初版発行日 1988年7月5日
発行出版社 講談社
スタイル 長編
私の評価
【POINT】
美しいパノラマエクスプレスを舞台に、十津川警部の推理が冴える本格鉄道ミステリー!
美しいパノラマエクスプレスを舞台に、十津川警部の推理が冴える本格鉄道ミステリー!
あらすじ
社長令嬢が、ベンツに乗ったまま消息を絶った。誘拐事件発生!犯人は父親を早朝の新宿駅に呼び出し、松本行「アルプス号」に乗るよう指示してきた。しかし、その車内で今度は殺人事件が起こる。
小説の目次
- 誘拐
- 急行「アルプス号」
- 追跡
- 聞き込み
- 過去の事件
- 殺意の核
- 崩壊への道
冒頭の文
七月二十七日。午後二時五分。梅雨は明けたが、じめじめした雨が、朝から降り続いていた。
小説に登場した舞台
- 駒沢公園(東京都世田谷区)
- 新宿駅(東京都新宿区)
- 急行「パノラマエクスプレス アルプス号」
- 大月駅(山梨県大月市)
- 甲府駅(山梨県甲府市)
- 韮崎駅(山梨県韮崎市)
- 上諏訪駅(長野県諏訪市)
- 塩尻駅(長野県塩尻市)
- 松本駅(長野県松本市)
- 御殿場(静岡県御殿場市)
- 成田空港(千葉県成田市)
- 新宿中央公園(東京都新宿区)
- 秋田空港(秋田県秋田市)
- 能代駅(秋田県能代市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 清水新一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 水沼:
長野県警の警部。 - 田村:
長野県警の刑事。 - 戸田:
長野県警の刑事課長。 - 小野寺:
静岡県警の刑事。 - 北川:
秋田県警の警部。 - 若林:
秋田県警の刑事。
小島家
- 小島みどり:
10歳。等々力にあるK大学附属小学校5年生。何者かに誘拐される。 - 小島敏子:
小島みどりの母親。田園調布に在住。 - 小島茂:
40歳。小島製薬の社長。急行「パノラマエクスプレス アルプス号」で何者かに射殺された。 - 小島徳一郎:
68歳。小島茂の父親。小島製薬の会長。 - 林:
32歳。小島家の運転手。誘拐事件で行方不明になり、その後能代の海岸で死体となって発見された。 - 林ゆう子:
林運転手の妹。 - 高木敏子:
小島家の家政婦。 - 杉本久枝:
小島家の家政婦。
事件関係者
- 沢野ユミ:
26歳。小島茂と親しくしていた女性。M銀行京橋支店の行員をしていたが先月退職して秋田県の能代に帰省した。能代の海岸で死体となって発見された。 - 大久保あずさ:
19歳。S大学に通う女子大生。今年の6月に心臓発作で死亡した。 - 大久保文子:
52歳。大久保あずさの母親。 - 大久保あやか:
23歳。大久保あずさの姉。次女。 - 西脇こずえ:
大久保あずさの姉。長女。 - 西脇良:
西脇こずえの夫。 - 太田:
倒産した太田建設の社長。倒産後に自殺した。 - 太田隆行:
29歳。自殺した太田の息子。現在行方不明。
その他の登場人物
- 原田美知子:
小島みどりの担任の先生。 - 山下:
急行「パノラマエクスプレス アルプス号」の車掌長。 - 三浦:
小島製薬のCFを制作した広告会社の社員。 - 中野修:
シナリオライター。成城学園のマンションに在住。 - 横山:
S大学の学生課長。 - 田村修造:
文京区内にある田村医院の院長。 - 平山:
40歳。小島製薬の下請け企業の社長。 - 森みゆき:
新宿にあるクラブのホステス。 - 原田:
ロンドンの日本大使館の書記官。
感想
本作は、ミステリーとして三つのポイントがあった。
一つは、誘拐の目的偽装である。
誘拐の目的を身代金と見せかけて、本来の目的は殺害にあったという偽装である。これについては、西村京太郎先生が、作者のことばで次のように説明している。
誘拐事件が起きた時、犯人の目的は、単なる嫌がらせのこともあるが、ほとんどは、身代金であろう。もし、本当の目的が、身代金でない誘拐があったら、それは、どんなものだろうか。そう考えて、書いたのが、この作品である。
二つ目は、犯人探しである。
被害者は製薬会社「小島製薬」の社長。ビジネスでは、めちゃくちゃな下請けイジメをしたことにより、下請け会社から恨まれていたし、倒産して自殺した社長もいる。プライベート面では、女性関係がお盛んで、あちこちに女を作っては捨てていた。それが原因で自殺もしていた。
つまり、被害者には敵がたくさんいたし、多くの人から恨みを買っていたのだ。その中から、今回の犯人を探していくのである。
三つ目は、列車トリックである。
今回、有力容疑者と思われる人物には、アリバイがあった。このアリバイを作った列車トリックを崩していくのである。
この3つが本作のポイントであった。逆に、哀愁や感動、トラベルミステリーとしての良さは、殆どなかった。
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