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十津川警部「古都千年の殺人」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

古都千年の殺人小説

初版発行日 2013年5月19日
発行出版社 双葉社
スタイル 長編

私の評価 3.9

POINT】
京都を舞台に十津川警部が東奔西走!見えない犯人との戦いで手に汗握るスリリングな展開!
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あらすじ

京人形に仕込まれた爆弾による殺人事件が東京と京都で起きた。警視庁と京都府警の合同捜査が始まり、十津川警部は人形師・京屋一太郎を重要参考人として手配した。しかし、京屋一太郎は来日中のカナダ副首相夫人を誘拐し、各所旧跡の無差別爆弾の予告と町の景観改善を要求する脅迫状を京都市長に送ってきた。難事件解決に十津川警部が動き出す。

小説の目次

  1. 美しき京人形
  2. 古都破壊
  3. 西陣の家
  4. 破壊との闘い
  5. ターゲット
  6. 古都炎上の夢
  7. 京都駅

小説に登場した舞台

  • 京都駅(京都市下京区
  • 西陣(京都市上京区)
  • 麹町(東京都千代田区)
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登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の刑事。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

京都府警

  • 本橋警部:
    京都府警捜査一課の警部。相川しのぶ事件を担当。
  • 永井刑事:
    京都府警捜査一課の刑事。相川しのぶ事件を担当。
  • 新井巡査長:
    派出所の巡査長。
  • 前島由美子:
    ステファニー夫人の警護にあたった女性刑事。

事件関係者

  • 京屋一太郎:
    麹町で京人形店を営む人形師。祇園にある老舗の人形店の一人息子として生まれる。有名な人形師・遠藤白石に弟子入りし、数年間、京人形づくりをしていた。事件の重要参考人として手配される。
  • 五十嵐亜紀:
    銀座クラブ「夢一夜」のママ。第一の犠牲者。
  • 相川しのぶ:
    25歳の女優。もともと東京の生まれだが、仕事が忙しくなったので撮影所のある京都に家を買った。第二の犠牲者。
  • 松下市長:
    京都市長。
  • 相原:
    30歳の男。「わが町京都」という小冊子を作っているグループのリーダー。
  • 永田:
    25歳の男。傷害事件で警察沙汰になった過去がある。変わりゆく京都に嫌悪感を抱いている。
  • 平山:
    「わが町京都」という小冊子を作っているグループのメンバー。京都のB大学の大学院生。専門は建築。

その他の登場人物

  • 篠原正孝:
    30歳男。京屋一太郎から京都の家を借りることになったカップル。
  • 土屋幸恵:
    28歳。正孝と同棲している彼女。
  • 遠藤久矢:
    遠藤白石の息子で人形師。10代のときに遠藤白石に師事して、京谷一太郎とともに人形作りを勉強していた。
  • 杉浦英介:
    48歳。K大学の准教授。平安京から今の京都について研究している。
  • 永田花穂:
    32歳。生花の藤田龍の家元。
  • 川島総一朗:
    最近京都に進出してきたコーヒーチェーン店の関西本部長。
  • 小雪:
    京都の芸姑。
  • 三浦:
    D大学の准教授。中学・高校まで京谷一太郎の同級生だった。
  • ステファニー夫人:
    カナダのロバート副首相の夫人。来日の際、京都を観光する。
  • 相原双託:
    京都の若い人形師。かつて遠藤白石の弟子。京谷一太郎と一番親しかった。
  • 村田晴美:
    ステファニー夫人と同行した京都市長の秘書。
  • 加藤武:
    スタントマン。

個人的な推しポイント

  • 京都市内のさまざまな地名が登場する。まるで自分が京都にいるような錯覚を起こす。京都に行ってみたくなる。
  • ”○月○日○○時までに爆破する”と予告されいているため、悠長な捜査をしていられない。手に汗握るスリリングな展開がある。
「古都千年の殺人」で登場したキーアイテムは”京人形”でした。

