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十津川警部捜査行「北国の愛、北国の死」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

北国の愛、北国の死小説

初版発行日 2014年3月25日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 短編集

POINT】
青森、函館、稚内……、北への旅が悲劇の始まりだった。事件の鍵は、根室本線の時刻表にあった……十津川警部が鉄壁のアリバイに挑む!
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あらすじ

1.おおぞら3号殺人事件

被害者は六本木でブティックを経営している女性だった。彼女の部屋を捜査していた亀井刑事は、そこで意外なものを発見した。額縁に入っている写真だった。そこには被害者の女性と、背の高い若い男が写っていた。その男の顔に、亀井は見覚えがあった。この男が犯人なのか?

2.新婚旅行殺人事件

2泊3日で盛岡と青森への新婚旅行に出かけた警視庁捜査一課の小川刑事。妻の幸子とともに特急やまびこ号のグリーン車に乗車する。だが、盛岡へ向かう途中、やまびこのグリーン車が爆発。幸子は死亡してしまう。犯人逮捕を心に誓う小川刑事は、捜査線に浮上した男をマーク。だが、その男には完璧なアリバイがあった……。

3.恐怖の橋 つなぎ大橋

御所湖にかかる繋大橋で美女の幽霊がでるという噂があった。それを確かめにきた男女がつぎつぎと溺死した!被害者のひとりが元警視庁捜査一課の刑事だったことを知った十津川警部と亀井刑事は、元刑事が調べていた国立市の資産家事件に着目する!

4.快速列車「ムーンライト」の罠

新潟の弥彦神社で死体が発見された。被害者は東京から転勤してきた35歳の小室功。容疑者は、妻と小室の不倫相手。だが、2人ともアリバイがあった。捜査が暗礁に乗り上げたと思われたが、新宿発の夜行列車「ムーンライト」の存在を知る。これでアリバイが崩れたと思ったのだが……。

小説に登場した舞台

1.おおぞら3号殺人事件

  • 上野駅(東京都台東区)
  • 寝台特急ゆうづる
  • 特急おおぞら
  • 釧路駅(北海道釧路市)
  • 稚内空港(北海道稚内市)
  • 稚内駅(北海道稚内市)

2.新婚旅行殺人事件

  • 上野駅(東京都台東区)
  • 特急やまびこ
  • 宇都宮駅(栃木県宇都宮市)
  • 青森駅(青森県青森市)

3.恐怖の橋 つなぎ大橋

  • 繋大橋(岩手県盛岡市)
  • 御所湖(岩手県盛岡市)
  • つなぎ温泉(岩手県盛岡市)
  • 盛岡駅(岩手県盛岡市)

4.快速列車「ムーンライト」の罠

  • 弥彦神社(新潟県・弥彦村)
  • 田園調布(東京都大田区)
  • 新宿駅(東京都新宿区)
  • 快速ムーンライト
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登場人物

1.おおぞら3号殺人事件

  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。
  • 風見典子:
    亀井刑事の姪。大学生。
  • 花井友彦:
    通産省の事務官。風見典子の彼氏。
  • 三浦:
    北海道警本部捜査一課の警部。
  • 鈴木:
    北海道警本部捜査一課の刑事。
  • 小林夕起子:
    30歳。六本木でブティックを営む。花井友彦と交際していた。
  • 片山貢:
    30歳。繊維問屋「新川」の社員。

2.新婚旅行殺人事件

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 小川刑事:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 新藤幸子:
    24歳。小川刑事の妻。青森出身。特急やまびこ内の爆破事件で命を落とす。
  • 入江:
    前田外科病院の医師。
  • 名取:
    栃木県警の刑事。
  • 西沢:
    栃木県警の警部。
  • 森田徳太郎:
    62歳。盛岡市在住。やまびこ爆破事件で死亡する。
  • 辻章夫:
    40歳。木島建設の作業員。元トラック運転手。傷害事件を起こし、1年の懲役の後出所している。
  • 藤田:
    木島建設の職員。
  • 山尾:
    木島建設の現場責任者。
  • 青野裕二:
    28歳。青森出身。傷害罪で2年の懲役を経て出所。新藤幸子の遠い親戚。
  • 青野久男:
    青野裕二の兄。建設会社の社長。
  • 江島:
    青森県警の警部。
  • 三浦:
    青森県警の刑事。
  • 白井:
    青森の白井病院の院長。

