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「のと恋路号」殺意の旅/感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

「のと恋路号」殺意の旅小説

初版発行日 1990年3月25日
発行出版社 中央公論社
スタイル 長編

私の評価 4.3

POINT】
悲恋伝説の地で婚約者は誰と再会したのか?今は廃止された急行が蘇る名推理!
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あらすじ

婚約者の中原が飛び降り自殺した。傷心の井岡あや子は、中原が死の直前に乗車した「のと恋路号」に乗り、恋路駅のノートに中原が書いた文章を見つける。が、数時間後にその頁は何者かに破り取られてしまう。さらにあや子を尾行していた刑事が消息を絶ち、中原が泊まった旅館の従業員が絞殺される。そして十津川の捜査には上からの圧力が……。

小説の目次

  1. のと恋路号
  2. 刑事
  3. 失踪
  4. 捜査会議
  5. K・T
  6. 雨の金沢
  7. 山中温泉
  8. ハワイ
  9. 伝言
  10. セブ島にて
  11. 一つの解決

冒頭の文

太宰治は、悲しいから旅に出るのです、と書いた。

小説に登場した舞台

  • 金沢駅(石川県金沢市)
  • 急行「能登路1号」
  • 七尾駅(石川県七尾市)
  • のと恋路号
  • 穴水駅(石川県・穴水町)
  • 甲駅(石川県・穴水町)
  • 恋路駅(石川県・能登町)
  • 恋路海岸(石川県・能登町)
  • 弁天島(石川県・能登町)
  • 中野駅(東京都中野区)
  • 小松空港(石川県小松市)
  • 山中温泉(石川県加賀市)
  • 特急「白山2号」
  • 成田空港(千葉県成田市)
  • セブ島(フィリピン)

登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 清水新一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 小山:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。井岡あや子を尾行して能登まで行ったが、恋路海岸近くで死体となって発見された。
  • 本多時孝:
    警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

警察関係者

  • 坂本:
    石川県警の警部。
  • 田口(通常は田島の名前で登場):
    中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。

M化学

  • 畑中:
    M化学の副社長。
  • 大野:
    M化学中野研究所の所長。阿佐ヶ谷に在住。自宅で首をつって自殺した。
  • 弓子:
    大野の妻。
  • 有沢:
    元警視庁の刑事部長。M化学の労務管理をしている。
  • 中原雅男:
    29歳。井岡あや子の恋人。M化学中野研究所に勤務。鹿児島出身。自宅マンションから転落死する。
  • 小野寺ひろみ:
    中原雅男の元恋人。以前、M化学中野研究所に勤務していた。三鷹のマンションに在住。
  • 内田健一:
    M化学金沢支社の社員。田代恭子の恋人。
  • 大沢明:
    M化学金沢支社の社員。

事件関係者

  • 井岡あや子:
    M銀行新宿支店に勤務。中野のマンションに在住。恋人の中原雅男が自殺した傷心を癒やすため、能登を旅する。
  • 田代恭子:
    30歳。金沢市内にあるクラブのホステス。中原雅男の元恋人。中原雅男の死後、自殺した。
  • 原田幸枝:
    以前、山中温泉の泉水館で働いていた女性。豊島園近くで死体となって発見された。
  • 吉田修:
    山中温泉にある旅館「泉水館」の元オーナー。
  • 坂口五郎:
    K組の幹部。井岡あや子に「小山刑事」と名乗った男。千葉県の勝浦で死体となって発見された。
  • 伊原孝平:
    29歳。カメラマン。
  • 五十嵐:
    政務次官。

その他の登場人物

  • 田代みどり:
    田代恭子の妹。
  • 生野敬一郎:
    62歳。S観光の社長。
  • 福田英一:
    S観光東京本社の業務部長。
  • 金子:
    56歳。金沢市内にある総合病院の院長。田代恭子を愛人にしていた。
  • 浅井:
    「週刊インサイド」の編集長。
  • 井上はる子:
    金沢市内にあるクラブのホステス。田代恭子の友人。
  • 長井:
    原田幸枝の叔父。
  • 伊原敬子:
    伊原孝平の妹。大学三年生。
  • J・クリシュナン:
    セブ島の医師。
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感想

旅情、男女の愛憎、魅力的な謎、そして社会派。すべてがバランス良く整えられた秀作ミステリーだったと思う。

前半は、恋人を殺された井岡あや子が主人公。彼女の苦悩、後悔、怒りがよく描かれており、真実を見つけるために、あや子がひとりで動く探偵的捜査行だった。警察組織のロジカルな捜査とは違い、自由で情緒的な行動をしていたのが、良かったと思う。

後半は、十津川警部にバトンが渡り、ロジカルでサスペンスフルなミステリーへと変貌してく。そもそも、セブ島に化学工場を建設したことによる公害問題。これが事件の発端となっており、社会派ミステリーの側面も読み応えがあった。

最後の結末をここで明かすことはできないが、納得できる面と納得できない面が入り交じった終わり方であったと思う。シロクロはっきりするのではなく、グレーな解決。これが大人の解決なのかもしれない。

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