総評

外国人から「日本の中でもっとも”日本らしい”場所はどこか?」と聞かれたら、ほとんどの人が「京都である」と答えるだろう。

794年に平安京に遷都したことから始まる都市であり、それから1,100年間にわたって政治と文化の中心であったと言われている。

千年以上の歴史をもち、日本を象徴する寺院の数も圧倒的に多い。京都の町を歩けば、誰もが日本を象徴する場所だと思うだろう。

しかし、もっとも日本らしい場所であるがゆえに、日本の中でもっとも国際的な場所であるとも言える。京都の町を歩けば、多くの外国人観光客に遭遇する。京都駅にいけば、「本当にここは日本なのだろうか?」と思えるくらい外国人で溢れている。

また、京都には先進的な一面もある。京都発で新しいカルチャーを生み出していこうという取り組みもある。

このように長い歴史をもつ古さがありながら、国際的でもあり、先進的でもあるという重層的な都市が京都なのだ。

本作はそんな京都が舞台になっている小説である。本作を読了して驚かされたのが、西村京太郎氏の京都に対する造詣の深さ。

もともと持っていた知識なのか?本作を書くために取材したのか?それはわからないが、京都に対する知識を魅力たっぷりに伝えてくれる。

ここではその全文を紹介しておこう。

「まず伝統工芸である。

西陣織、京友禅、清水焼、京扇子、京人形。

京都の市街地には、逆に現代の会社や工場が、いくつかある。それは、電気、紡績、製薬と多岐にわたる。

京都はまた、学芸都市の面も持っている。その代表的なものとして、室町通には、呉服問屋があり、四条通、河原町通、寺町通、新京極などには、現代的な映画館や、レストランがあり、デパートもある。

京都は、都市であると同時に、近くに農村地帯も持っている。

農村地帯にいけば、京都名産の、カブやネギ、ナス、ゴボウ、ダイコンなどが、たくさん栽培されている。京都特産のものも多く、上賀茂のスグキナ、西山のタケノコ、丹波のクリ、マツタケ、北山スギなどが、よくしられている。

次は、毎年、三千五百万人以上の観光客を呼ぶ名所旧跡である。

洛中は、京都御所、二条城、賀茂神社、東本願寺、西本願寺、そして、五重塔のある東寺。

洛東は、平安神宮、八坂神社、知恩院、清水寺、三十三間堂、南善寺、慈照寺。

洛西は、広隆寺、鹿苑寺、妙心寺、大覚寺、仁和寺、龍安寺、西芳寺、神護寺、大徳寺、修学院、桂離宮、三千院、鞍馬寺があり、洛南には、伏見稲荷、伏見の桃山陵、秀頼で有名な醍醐寺がある。

そのほか、桜の名所の、円山公園、嵐山、嵯峨野、鬼が出るといわれる八瀬、さらに、名所ではないが、京都の誇れるものとして、祭りがある。

葵祭、祇園祭、時代祭が、京都の三大祭だが、小さな祭りならば、京都の至るところで、ほとんど、毎日のように繰り広げられている。

また、祭りとはいえないが、夏の大文字も、京都の誇れるもののひとつだろう。」

西村京太郎氏に毎回驚かされるのは、作品に登場する舞台の知識である。日本各地の駅や観光地、町並みが実に緻密に表現されている。

西村京太郎氏は速筆であることで知られている。月に最低1作品、多いときは2から3作品を刊行している。そして、登場する舞台は日本全国各地である。

これだけ多くの作品を刊行しており、これだけ日本各地が登場しているのに、どの場所においても緻密に精巧に表現されている。これは取材をしないとできないと思う。

日本各地を取材しながら、尋常ではないペースとスピードでで作品を作り上げる、西村京太郎氏のエネルギーにただただ感服するしかない。

本作も緻密に描かれた京都の魅力たっぷりに描かれている。ぜひその魅力を楽しんでほしい。

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