初版発行日 2017年10月4日
発行出版社 講談社ノベルス
スタイル 長編
私の評価
「山野線の恋人」の正体は?十津川警部が 連続犯罪の真相に迫る!
あらすじ
有楽町の出版社に勤める星野は山手線で見かける美女に憧れ、密かに「山手線の恋人」と呼んでいた。星野は、故人の作品を再刊するために娘を捜す過程で見た顔写真が「山手線の恋人」と似ていることに気づく。一方、田町ー品川間の山手線新駅工事現場近辺での脱線や、爆破予告などが続けざまに起き、そこにも彼女の影が。そして捜査にあたる十津川警部を嘲笑うかのように、新たな事件が発生!
小説の目次
- ある作家の娘
- 新幹線下りホーム
- 事故と誘拐
- エッセイ集のからくり
- 二人の恋人
- 山手線の行方
- 奇怪な動機
冒頭の文
星野正之二十五歳は現在、独身である。
小説に登場した舞台
- 東京駅(東京都千代田区)
- 有楽町駅(東京都千代田区)
- 国立国会図書館(東京都千代田区)
- 三鷹駅(東京都三鷹市)
- 品川駅(東京都港区)
- 日比谷公園(東京都千代田区)
- 日比谷図書文化館(東京都千代田区)
- 上野駅(東京都台東区)
- 不忍池(東京都台東区)
- 郡山駅(福島県郡山市)
- 志賀高原(長野県・山ノ内町)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 星野正之:
25歳。有楽町にある「宝井出版」の編集者。三鷹のマンションに在住。 - 川本賢三郎:
作家。1年前に病死している。 - 川本かおり:
川本賢三郎の娘。去年2月、志賀高原行きのバスが崖から転落死。 - 高橋清吾:
70歳。画家。片山隆一郎の友人。 - 辻元康信:
60歳。代議士。与党の幹事長。 - 山下奈津美:
25歳。品川駅前の観光会社に勤務する女性。
その他の登場人物
- 宝井健次:
79歳。「宝井出版」の社長。 - 中本:
「宝井出版」の編集者。 - 永田進:
かつて川本賢三郎と同人誌「パピルス」をやっていた。肺がんで入院していたが死亡する。 - 原口:
70歳。西野町にある物産手の名誉店長。 - 小野田:
JR東日本総合司令室の室長。 - 加藤正:
JR東日本社長秘書。 - 広田千夏:
山下奈津美が働く品川駅前の観光会社の社員。 - 片山文子:
亡くなった批評家・片山隆一郎の妻。北鎌倉に在住。 - 片山あや:
片山隆一郎&文子の娘。新人作家。 - 林:
辻元康信の秘書。 - 藤田晃司:
辻元康信の大学時代の友人。 - 渡辺修:
辻元康信の知り合い。
印象に残った名言、名表現
なし。
感想
2020年3月14日に開業した高輪ゲートウェイ駅。山手線の新駅として以前から話題を集めており、山手線沿線ではじめてカタカナが使用された駅名としても話題になった。
本作が刊行されたのは2017年。高輪ゲートウェイ駅開業前であり、この新駅に反対していた人物が起こした事件であった。
前半は2つのストーリーが同時進行していく。1つは、雑誌の編集者・星野正之が、”山手線の恋人”川本かおりを探すストーリー。もう一つは、十津川警部たちが捜査する山手線の爆破テロや誘拐事件のストーリー。
後半は、この2つのストーリーが1つに繋がっていくという流れである。結果として完全に解決していないので、モヤモヤが残る人もいるかもしれないが、余韻を残す意味では、こういった結末もありなのではないかと思う。
ちなみに、本作で登場した磐越西線の西野駅や川端藩、川端温泉、川端城跡という地は存在しない。架空の場所として描いたのだと思う。
最後に、本作刊行にあたり発表された西村京太郎先生のことばを紹介しておく。
京王線の仙川に住んでいた私は、昭和二十三年から三十五年まえの十二年間、職場の霞ヶ関まで、新宿に出て、あとは中央線で東京駅、最後は東京から有楽町まで山手線を使っていた。たった一駅だが、十二年間である。その間、山手線が事故や故障で停った記憶はない。今は、地下鉄が霞ヶ関まで行っているので、山手線を使わなくなったとすれば、残念である。
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