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「房総の列車が停まった日」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

房総の列車が停まった日小説

初版発行日 2015年11月28日
発行出版社 KADOKAWA
スタイル 長編

私の評価 3.0

POINT】
駒に秘められた70年前の戦争の惨劇を、十津川警部が暴く!
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あらすじ

東京郊外の別荘で、爆死体が見つかった。現場の床には、白線で将棋盤の一角が描かれており、十津川警部らは、人間詰将棋を模したと推測。庭から「第一の復讐に使用すること」と書かれた桐箱が見つかった。数日後、捜査本部に「房総のコイトで2人目を殺す」という手紙が届く。千葉県警に連絡を取るが、大原の海岸で、のどの奥に銀将の駒を詰まらせた男性の死体が発見されー。

小説の目次

  1. 処刑の棋譜
  2. 銀将の駒
  3. 別荘地帯
  4. 戦争があった
  5. 真相への一歩
  6. 最後の賭け
  7. 列車の停まった日

冒頭の文

そこは、間違いなく東京なのだが、東京の郊外、高尾山に近い、過疎の村の一角だった。

小説に登場した舞台

  • 祇園(京都府京都市東山区)
  • 西陣(京都府京都市上京区)
  • 大原駅(千葉県いすみ市)
  • 大原海岸(千葉県いすみ市)
  • 夷隅(千葉県いすみ市)
  • 千葉駅(千葉県千葉市中央区)
  • 晴海埠頭(東京都中央区)
  • 東京駅(東京都千代田区)
  • 函館駅(北海道函館市)
  • 高崎市役所(群馬県高崎市)
  • 高崎駅(群馬県高崎市)
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登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

事件関係者

  • 桜井幸太郎:
    38歳。自動車会社「桜井工業」の社長。杉並区永福のマンションに在住。奥多摩の別荘で死体となって発見された。
  • 高木雄一:
    32歳。千葉市内にある自動車製造&販売会社の社員。千葉県いすみ市に在住。大原海岸で死体となって発見された。
  • 篠原ひとみ:
    21歳。東京にあるS大学の三年生。父親は篠原ファンドの社長で資産家。南房総の別荘で死体となって発見された。
  • 吉岡博之:
    42歳。都内の会社に勤めるサラリーマン。千葉市内のマンションに在住。

その他の登場人物

  • 佐久間:
    千葉県警の警部。
  • 中村:
    プロ棋士。七段。亀井刑事の知り合い。
  • 宮島三郎:
    京都に住む駒作りの名人。
  • 三浦徳治:
    京都・祇園にある旅館「明日香荘」の主人。
  • 柴田健一:
    93歳。元陸軍伍長。
  • 二宮東作:
    函館にある「郷土料理二宮」のオーナー。
  • 村口:
    T大学の准教授。現代史を研究している。

印象に残った名言、名表現

(1)銀成か?銀不成か?

「銀将が金将に成るか、成らないか、それが勝負を分けることがあるというわけですね?」

(2)簡単だけど難しい。

今回の事件は簡単である。しかし、簡単でありながらも、難しい事件でもある。

感想

今回は、メインテーマが太平洋戦争、サブテーマが将棋だったと思う。

太平洋戦争の時代、南太平洋の島々での出来事や飢餓にみまわれた事情、太平洋戦争での日本軍の戦略、日本軍の内情や意思決定などについて、かなり突っ込んだ話が展開されていた。

こうした太平洋戦争、とくに日本軍の内情は、教科書でもテレビでも紹介されることがほとんどないので、貴重だと思う。

また、太平洋戦争では、戦死者よりも餓死者が多かったことにも触れている。

太平洋戦争の特徴の一つは、日本兵の戦死者よりも、餓死者の方が多いことだろう。

戦後しか生きていない現代人は、あまり知らない事実であり、餓死することがほとんどない現代の日本人には、なかなか想像できない世界でもある。

ニューギニアで戦った大畠正彦という陸軍少佐の言葉も紹介されていた↓↓

「この際、軍人の名誉より一粒の米、ひとなめの塩の方が、ずっと欲しい。武士は食わねど高楊枝なんて言葉は通用しない。もう一年間も人間らしい食物を食べていない人間には只々食べる事のみが重大な問題なのだ」

まさに地獄ともいえる、究極の世界の中で生きていた人たちの証言も紹介しているのだ。

さらに、戦後についての説明もあった。

マッカーサーの当初の政策や、朝鮮戦争でその方針が百八十度変わってしまったことの説明があり、「戦後はみんながゼロからのスタートだった」という現代人の認識も、少し間違っていること。

これが、今回の事件の原因にもなっていたのだ。

最後に、将棋を趣味として嗜まれる西村京太郎先生だからこそ描ける、将棋についての話もふんだんに盛り込まれていた。とくに、今回は、駒の動き方や囲いについての解説がわかりやすかったと思う。

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