初版発行日 1996年10月15日
発行出版社 新潮社
スタイル 長編
私の評価
アフリカ人形の不気味な目をみて十津川は首を捻った!?「連中にも、少しは人間的なところがある筈だというつもりは、ない。」
あらすじ
都内マンションの一室で若い男女の変死体が発見された。同じマンションの住人の証言によれば、前夜、その部屋から猿ーしかも野生の猿の啼き叫ぶ声が響き渡ったという。男は睡眠薬による自殺、その上に覆い被さるように死んでいた女は出血多量による、これも自殺とおもわれた……。しかし、心中にしては全く不自然なことばかりである。机の上には男の書いた原稿と思われる「猿軍団観察記」がある。いったい何が起ったのだろう?
小説の目次
- 一つの事件、二人の死
- 日光
- パイロットを追う
- 組織
- 人形
- 伊豆東海岸
- 死の遊覧飛行
冒頭の文
窓から、明治神宮の森が間近に見えるマンションの一室で、若い男女が死んでいるのが発見されたのは、九月二十八日の午後五時過ぎである。
小説に登場した舞台
- 特急けごん号
- 東武日光駅(栃木県日光市)
- 日光さる軍団(栃木県日光市)
- 中禅寺湖(栃木県日光市)
- 竜頭の滝(栃木県日光市)
- 奥日光戦場ヶ原(栃木県日光市)
- 中禅寺温泉(栃木県日光市)
- 中宮祠(栃木県日光市)
- 男体山(栃木県日光市)
- 調布飛行場(東京都調布市)
- 東京競馬場(東京都府中市)
- 熱川温泉(静岡県・東伊豆町)
- 城ヶ崎(静岡県・伊東市)
- 上山田温泉(長野県千曲市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 木村刑事
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
K土地開発
- 奥野:
K土地開発の社長。 - 寺田:
43歳。K土地開発の管理部長。 - 島崎豊:
K土地開発の航空部部長。 - 市川浩:
当時42歳。K土地開発の管理部長。5年前の墜落事故で死亡。 - 安藤雅彦:
当時45歳。K土地開発の総務部長。5年前の墜落事故で死亡。 - 鈴木俊一:
当時40歳。K土地開発の第一営業部長。5年前の墜落事故で死亡。 - 細野徹:
当時46歳。K土地開発の第二営業部長。5年前の墜落事故で死亡。 - 三村想一郎:
当時39歳。K土地開発の秘書課長。5年前の墜落事故で死亡。 - 倉田良祐:
当時50歳。5年前の墜落事故で死亡。元航空自衛隊。 - 味岡恒彦:
46歳。K土地開発のパイロット。 - 伊東司:
32歳。K土地開発のパイロット。 - 細野明:
45歳。K土地開発の整備士。 - 斉藤五郎:
40歳。K土地開発のパイロット。すでに退職した。去年の10月に交通事故死している。 - 小林友一郎:
50歳。K土地開発の整備士。すでに退職している。 - 早瀬匡:
35歳。K土地開発の企画室の社員。元自衛隊。 - 浅倉信介:
39歳。K土地開発の企画室の社員。元自衛隊。 - 近藤克彦:
36歳。K土地開発の企画室の社員。元自衛隊。自宅が爆発し死亡した。 - 近藤浩子:
近藤克彦の妻。自宅が爆発し死亡した。 - 木下アキ:
コンパニオン。成城学園前に在住。浅倉信介の恋人。 - 荒川貢:
K土地開発の相談役に就任した。元最高検察庁の幹部。 - 君原:
35歳。K土地開発の遊覧航空部の部長。 - 田口英夫:
49歳。K土地開発のパイロット。 - 井岡朱美:
25歳。コンパニオン。 - 今井良介:
50歳。元K土地開発の社員。 - 手嶋あさみ:
30歳。元K土地開発の社員。
事件関係者
- 広川克樹:
30歳。神田にある月刊誌「トラベル」の記者。明治神宮前の自宅マンションで死体となって発見された。 - 中村かおり:
25歳。四谷にある旅行者Rの社員。渋谷区初台のマンションに在住。広川克樹のマンションで死体となって発見された。手首を切って死亡していた。 - 山下康夫:
清里刊行の社長。 - 山口正夫:
32歳。ニュー清里のパイロット。 - 関川健太郎:
個人タクシーの運転手。
その他の登場人物
- 橋本豊:
私立探偵。元警視庁捜査一課の刑事で、十津川警部の元部下。 - 田島:
月刊誌「トラベル」のデスク。 - 井上:
月刊誌「トラベル」の記者。広川克樹の同期。 - 綾:
新宿歌舞伎町のスナック「ブルースカイ」のホステスをしていた。福井出身。 - 小杉:
広川克樹と同じマンションに住む住人。大手町にあるN電機の総務部勤務。 - 大野:
運輸省の技官。 - 高橋浩:
暴露雑誌の記者。広川克樹の高校時代の友人。 - 青木れい子:
日光中禅寺温泉にある旅館の女将。広川克樹の中学時代の友人。 - 西尾豊:
関東遊覧飛行KKで働くヘリの操縦士。広川克樹の高校時代の友人。 - 森節夫:
ヘリの専門雑誌「ヘリ時代」の記者。広川克樹の大学時代の友人。すでに病死している。
印象に残った名言、名表現
■1990年代半ばの日光。バブルが弾けたもののまだ勢いがあった。
日光周辺には、最近、日光猿軍団が出来たり、日光江戸村が生れたり、更に、日光ウエスタン村まで、作られている。
感想
「猿が啼くとき人が死ぬ」という、情緒的なタイトルだったので、作品も情緒たっぷりに描かれていると思いきや、クーデターによる会社の乗っ取りのための偽装事故、それに関わる連続殺人事件という、重くて堅い内容だった。
しかも、家が爆発したり、ヘリが爆発したり、戦争でもしているのか?というくらい、非現実的でド派手な事件が連発していた。
そもそも、猿が登場したのは、序盤だけ。事件が展開するにつれて、猿なんてどうでもよくなっているのだ。だから、猿を期待して読んではいけない作品である。
また、登場人物が多すぎるのも、難ありだと感じた。あまりにも登場人物が多すぎて、読者がついていけないのではないか?そう思ってしまう。何とかついて行けたとしても、人間関係を整理しながら読むと、かなり消耗してしまう。
本作は、情緒的なタイトルとは裏腹に、かなり疲れる作品であったと、個人的に思う。
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