初版発行日 1995年4月25日
発行出版社 角川書店
スタイル 長編
私の評価
宝石店の女社長がお遍路姿で失踪!?しだいに混迷化してゆく一連の事件に十津川警部の推理が冴える!長編トラベル・ミステリー!!
あらすじ
銀座で宝石店を経営する小田冴子が、お遍路姿で失踪した。その一カ月後、松山行きの特急しおかぜの車内で、冴子の後を継いで社長となった寺沢誠が何者かに毒殺され、さらに失踪していた小田冴子が、白装束のまま溺死体となって足摺岬で発見された。彼らはなぜ四国に向かったのか。寺沢の手帳には「足摺岬」というメモが残されていたが…。警視庁に捜査協力の依頼があり、十津川警部と亀井刑事は独自の調査を開始するが、事件は何の手懸かりもみせないまま、第三の犠牲者を生んだ。
小説の目次
- 出発の日
- 足摺岬
- メッセージは死
- 二人の男の履歴
- 誘拐
- 追跡
- 恋人への唄
冒頭の文
明日、午前九時に迎えに来てくれといわれていたので、R交通では、五月十六日の朝、タクシーを、四谷三丁目の小田冴子に廻した。
小説に登場した舞台
- 東京駅(東京都千代田区)
- 岡山駅(岡山県岡山市北区)
- 特急しおかぜ
- 松山駅(愛媛県松山市)
- 道後温泉(愛媛県松山市)
- 足摺岬(高知県土佐清水市)
- 金剛福寺(高知県土佐清水市)
- 中村駅(高知県四万十市)
- 窪川駅(高知県・四万十町)
- 金刀比羅宮(香川県・琴平町)
- 安房鴨川駅(千葉県鴨川市)
- 鴨川シーワールド(千葉県鴨川市)
- 晴海埠頭(東京都中央区)
- 長者ヶ崎(神奈川県・葉山町)
- 浅草駅(東京都台東区)
- 鬼怒川温泉(栃木県日光市)
- 成田空港(千葉県成田市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 戸田:
愛媛県警の警部。 - 杉下:
愛媛県警の刑事。 - 神田:
愛媛県警の本部長。 - 小林:
香川県警の警部。 - 峰:
香川県警の刑事。 - 青木:
神奈川県警の刑事。 - 加東:
神奈川県警の刑事。 - 橋本豊:
私立探偵。元警視庁捜査一課の刑事で、十津川警部の元部下。
事件関係者
- 小田冴子:
銀座にある「オダ宝石店」の社長。四谷三丁目のマンションに在住。お遍路姿で出かけた後、行方不明になる。その後、足摺岬で水死体となって発見された。 - 寺沢誠:
「オダ宝石店」の副社長。行方不明になった小田冴子の後を継いで社長になった。特急しおかぜの車内で服毒死した。 - 高田佳夫:
45歳。D金融の相談役。調布市深大寺の豪邸に在住。金刀比羅宮で何者かに殺害された。 - 宝田みどり:
28歳。高田佳夫のお手伝い。 - 丸山保:
西新宿にあるD金融の社長。国立駅近くの豪邸に在住。 - 服部秀夫:
江東区内にあるケーキ専門店「プチ・モンド」の社長だった。武蔵境のS病院に心臓病で入院していたが亡くなった。 - 北島隆行:
千駄ヶ谷に事務所をかまえる私立探偵。 - 垣内伸:
32歳。池袋にあるN組の幹部。 - 若林:
N組の組員。 - 上条あけみ:
31歳。赤坂にあるクラブ「あけみ」のママ。六本木のマンションに在住。晴海埠頭に沈んでいた車の中で死体となって発見された。 - 望月えり:
解散した音楽グループ「ミラージュ」のボーカル。現在は伊勢佐木町にある喫茶店のアルバイトをしている。南青山のマンションに在住。 - 藤本宏:
解散した音楽グループ「ミラージュ」のギターでリーダー。現在は新宿の劇場のフロアマネージャーをしている。武蔵境のマンションに在住。自宅で死体となって発見された。 - 倉田淳:
解散した音楽グループ「ミラージュ」のメンバー。現在は鴨川シーワールドで電気の保全の仕事をしている。その後、行方不明になる。 - 井上健二:
解散した音楽グループ「ミラージュ」のメンバー。 - 竹内光一:
解散した音楽グループ「ミラージュ」のメンバー。 - 浅井ゆき:
池袋のバーのホステス。鬼怒川の下流で死体となって発見された。
その他の登場人物
- 川村みゆき:
寺沢誠の内縁の妻。 - 奥田弘:
売れないタレント。川村みゆきの恋人。 - 原田:
武蔵境のS病院に入院している患者。 - 小野:
新宿三丁目にあるバーのマスター。 - 井上:
47歳。R交通のタクシー運転手。 - 山下:
新幹線ひかり43号の車掌。 - 山中:
特急しおかぜの車掌。 - 島野:
特急しおかぜの車掌。
感想
魅力的な謎、旅情あふれる四国とお遍路さんの描写、二転三転する犯人像、終始緊張感がただようストーリー展開、意外な真相。すべてがバランス良く高次元に揃った傑作ミステリーだった。
個人的に、四国が好きな場所であり、四国の象徴ともいえるお遍路さんの描写があったのは、ポイントが高い。
ミステリーについても秀逸だった。ここで内容は明かさないが、序盤で物語の世界に入り込み、その後も、次から次へと展開が移り変わるスピード感もあった。間違いなく、本作は、1990年代の名作の一つだと思う。
最後に、西村京太郎先生のことばを紹介しておく。
四国の春は、お遍路さんと一緒にやってくるといわれる。白い装束で、八十八ヶ所の寺を廻るお遍路は、一つの風物詩なのだろう。私も好きで、この小説を書くために一揃い買い求めてきて、飾って見たりした。心がなごんでくるのだが、一方では、一人一人が、どんな過去を背負って、寺々を廻っているのだろうかと、考えてしまう。暗い人生の重荷みたいなものを背負って歩く人もいるに違いない。
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