初版発行日 1982年1月25日
発行出版社 角川書店
スタイル 長編
私の評価
若い女性を恐怖のどん底に落とし込んだ姿なき犯人とは?十津川警部シリーズ初期の名作の一つ!!
あらすじ
金曜日の深夜、2週続けて若い女性の殺人事件が発生した。残された手がかりから犯人の血液型はB型と判明。十津川警部の指揮の下、刑事たちは地道な捜査を続けていた。そんな中、捜査本部に“9月19日 金曜日の男”とだけ便箋に書かれた封書が届き―当日は何事もなく、夜が更けたかに思えたが、翌早朝、電話が鳴りひびいた。
小説の目次
- 金曜日の男
- 名刺の束
- 水着写真
- 新たな局面
- 闇に光る眼
- 犯人の顔
- ハレム
- 対決
- 最後の金曜日
冒頭の文
九月の声を聞き、夏が終りを告げると、都会に若者たちが戻って来た。
小説に登場した舞台
- 芦花公園駅(東京都世田谷区)
- 東長崎駅(東京都豊島区)
- 新宿歌舞伎町(東京都新宿区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 桜井:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 小川:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 宮崎:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 安井:
42歳。世田谷署の刑事。 - 田島:
32歳。世田谷署の刑事。 - 小倉:
警視庁の検死官。 - 中野:
警視庁の鑑識技官。 - 白石:
池袋署の刑事。 - 青木:
池袋署の刑事。 - 加島:
新宿署の刑事。 - 鈴木:
警視庁起動捜査班の刑事。 - 山本:
検事。 - 石山千恵子:
警視庁の婦警。東中野のアパートに在住。
事件関係者
- 橋田由美子:
24歳。RS商事の会計課に勤務。芦花公園に両親とともに住む。芦花公園の雑木林で死体となって発見された。 - 谷本清美:
20歳。S大学に通う女子大生。東長崎駅近くのアパートに在住。東長崎駅近くのプレハブで死体となって発見された。 - 君原久仁子:
30歳。新宿歌舞伎町のクラブ「ムーンライト」のホステス。初台駅近くで販売中の建売住宅の中で死体となって発見された。 - 佐伯裕一郎:
32歳。新宿西口にある三林美容院のヘアデザイナー。代田橋のマンションに在住。 - 吉川知子:
24歳。新宿のデパートに勤務。ラブホテルで佐伯裕一郎に首を絞められたが無事だった。 - 東田:
68歳。弁護士。元検事。 - 松木かおり:
24歳。N物産人事課の社員。上北沢のアパートに在住。自宅アパートで死体となって発見された。 - 田中誠:
N物産の社員。松木かおりの恋人。結婚を前提に交際していた。 - 久永紀子:
23歳。都内の雑誌社の編集者。下高井戸のマンションに在住。自宅マンションで男に首を絞められたが、杉山和男が助けに来て難を逃れた。 - 杉山和男:
中央新聞の記者。久永紀子の恋人。 - 小野みどり:
24歳。丸の内にあるK鉄鋼の人事課に勤務。初台の路地で何者かに暴行され首を絞められたが、無事だった。 - 吉田:
小野みどりの恋人。 - 佐藤弘:
29歳。中央フィルム新宿現象所に勤務。調布市に在住。 - 杉本一男:
26歳。中央フィルム新宿現象所に勤務。 - 古井哲郎:
25歳。中央フィルム新宿現象所に勤務。
その他の登場人物
- 三木伸介:
25歳。通産省の職員。東長崎駅近くのマンションに在住。 - 川北:
東田法律事務所の弁護士。 - 北川治郎:
N製薬の会長。元国務大臣。 - 井川佐知子:
元女優。北川治郎の愛人。田園調布に在住。 - 渡辺:
M住宅の社員。 - かおる:
新宿歌舞伎町のトルコ嬢。 - 三林有子:
新宿西口にある三林美容院の社長。 - 江上:
松木かおりが住むアパートの管理人。 - 長谷川保:
40歳。鉄鋼会社の課長補佐。 - 石田ゆり子:
20歳。新宿のスナックのホステス。 - 本田弘太郎:
26歳。N物産人事課の社員。松木かおりの元恋人。 - 辻清一:
25歳。N物産輸入第一課の社員。松木かおりの恋人。三鷹駅近くのマンションに在住。 - 佐藤君子:
27歳。佐藤弘の妻。
印象に残った名言、名表現
(1)警察官にあるまじき発言。
「被害者の両親から、君のことで苦情が来ている。君が、被害者のことを『いい身体をしてやがった』といったのが、両親の耳に入ったんだ」
(2)警察官として言ってはいけない言葉。
「彼は車を持っています。駐車違反でも何でも、理由はつけられると思いますね。私に、委せて貰えれば、明日一日、別件で逮捕して、ぶち込んでおきますよ」
(3)警察官ならやってはいけない言動。
「どちらかに、わざと、喧嘩を吹っかけたらどうでしょうか?」
感想
本作は、十津川警部シリーズ初期の作品であり、いわゆる”トラベルミステリー”ではない。だが、極上のミステリー作品である。
今回の事件の犯人、”金曜日の男”を見つけ出すことが、本作の命題である。
毎週金曜日に起こる婦女暴行殺人事件。決まって陽焼けした女性が狙われ、犯人の血液型がB型であることもわかっている。
3件目の殺人が起こった後に、容疑者らしい男が出頭し、その後、犯人としての外堀が埋められていく。いよいよ、起訴し、捜査本部も解散したところで、4件目の事件が起こる。
ここからが捜査の本番である。この後は、本作を手にとって、楽しんでもらいたいが、”金曜日の男”を見つけ出すにあたっての謎が二つある。
- なぜ、陽焼けした女性ばかり狙われるのか?
- 犯人はどこでターゲットを見つけているのか?
この2つの謎を解くカギ=犯人像は、意外なところにあった。それは、1980年代のこの時代ならではのカギである。
素晴らしいミステリー。ぜひ楽しんでもらいたい。
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