初版発行日 1995年9月25日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 長編
私の評価
【POINT】
鑑定で贋作と判明した水墨画が消えた。男の死体を残して…。贋作を巡る殺人事件!不可解な謎に十津川警部が挑む!
鑑定で贋作と判明した水墨画が消えた。男の死体を残して…。贋作を巡る殺人事件!不可解な謎に十津川警部が挑む!
あらすじ
実家の土蔵から雪舟の水墨画を見つけた大学生、広田。だが、鑑定の結果ニセモノと判明。そこへ、その贋作を高値で買い取る男が現れた!しかし翌日、男は死体で発見され、売ったはずの水墨画も消えて?捜査を開始した十津川警部は、広田をマークし一路岩手へと向かった。
小説の目次
- 出発
- 誘拐
- 決断
- 絵図の中
- 手掛り
- 私書籍
- 最後の殺人
冒頭の文
東京赤坂の中央テレビで、最近、始まった新番組がある。
小説に登場した舞台
- 新花巻駅(岩手県花巻市)
- 花巻温泉(岩手県花巻市)
- 花巻駅(岩手県花巻市)
- 急行「陸中」
- 遠野駅(岩手県遠野市)
- 常堅寺(岩手県遠野市)
- カッパ淵(岩手県遠野市)
- 伝承園(岩手県遠野市)
- 宮古駅(岩手県宮古市)
- 久慈駅(岩手県久慈市)
- 盛岡駅(岩手県盛岡市)
- 福島駅(福島県福島市)
- 塔のへつり(福島県・下郷町)
- 湯野上温泉駅(福島県・下郷町)
- 会津若松警察署(福島県会津若松市)
- 会津若松駅(福島県会津若松市)
- 目黒(東京都目黒区)
- 晴海埠頭(東京都中央区)
- 羽田空港(東京都大田区)
- 熱海駅(静岡県熱海市)
- 南紀白浜空港(和歌山県・白浜町)
- 白良浜(和歌山県・白浜町)
- 勝浦漁港(和歌山県・那智勝浦町)
- 名古屋空港(愛知県・豊山町)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 山下:
岩手県警の警部。 - 小笠原:
福島県警の警部。 - 山崎:
伊勢佐木署の刑事。20年前の宝石盗難事件を捜査した。
事件関係者
- 広田:
東京のR大学に通う大学生。岩手県宮古市出身。 - 広田幸次郎:
広田の祖父。5年前に病死している。 - 水島かおり:
広田の女友達。広田と遠野を旅行中、何者かに誘拐される。 - 川岸宏一:
広田が偽物と鑑定された雪舟の掛軸を買った男。自宅マンションで殺される。 - 加納さつき:
30歳。杉並区高円寺のマンションに在住。 - 中井実:
22年前、詐欺事件で逮捕された男。空仁という名前で広田家で雪舟の贋作を作った男。 - 大森昌一:
53歳。22年前、詐欺事件で逮捕された男。 - 古沢隆明:
51歳。22年前、詐欺事件で逮捕された男。すでに他界している。 - 古沢久:
35歳。古沢隆明の弟。かつてR電機の広報課に勤めていた。加納さつきの恋人。 - 小沢浩:
四谷三丁目に事務所をかまえる私立探偵。自宅で刺殺されていた。 - 君原:
南紀白浜の資産家。ピカソの収集家。 - 野口勇:
東京に住む男。 - 小川信行:
東京に住む男。
その他の登場人物
- 大杉:
宮古駅前の喫茶店「パピヨン」の店主。 - 小林敬太郎:
仙台市内の宝石店に勤務。 - 山口:
東京八重洲にあるR電機本社広報課の編集長。古沢久の上司だった。 - 村田:
33歳。R電機の社員。古沢久と親しくしていた。 - 片岡治:
56歳。群馬県高崎市に住む資産家。 - 平林大介:
33歳。謎の女から5つの郵便局を廻るように依頼された男。 - 大林準:
熱海のホテル経営者。 - 里見功一郎:
52歳。東京都内に2つのスーパーをもつ経営者。美術品のコレクターでもある。
印象に残った名言、名表現
(1)新幹線で北上する。
雪の粒が、窓ガラスに、ぱらぱらと、当って、貼りつくのだが、それは、すぐ、溶けて、流れていく。その雪粒の数が、次第に増えていき、北上に近づく頃には、窓の外は、真っ白になってきた。
(2)遠野の歩き方。
「遠野の世界を知りたかったら、ただ、漫然と歩いていては駄目なんだ。ただの田舎の風景だからね。『遠野物語』の世界を、頭の中に思い描きながら、歩かなければいけないんだ」
感想
雪舟の贋作をめぐる不思議な殺人事件と思いきや、その贋作に秘められた謎のメッセージを巡る事件であった。この贋作には、20年前に盗まれ未解決となっていた、7億円相当の宝石の在り処の場所を示すメッセージが記されていたというものである。
7億円あれば人生が変わる。だから、人をも変えてしまう。人を殺めてでも手に入れようとする者が現れるし、誘拐もする。仲間割れも起こす。
人の業の深さみたいなものが、よく描かれていたと思う。
ミステリーとしては、派手さはないが、一つ一つ疑問点を潰していき、一人ひとり捜査に当っていく地道な捜査がメイン。これも十津川警部シリーズらしい、作品の一つだと思う。
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