初版発行日 2015年10月29日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 短編集
悲惨な列車事故が起きる!?予言の背後に怪しい人物が……。十津川警部vs女占い師!恐るべき予言は的中するのか!?絶景の果てまで犯人を追え!「臨時特急を追え」ほか、傑作ミステリー短編集!
あらすじ
1.臨時特急を追え
事件の発端は、テレビに出演していた女占師・永井不二子の予言だった。東北地方のどこかで、大きな列車事故が起きるという。予言はマスコミの話題をさらうが、これに危惧を抱いた鉄道会社の社員は十津川警部に相談する。十津川は部下の北条早苗刑事に命じ、ひろかに女占師の周辺を調べさせると、謎の男の存在が……
2.東京-旭川殺人ルート
短編集「東京-旭川殺人ルート」に収録。下記を参照↓↓
→「東京-旭川殺人ルート」
3.夜の殺人者
原宿のバーで飲んでいた日下信彦は、行きずりの女性と道玄坂のラブホテルに行く。男女の関係になった後、ひとりホテルのお風呂に入っていっている間に、女がいなくなった。窓から外を眺めると、その女が転落死していた!事件の状況から、日下信彦が容疑者として逮捕されてしまう。事件の捜査にあたった十津川警部は、真犯人の巧妙なトリックを暴いていく…。
4.越前殺意の岬
永平寺の僧侶に「人を殺したい」と相談する謎の女。その後、越前海岸沿いの道路に男の死体が発見される。福井県警が女の行方を追っていた最中、十津川警部宛に一枚の手紙が回覧された。その手紙を見た十津川警部は、反対する上司を説得して、再捜査に乗り出したのだが……。
小説に登場した舞台
1.臨時特急を追え
- 三鷹駅(東京都三鷹市)
- 上野駅(東京都台東区)
- 臨時特急あけぼの
2.東京-旭川殺人ルート
短編集「東京-旭川殺人ルート」に収録。下記を参照↓↓
→「東京-旭川殺人ルート」
3.夜の殺人者
- 道玄坂(東京都渋谷区)
4.越前殺意の岬
- 永平寺(福井県・永平寺町)
- 越前海岸(福井県・越前町)
- 越前岬(福井県・越前町)
- 芦原温泉(福井県あわら市)
- 玉川温泉(福井県・越前町)
登場人物
1.臨時特急を追え
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北野:
国鉄総裁秘書。 - 永井不二子:
女性占い師。 - 田口:
中央テレビのプロデューサー。 - 水谷明:
50歳。水谷建設の社長。 - 小野田:
国鉄の副総裁。 - 吉田:
26歳。水谷建設の運転手。 - 田代:
48歳。水谷建設の営業部長。 - 江上昌夫:
22歳。学生。臨時特急あけぼの51号爆破事件の被害者。 - 石井孝:
21歳。学生。臨時特急あけぼの51号爆破事件の被害者。
2.東京-旭川殺人ルート
短編集「東京-旭川殺人ルート」に収録。下記を参照↓↓
→「東京-旭川殺人ルート」
3.夜の殺人者
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 桜井刑事:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下信彦:
40歳。設計事務所の社長。 - 里見由美子:
31歳。医者の妻。 - 里見:
医師。里見由美子の夫。 - 秋月:
弁護士。元検事。 - 松原:
監察医務院の医師。 - 中原幸子:
22歳。スチュワーデス。里見の不倫相手。 - 柴崎きみ子:
つつじヶ丘に住む女性。
4.越前殺意の岬
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。 - 笠井豊:
35歳。画家。東京都在住。越前海岸の道路で波の花に埋もれて死んでいた。 - 南:
福井県警捜査一課の警部。 - 吉田:
福井県警の刑事。 - 井上香:
デザイナー。R繊維のデザイン部門に勤務。東京在住。 - 本田由美:
47歳。世田谷区成城に住む資産家。2年前、自宅地下の倉庫で死亡していた。 - 八木:
警視庁副総監。 - 小杉マキ:
R繊維のデザイン部門に勤務。井上香の同僚。 - 島崎:
成城署の刑事。 - 田島:
科研の技官。
印象に残った名言、名表現
(1)北条早苗刑事が話す、男と女の違い。
「神様は公平で、男性には優れた体力を与えた代りに、女性には優れた直感力を与えたんですわ」
(2)越前海岸特有の、鋭さ。
日本海側の海岸といっても、景色は、一様ではない。山陰は、丸みを帯びているが、越前海岸は、鋭角である。全てが、鋭く、とがって見える。風と波で削られた岩礁は、丸くならずに、とがるのだ。それは、怖くも感じるし、痛々しく、脆い感じもする。
感想
本作は、バラエティ豊富な短編集という感想である。
全部で4作品だが、そのうち2作品はトリック性に富んだミステリー作品、残りの2作品は、旅情に富んだトラベルミステリーである。それぞれ好みがあると思うが、いずれも、西村京太郎先生の筆さばきの素晴らしさを堪能できる秀作であることは間違いないだろう。
4作品の中で、わたしが一番印象に残ったのは、「越前殺意の岬」である。上の「印象に残った名言、名表現」でも紹介したが、冬の越前海岸を、”鋭さ”という独特な感性で表現している。
日本海側の海岸といっても、景色は、一様ではない。山陰は、丸みを帯びているが、越前海岸は、鋭角である。全てが、鋭く、とがって見える。風と波で削られた岩礁は、丸くならずに、とがるのだ。それは、怖くも感じるし、痛々しく、脆い感じもする。
これは、越前海岸の鋭さを描くとともに、殺人と死と向かい合っている女の心も描いている。この鋭い越前海岸で、これから、恐ろしく、悲しいできごとが起こる前触れのようでもある。最後はとても哀しい結末になってしまうのだ。
この作品の読後感は、とても哀しい。
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