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「恨みの三保羽衣伝説」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

恨みの三保羽衣伝説小説

初版発行日 1993年12月20日
発行出版社 文藝春秋
スタイル 短編集

私の評価 4.1

POINT】
箱根、浜名湖、三保の松原を舞台にしたトラベル・ミステリー4編。

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あらすじ

1.恨みの箱根仙石原

インチキ霊能者を叩いている作家の原口久之は、小島みゆきという女性から「箱根仙石原に出る幽霊を見てもらいたい」という手紙を受け取り、幽霊の嘘をあばくため、箱根仙石原に出かける。幽霊スポットに現れた幽霊らしい女の写真を撮った後、死体となって発見された。原口は幽霊に殺されたのか?

2.恨みの箱根芦ノ湖

カメラマンの石田は、富士山の写真を撮るために、箱根を訪れた。芦ノ湖や富士山の写真を撮り、自宅に帰った後、何者かに殺害される。原口はなぜ殺されたのか?十津川警部の推理が光る!

3.恨みの浜松防風林

警視庁捜査一課の日下刑事は、四谷三丁目で起きたホステス殺害事件の容疑者・佐伯広己を尾行していた。佐伯は東京駅から新幹線に乗り、浜名湖へ向かったため、日下刑事も後を追った。亀井刑事から「西本刑事が到着するまで単独行動をするな」と釘を差されていたが、功を急ぐ日下は、ひとりで佐伯の後を追ったが罠にかかってしまう……。

4.恨みの三保羽衣伝説

新宿駅構内で西本刑事に手渡された一通の手紙。そこには「ミス羽衣」を名乗る女、武田幸美からの謎のメッセージがしるされていた。事件の予感を嗅ぎとった西本は三保の松原を訪れたが、幸美はすでに死亡、西本に兇悪な犯人の魔の手が迫る。

小説に登場した舞台

1.恨みの箱根仙石原

  • 小田急ロマンスカー「はこね21号」
  • 箱根湯本駅(神奈川県・箱根町)
  • 箱根湯本温泉(神奈川県・箱根町)
  • 仙石原(神奈川県・箱根町)
  • 東京駅(東京都千代田区)
  • 福島駅(福島県福島市)
  • 熱海温泉(静岡県熱海市)

2.恨みの箱根芦ノ湖

  • 箱根湯本温泉(神奈川県・箱根町)
  • 芦ノ湖(神奈川県・箱根町)
  • 箱根神社(神奈川県・箱根町)
  • 小田急ロマンスカー
  • 箱根湯本駅(神奈川県・箱根町)
  • 十国峠(静岡県・函南町)
  • 小田原警察署(神奈川県小田原市)
  • 奥湯河原温泉(神奈川県・湯河原町)
  • 桃源台(神奈川県・箱根町)

3.恨みの浜松防風林

  • 東京駅(東京都千代田区)
  • 浜松駅(静岡県浜松市)
  • 浜名湖(静岡県湖西市)
  • ヤマハマリーナ浜名湖(静岡県湖西市)
  • 舘山寺温泉(静岡県浜松市西区)
  • 浜名湖大橋(静岡県浜松市西区)
  • 弁天島(静岡県浜松市西区)
  • 東京拘置所(東京都葛飾区)

4.恨みの三保羽衣伝説

  • 新宿駅(東京都新宿区)
  • 千歳船橋駅(東京都世田谷区)
  • 新中野駅(東京都中野区)
  • 静岡駅(静岡県静岡市葵区)
  • 三保の松原(静岡県静岡市清水区)

登場人物

1.恨みの箱根仙石原

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 原口久之:
    作家。霊能者を批判する本を書いている。東中野のマンションに在住。箱根仙石原で死体となって発見された。
  • 新見:
    神奈川県警捜査一課の警部。
  • 林:
    神奈川県警捜査一課の刑事。
  • 丹羽:
    T出版の編集者。
  • 工藤あけみ:
    明大前のマンションに在住。先月まで箱根湯本温泉の芸者をしていた。自宅の部屋で死体となって発見された。
  • 岸川一枝:
    福島県に在住。新興宗教「水の流教」の教祖。今年の四月に自殺した。
  • 岸川麻子:
    20歳。岸川一枝の娘。東京のN大学に通う大学生。成城のマンションに在住。現在、行方不明。
  • 田辺:
    福島県Y町役場の助役。
  • 足立:
    中央テレビのプロデューサー。

