    台北にある日本そば店の店主。
  • 劉令花:
    台北市警察局の刑事。
  • 原口圭行:
    戦前から戦後にかけて台北に住んでいた原口悠次郎の孫。
  • 合田純:
    高雄市警の刑事。
  • 朱明正:
    保安堂の係員。
  • 陸安樹:
    保安堂の係員。
  • 秋山悟:
    日本大学の准教授。台湾について研究している。

印象に残った名言、名表現

(1)特異な町、尾山台駅。

尾山台という駅は、東急大井町線の中では特異な駅、特異な町ということができるだろう。何しろ、住んでみたい町として人気の高い自由が丘と等々力に挟まれていて、尾山台というと、セレブの町というよりどちらかといえば、庶民的で気さくな駅であり、町だからである。

(2)古き良き風情を残す、尾山台駅前、ハッピーロード商店街。

尾山台駅で降りると、すぐ目の目に商店街があり、「ハッピーロード」と呼ばれていた。長さ四百メートル近いその商店街は、石畳と、並木通というシャレた造りになっている。

それにもかかわらず、商店街に入っていくと、そこかしこから、庶民的な匂いが、漂ってくる。そこに並ぶ飲食店や肉、魚の小売店は値段の安い店が多くて、その上店のオヤジさんや女将さんが気さくで、親切だからである。

(3)判断できないときは、あえて放置する。これが十津川流。

亀井の意見は聞いたが、十津川自身も、どちらとも、判断しかねた。今の時点で判断をするには、そのための材料が、あまりにも、少なすぎた。

こういう時、すぐに判断はせず、あえてしばらくそのままにしておいて、様子を見ながら捜査を進めていくのが、十津川の、いつものやり方だった

感想

本作は、ハッピーロード尾山台にある、中華料理店の女将が、何者かに殺害されたことが、事件の発端である。

殺された女将は、台湾で生まれ、太平洋戦争後に、日本へやってきた。母の死の原因を探るために、女将の娘が、台湾へと発つ。それを追って、十津川と亀井も台湾へ向かった。

ここから、物語の本編がはじまる。目的は次の3つ。

  1. 戸田家の台湾での生活、特に終戦の時に何があったかを調べる。
  2. 敵は、いったい何者なのか、何の目的で、動いているのか。
  3. 戸田二三子を捜し出す。

この事件の真相を解明するためには、台湾の歴史、とくに太平洋戦争中と戦後の歴史を知ることが不可欠であることに気がつく。

十津川は、この辺で立ち止まり、もう一度、日本と台湾の関係、さらにいえば、日本人と台湾人との歴史を見つめ直すことを考えた。

十津川と亀井は、本腰を入れて、台湾の歴史を学び直すのだ。

日本にとって、最も親しみがあり、最良のパートナーとも言える台湾。対中国戦略においても、日本と台湾の連携は、今後ますます重要になっていくだろう。

だから、台湾の歴史を知ることは、とても大切なのである。本書でも、こう書かれている。

台湾の隠された歴史を知ることによって、はじめて、友人になれる。

本作は、台湾の隠された戦中・戦後史を、十津川と一緒に学ぶことができる最良の書である。

コメント