初版発行日 1983年1月8日
発行出版社 講談社
スタイル 長編
私の評価
【POINT】
二転三転する犯人像と反抗動機!お遍路の国・四国が舞台の傑作大ボリュームミステリー!
二転三転する犯人像と反抗動機!お遍路の国・四国が舞台の傑作大ボリュームミステリー!
あらすじ
お遍路でにぎわう菜の花畑の四国路で、遍路姿の老人が刺殺された。同行の若い女性の姿も消えた。被害者が東京の著名な銀行経営者と判明して、警視庁の十津川・亀井チームが出動。しかし事件は続発した!四国山脈を越えて走る“特急南風1号”の車中、瀬戸内海を横切るフェリーボート…。事件を繋ぐ輪の一部分が欠けていて、犯人を限定できない!
小説の目次
- 遍路の春
- 東京本店
- 第二の標的
- 凶器のネクタイ
- スケッチ・ブック
- 羽田空港
- 特急「南風1号」
- アリバイ
- 政敵
- 大阪
- 美少女
- 影の男
- 父と子
- 一枚の写真
- 総選挙
- 壁に挑む
- 黒幕
- 捜査会議
- 幕が下りて
冒頭の文
四国の春は、お遍路の姿で始まる。
小説に登場した舞台
- 本山寺(香川県三豊市)
- 有楽町駅(東京都千代田区)
- 羽田空港(東京都大田区)
- 高知龍馬空港(高知県南国市)
- 高知駅(高知県高知市)
- 特急「南風」
- 窪川駅(高知県・四万十町)
- 中村駅(高知県四万十市)
- 東京駅(東京都千代田区)
- 新大阪駅(大阪府大阪市淀川区)
- 十三大橋(大阪府大阪市淀川区)
- 今治港(愛媛県今治市)
- 波止浜公園(愛媛県今治市)
- 本島(香川県丸亀市)
- 東中野駅(東京都中野区)
- 新宿駅(東京都新宿区)
- 歌舞伎町(東京都新宿区)
- 寝台特急「瀬戸」
- 岡山駅(岡山県岡山市北区)
- 宇野駅(岡山県玉野市)
- 高松港(香川県高松市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 桜井:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 白石:
香川県警捜査一課の警部。十津川警部の大学時代の友人。 - 原田:
香川県警捜査一課の刑事。 - 島崎:
香川県警捜査一課長。 - 田村:
大阪府警本部捜査一課の警部。 - 鈴木:
大阪府警本部捜査一課の刑事。 - 竹下:
丸亀署の刑事。 - 小野田:
丸亀署の刑事。 - 有田:
警視庁捜査一課の警部。十津川警部の同僚。
首都相互銀行
- 徳大寺正之:
69歳。首都相互銀行の会長。以前、T・S・K社への200億円の不正融資疑惑があった。お遍路巡礼中、本山寺近くで何者かに殺害された。 - 伊吹君子:
徳大寺正之の元秘書。原宿のマンションに在住。徳大寺正之と一緒にお遍路巡礼をしていた。 - 南条吾郎:
首都相互銀行の営業部長。徳大寺正之の甥。 - 井崎玲子:
28歳。南条吾郎の秘書。渋谷区初台のマンションに在住。南条吾郎の愛人。自宅で死体となって発見された。 - 吉村:
首都相互銀行の社長。 - 中村すみ江:
吉村の秘書。 - 堀越:
首都相互銀行の顧問弁護士。
事件関係者
- 星野孝平:
60歳。新宿西口にあるT・S・K社の社長。自由が丘に在住。 - 川島芳夫:
星野孝平の秘書。十三大橋の近くで死体となって発見された。 - 岡部文夫:
星野孝平の秘書。目黒のマンションに在住。特急「南風」の車内で何者かに殺害された。 - 立花万平:
星野孝平の選挙事務所の責任者。選挙の買収容疑で逮捕される。 - 後藤修二:
星野孝平の秘書。選挙の買収容疑で逮捕される。 - 高木幸子:
28歳。岡部文夫の婚約者。レストラン経営者の娘。 - 佐々木昌子:
新宿にあるバー「ファニー」のママ。岡部文夫の女。 - 古屋保:
56歳。代議士。星野孝平の政敵。十三大橋の近くで水死体となって発見された。 - 水上豊:
古屋保の秘書。 - 日高一美:
モデル。以前、首都相互銀行のポスターモデルをしていた。東中野のマンションに在住。瀬戸内海の本島付近で水死体となって発見された。 - 神木:
35歳。フリーカメラマン。自宅で死体となって発見された。
その他の登場人物
- 金子夫妻:
定年退職後にお遍路している夫婦。 - 田中ヨシ子:
本山駅前にある洋品店の主人。 - 田中久仁男:
新宿区役所の職員。南条吾郎の大学時代の友人。調布市内に在住。 - 吉田:
中央タクシー天神前営業所の運転手。 - 須藤哲也:
有名カメラマン。 - 藤野:
K大学病院の外科医。
感想
大ボリュームの力作トラベル・ミステリーだったと思う。
ページ数は417ページと、十津川警部シリーズの中では多い方だと思う。ただ、ページ数だけでなく、内容が盛りだくさんだった印象である。
ミステリーについては、犯人像が次々に入れ替わる。当然、犯行の動機も次々に変わっていく。こいつが犯人だと思っていたら、アリバイがあったり、殺されてしまったり。捜査の圏外に置かれたり。
十津川警部たちは必至の捜査を続けるが、重要な情報の一部が常に欠落しているため、なかなか絞りきれない。
政治闘争なのか?怨恨なのか?あるいは遺産目的なのか?まったく読みきれないのだ。読者も十津川警部と一緒になって右往左往してしまう。
今回の舞台は、四国であり、お遍路の話があったり、高知の小京都・中村が登場したり、瀬戸内海に浮かぶ本島や今治港なども登場する。
とにかく、内容もページ数も旅情も満点の秀作だった。
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