初版発行日 1996年9月30日
発行出版社 徳間書店
スタイル 長編
私の評価
”死の予告状”を受け取ったOLが謎の失踪。手がかりを求めて白浜に飛んだ女友達と十津川の妻・直子を待ち受けるものは……!?
あらすじ
「貴女の死期が近づいていることを、お知らせするのは、残念ですが、事実です……」二通の”死の予告状”を受け取ったR建設のOL・広田ユカが突然消息を絶った。同僚の木島多恵が、ユカの悩みを十津川警部の妻・直子に相談し、助力を求めていた矢先だった。しかも、ユカは、母親の葬儀のため故郷の南紀白浜に帰省したはずだったのだ!一方、東京練馬で起った殺人事件の被害者・近藤真一は、<ゆすりの代筆業>という奇妙な副業を持っていた。”死の予告状”が近藤の筆致と一致したことから、事件は思わぬ方向に……!?
小説の目次
- 残酷な季節
- 通報者
- 一人の女の顔
- 円月島
- 動機隠し
- 事件の裏側
- 幻の遺書
冒頭の文
木島多恵が、同僚の広田ユカから、その手紙を見せられたのは、八月の下旬だった。
小説に登場した舞台
- 羽田空港(東京都大田区)
- 南紀白浜空港(和歌山県・白浜町)
- 白浜駅(和歌山県・白浜町)
- 白良浜(和歌山県・白浜町)
- 三段壁(和歌山県・白浜町)
- 練馬区役所(東京都練馬区)
- 千畳敷(和歌山県・白浜町)
- 円月島(和歌山県・白浜町)
- 小涌谷(神奈川県・箱根町)
- 新大阪駅(大阪府大阪市淀川区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 吉田:
白浜警察署の刑事。 - 三浦:
35歳。白浜警察署の刑事。 - 中村:
警視庁の検死官。
事件関係者
- 十津川直子:
十津川警部の妻。 - 木島多恵:
新宿にあるR建設の社員。会津若松出身。広田ユカを探しに南紀白浜に来たが、円月島で水死体となって発見された。 - 広田ユカ:
R建設の社員。東中野のマンションに在住。南紀白浜の出身。母親の葬儀のため、南紀白浜へ帰省する途中で行方不明になる。 - 近藤真一:
39歳。練馬区役所の職員。練馬区石神井のマンションに在住。自宅の部屋で死体となって発見された。 - 島崎功一郎:
43歳。六本木に事務所をかまえる弁護士。麹町のマンションに在住。 - 久保田誠:
49歳。木島多恵の父親。母親とは離婚している。かつて、蒲田で自動車部品工場を経営していた。 - 小野実行:
50歳。M大学の助教授。政治評論家。 - 仁科由美:
小野実行の愛人だったが、自殺した。 - 前田治郎:
70歳。5年前に引退した政治家。保守党の中ではいまだに強い影響力がある。
その他の登場人物
- 松原さとみ:
広田ユカの高校時代の親友。 - 三田ゆり:
26歳。蒲田駅前にあるクラブのホステスをしていた。久保田誠が贔屓にしていた女性。 - 小野和子:
小野実行の妻。 - 藤田:
週刊パックの編集長。 - 日野はる子:
42歳。錦糸町で小料理屋を営む。
印象に残った名言、名表現
(1)人は不思議なもの。
「人間というのは、不思議なものでね。ずっと、傍にいないと、母親の死でも、あまり、悲しくなくなってしまうものなんだ」
(2)直子の性格。
一度、決心をしてしまうと、誰が、何といおうと、まっすぐに、突進するのが、直子のやり方である。
(3)円月島。
円月島は、長方形の島の中央が、海水に侵蝕されて、円形の穴が開いて、出来たように見える。島の中央に開いた穴から見る夕陽が、絶景といわれて、人気がある。
感想
本作は、南紀白浜に帰省した女性が失踪したことが発端となった。が、当初見えていた事件の印象と、実際の真相は180度真逆になっている事件である。
これがどんでん返しというものだが、最後の最後に、どんでん返しになるような、びっくりする類のものではない。
十津川警部が、地道な捜査を続けていく中で、少しずつ、事件の全貌がみえてくる。そして、当初の印象が、少しずつ少しずつ、ひっくり返っていき、気がつけば、真逆になっているような、ゆるやかな、ひっくり返り方であった。
さらに、今回は、”名探偵・十津川直子”が大活躍する。十津川警部の妻・直子は、過去シリーズにおいても、何度も登場している。
好奇心旺盛かつ行動力があり、度胸があって頭も切れて、一度決めたら絶対に曲げない頑固さもある。それでいて、人のことをすぐに信用するお人好しでもある。
十津川警部を幾度となく心配させ、それでいて、直子の機転と好奇心に助けられもした。
今回は、直子の活躍ぶりも大いに楽しめる作品になっている。
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