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「びわ湖環状線に死す」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

びわ湖環状線に死す小説

初版発行日 2008年4月25日
発行出版社 光文社
スタイル 長編

私の評価 2.3

POINT】
遺品に潜むのは、殺意なのか?十津川警部が挑むのは、人の悲しき業なのか?びわ湖の闇を十津川警部が追いつめる!
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あらすじ

東京にある「希望の館」は、身寄りのない重病の患者などを収容していた。その一人、森本久司もりもとひさしが死亡した。職員の柴田は遺品の中に、近江商人に関するものを見つけ、遺族を捜しに滋賀県に出向く。だが、手がかりはなく、逆に柴田に警告の電話がかかる。一方、「希望の館」では森本と同室だった青木が殺害される、そんななか、森本の娘に関する情報が入り、指定された「びわ湖環状線」の車内に乗り込んだ柴田が目にしたのは、女性の死体だった!

小説の目次

  1. 遺品
  2. 今度は殺された
  3. 近江塩津おうみしおつ
  4. 男と女
  5. 疑問あり
  6. 事件の余波
  7. 善意の報酬

冒頭の文

東京都荒川区南千住。荒川の近くに、「希望の館」がある。倒産した古い旅館を買い取り、改造したものである。医者が五名おり、看護師十二名、それから、職員が八名いる。

小説に登場した舞台

  • 近江八幡(滋賀県近江八幡市)
  • 五個荘(滋賀県東近江市)
  • 彦根駅(滋賀県彦根市)
  • 彦根城通り(滋賀県彦根市)
  • 彦根市役所(滋賀県彦根市)
  • 長浜市役所(滋賀県長浜市)
  • 隅田公園(東京都墨田区)
  • 京都駅(京都府京都市下京区)
  • 河原町三条(京都府京都市中京区)
  • 近江塩津駅(滋賀県長浜市)
  • 米原駅(滋賀県米原市)
  • 山科駅(京都府京都市山科区)
  • 近江舞子駅(滋賀県大津市)
  • 近江今津駅(滋賀県高島市)
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登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

警察関係者

  • 小野:
    彦根警察署の警部。
  • 寺本:
    長浜警察署の警部補。
  • 佐伯:
    滋賀県警の警部。
  • 菅原:
    滋賀県警の刑事。

希望の館

  • 森本久司:
    61歳。「希望の館」に収容されていた末期患者。病死する。
  • 竹下:
    80歳。「希望の館」に収容されている患者。
  • 青木英太郎:
    66歳。「希望の館」に収容されている患者。隅田公園で死体となって発見された。
  • 佐々木:
    「希望の館」の館長。
  • 柴田圭太:
    「希望の館」の職員。
  • 加賀美:
    「希望の館」の精神科医。

事件関係者

  • 森本あかり:
    28歳。森本久司の娘。N自動車の滋賀工場で経理の仕事をしている。
  • 黒田多恵:
    五箇荘町出張所の職員。交通事故を装って殺される。
  • 崎田隆介:
    彦根にある崎田質店の店主。
  • 小田啓輔:
    71歳。N自動車の会長。
  • 小田啓一:
    41歳。小田啓輔の息子。 N自動車の社長。
  • 武部美代子:
    森本久司の元妻。彦根に在住。小田啓輔の愛人。
  • 竹下亜樹:
    25歳。彦根駅前にあるバーのママ。森本あかりの偽造身分証を持って殺されていた。
  • 川上悟:
    32歳。米原市内に在住。

その他の登場人物

  • 井上:
    近江八幡市役所の職員。
  • 横山:
    近江舞子駅前にある不動産屋の社長。

印象に残った名言、名表現

(1)近江商人の商業哲学。

近江商人は、家訓という形で、その商業哲学を後世に伝えてきた。その多くは、私財を増やすことに、こだわらず、どの地域に行っても、治水や植林、道路の建設、あるいは、橋梁など、公共事業を、進んでやり、地方の発展に協力する。その精神は、近江商人の、どの町に行き渡っていた。そのひとつが、三方よしの、合い言葉である。

(2)近江商人発祥の地、五個荘。

近江八幡も、歴史が残る、古風な昔風の町並みだったが、五個荘のほうは、さらに昔の風景が、残っていた。どこか、津和野の町に似ていて、道路に沿った水路には、さまざまな色のコイが、泳いでいた。

感想

本作は、滋賀県を舞台とした、連続殺人事件であった。

実際の殺人事件は、東京と滋賀県であったのだが、事件の根は、間違いなく、滋賀県にあったのだから、本作のタイトル「びわ湖環状線に死す」は、ふさわしいタイトルだったと思う。

びわ湖を中心に、湖北、湖南、湖東、湖西のスポットが登場し、それぞれ、簡単な歴史とスポットの紹介があったのは、トラベルミステリーらしい作品だった。

ミステリーとしては、最初は、動機も全体像もまったく見えない、ぼんやりとした事件であったが、十津川警部がひとつひとつ検証し、点と点をつなぎ合わせていく、丁寧な捜査が行われ、犯人に迫っていったのは、面白かった。

だが、最後があまりにも急展開すぎる。

今までの丁寧な捜査はいったい何だったのだろうか?と思わざるを得ないほど、あっさりと終わってしまった。

まぁ、現実の事件も、急にすべてを告白する人が現れて、急に解決してしまうこともあるから、リアルと言えばリアルなのだが。

明らかに、”小説を終わらせに行った”ような最後だったのが、残念である。

関西の観光案内を見ると「びわ湖を楽しむなら、快速を利用しましょう」という言葉が、ひんぱんに出てくる。実際、大阪、京都から、びわ湖に向かう場合、JRの新快速に乗ると、便利である。湖北、湖南、湖東、湖西のどこにでも行くことができるし、なによりも、特別料金を必要としないのが、有難い。今はまだ、東京の山手線のように、一電車で、びわ湖を一周できないが、上手く乗り継げば、一周できる。いわば、びわ湖めぐりの足で起きた殺人事件である。

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