3.恐怖の橋 つなぎ大橋

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 中川耕一:
    東京で喫茶店を営む。元警視庁捜査一課のの刑事。繋大橋で何者かに殺される。
  • 中川夕香:
    中川耕一の娘。父の喫茶店を手伝っている。
  • 宮田慶一:
    宮田工業の社長。40歳。国立市の資産家。元アスカカンパニイの社長をしていた。
  • 宮田文子:
    宮田慶一の妻。急死。亡くなるまで宮田工業の社長をしていた。 
  • 宮田さなえ:
    宮田慶一の娘。下田の旅館で自殺した。
  • 坂西功:
    宮田さなえの彼氏。盛岡でゲームセンターの経営をしている。宮田さなえと下田の旅館で自殺したが、死にきれなかった。
  • 本田亜木子:
    宮田家のお手伝い。現在は行方不明。
  • 千代:
    つなぎ温泉S旅館の仲居。
  • 五十嵐:
    岩手県警の刑事。
  • 木崎:
    岩手県警の警部。
  • 浅井誠:
    42歳。元芸能プロの社長。薬剤師の免許あり。東京都調布市在住。
  • 細川ひろこ:
    35歳。元芸能マネージャー。宮田慶一が営むアスカカンパニイで働いていた。

4.快速列車「ムーンライト」の罠

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 原田:
    弥彦温泉「菊のや」旅館の主人。
  • 小室功:
    35歳。中央興業新潟営業所の副営業所長。弥彦神社で殺されていた。
  • 小室京子:
    小室功の妻。
  • 田沢:
    中央興業新潟営業所の所長。
  • 宮川勇一郎:
    中央興業新潟営業所の社員。元副営業所長だった。
  • 辻かおり:
    新宿のブティック「KAORI」を営む。小室功の不倫相手。元中央興業本社のOL。
  • 小林ゆう子:
    ブティック「KAORI」の従業員。
  • ヒロミ:
    古町のクラブ「黒い瞳」のホステス。
  • 佐伯:
    新潟県警の警部。
  • 青木:
    新潟県警の刑事。

印象に残った名言、名表現

(1)古き良き日本の風景。

車両の端にある洗面所では、乗客たちが、朝のあいさつをしながら、順番を待っていた。昨日までは、全くの他人だったのに、一夜を、同じ列車内で過ごしたという連帯感があるせいか。お互いに笑顔であいさつしている。こんなところが、夜行列車の旅のよさだろう。

(2)列車旅のロマン。

遊歩甲板に出て、花井と肩を並べ、ゆっくりと遠ざかって行く青森の町を眺めていると、改めて旅に出たのだという気分になってくる。

(3)昼と夜で違う顔をみせる繋大橋。

ゆるい坂をおりると、国道に出る。それを渡ったところに、繋大橋がかかっている。対岸に向って、まっすぐに延びる橋である。昼間は、小岩井農場や、手づくり村へ行く観光バスや車で賑わう繋大橋だが、夜半過ぎの今はひっそりと静まり返り、何メートルおきかに灯っている橋の上の街頭が、やけにわびしく映る。

(4)列車には”匂い”がある。

東北に生まれて、二十数年前に列車で上京した亀井は、いつも上野に行くと、自然に、到着する列車や乗客に、郷里の匂いを嗅ぐような気分になってしまう。

感想

本作は、北の大地を舞台とした短編集である。北海道を舞台にした「おおぞら3号殺人事件」、青森を舞台にした「新婚旅行殺人事件」、岩手・つなぎ温泉を舞台にした「恐怖の橋 つなぎ大橋」、新潟・弥彦神社を舞台にした「快速列車「ムーンライト」の罠」。

JRの国鉄時代や、いまは無き寝台特急や快速列車が使われており、当時の時代を懐かしめる作品になっている。

当時はインターネットがない時代。時刻表を使って、列車の運行や乗り継ぎを調べていた時代である。この時代だからこそできる、時刻表や乗り継ぎ、臨時列車のトリックがふんだんに使われているところも面白い。

当時の作品は、アナログの時代だったからこそ醸し出せる、ロマンが感じられるのだ。

最後に、本作に収められた短編2作の発表のときに語られた、西村京太郎先生のことばを紹介する。

まずは、「おおぞら3号殺人事件」発表時のことば。

北海道は、広大で、厳しい自然条件に、支配されている。
特に冬は、零下何十度にもなる。その中を走る列車も、特別に造られたものでなければならない。北海道の鉄道を利用する楽しみの一つは、特別仕様の車両にめぐりあえることである。

次に、「新婚旅行殺人事件」発表時のことば。

 「やまびこ5号」に乗って、盛岡へ行くことになり、時刻表を見ると、十四番線から、十四時三三分に発車すると書いてある。発車前に写真を撮りたかったので、ホームに、何時に入っているのかと調べると、入線時刻は、一三時四三ぶんである。
 ところが、何気なく、他のページを操っていると、同じ東北本線の上りの中に、「はつかり2号」の上野着が、一三時四三分で、十四番線に入ると書いてある。あれ、これでは、同じ十四番線で、「やまびこ5号」と「はつかり2号」が、ぶつかてしまうのではないかという素朴な疑問がわき、それを土台にして書いたのが、「新婚旅行殺人事件」である。

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