2.恨みの箱根芦ノ湖

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 清水新一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 石田:
    若手のフリーカメラマン。千駄ヶ谷にあるマンションに在住。自宅を何者かに爆破され死亡した。
  • 小林:
    R出版の編集者。
  • 中村:
    小田原署の警部。
  • 入江健吾:
    芦ノ湖畔にあるレストランのオーナー。屋上から突き落とされて死亡した。
  • 入江ひろ江:
    入江健吾の妻。箱根の生まれ。心臓が悪い。
  • 野口英夫:
    入江ひろ江の弟。元箱根にある「ノグチ観光」の社長。
  • 浅田奈津子:
    入江健吾の愛人。入江健吾殺害容疑で逮捕された。小田原拘置所に留置されている。
  • 風間順:
    都内で複数のパチンコ店を営む「風間興業」の社長。
  • 加藤:
    野口英夫の運転手。

3.恨みの浜松防風林

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 清水新一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 立木ゆう子:
    28歳。新宿のクラブ「フェアレディ」のホステス。四谷三丁目の自宅マンションで殺害された。
  • 金田勇:
    40歳。無職のヒモ男。
  • 渡辺哲:
    42歳。S化学の部長。立木ゆう子の客で彼女に惚れていた。
  • 佐伯広己:
    元ボクサー。立木ゆう子と同棲していた。防風林で死体となって発見される。
  • 前田久夫:
    32歳。佐伯広己の友人。無職。過去に詐欺や強請りをして会社をクビになっている。浜名湖に沈んでいたベンツの中で水死体となって発見された。
  • 原口悠:
    29歳。佐伯広己の友人。無職。元ボクサー。
  • 篠原エリ:
    新宿のクラブ「フェアレディ」のホステス。井の頭公園近くのマンションに在住。立木ゆう子の恋人。

4.恨みの三保羽衣伝説

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 武田幸美:
    23歳。去年、ミス羽衣に選ばれた女性。3か月前、三保の松原近くの海岸で溺死体となって発見された。
  • 武田良子:
    武田幸美の母親。三保の松原にある旅館「観波荘」の女将。
  • 佐藤晋介:
    都内でパチンコ店などを営む「栗林興業」の社長。
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印象に残った名言、名表現

■箱根の天気は変わりやすい。

箱根では、朝、きれいに晴れて、富士がよく見えても、午後になると必ず雲が出て、富士が隠れるといわれる。

感想

本作は、箱根を舞台にした短編が2編、浜松を舞台にした短編が1編、三保の松原を舞台にした短編が1編、合計4編の短編集である。

ちょうど良いボリューム感と、十津川班として活躍する刑事たちの、長編ではなかなか見られない内面が垣間見える、良作であった。

この4編の中でもとくに、「恨みの浜松防風林」が秀作だった。

事件そのものは、愛し合っていたレズカップルの恋人を殺された女の復讐劇なのだが、ラストシーンが秀逸である。

その一節を紹介する。

面会室で待つ間、日下の胸を、甘いものが満していった。

二人の男を殺した犯罪者だが、純粋な女なのだ。彼女は、刑事と犯罪者という壁を越えて、おれに感謝している。

甘い感傷が、日下の心をゆさぶる。

復讐をしていた女の命を救い、彼女にさぞ感謝されているだろうと、アレコレ想像し、甘い気持ちで会いにいった日下刑事。

だが、この後、日下は、手ひどいしっぺ返しをくらうのである。

甘い男とリアリストの女の違いがよくわかるシーンであり、男のみっともなさが描かれている。クスッと笑える最後になっているのだ。このちょっとした余韻を残した笑いが、短編ならではだと思う。

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