初版発行日 1988年10月20日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 長編
私の評価
特急「はやぶさ」車中に仕掛けられた十津川の奇策とは?真相解明のために立ち向かう十津川警部!!
あらすじ
上巻
「小樽へ行く……」という手紙を残して、20年前に退職した元刑事、佐々木完治が失踪した。やがて佐々木は他殺死体で発見され、早々と犯人は自首をしてきたのだったー。ところが事件の早期解決に疑問を抱いた十津川の脳裏に、当時佐々木が担当をしていた、ある連続殺人事件の記憶が甦っていく……。20年も前の事件を掘り起こす十津川に上層部の圧力がのしかかり、捜査も暗礁に乗り上げて行く。
下巻
20年前の連続殺人事件を掘り起こす十津川の前に現れたのは当時の有力代議士、堀江正志の影であった。無実を訴え自殺を遂げた当時の堀江の秘書、石崎を巡って十津川等の捜査は意外な方向へ……。再三の警告を無視して犯人を追い続ける十津川は恐しい罠によって窮地へと追い込まれて行く。
小説の目次
- 父の失踪
- 小樽への旅
- 過去へ
- 警視庁
- 世界は二人のために
- ラブユー東京
- 第三の事件
- 容疑者一号
- 男の像
- 逮捕
- 追いつめてに
- 二十年の空白
- よみがえる過去
- 襲撃
- 行方不明
- 政治結社
- 故人の周辺
- スキャンダル
- 男の表情
- 日記
- 死者の証言
- 友情と恋と
- アメリカ
- 秘密
- 武器
- 動く
- おとり
- ブルートレイン
- 第二撃
- 海の彼方へ
冒頭の文
季見子は、父の様子が変ったのは、母が亡くなったせいだと、思っていた。父の佐々木完治は、昔、警視庁捜査一課の刑事だった。
小説に登場した舞台
- 羽田空港(東京都大田区)
- 千歳空港(北海道千歳市)
- 特急「ライラック号」
- 札幌駅(北海道札幌市北区)
- 小樽駅(北海道小樽市)
- 小樽運河(北海道小樽市)
- 小樽図書館(北海道小樽市)
- 井の頭公園(東京都三鷹市)
- 日比谷公園(東京都千代田区)
- 新宿中央公園(東京都新宿区)
- 明治神宮外苑(東京都新宿区&港区)
- 歌舞伎町(東京都新宿区)
- 東京駅(東京都千代田区)
- 寝台特急「出雲号」
- 城崎温泉駅(兵庫県豊岡市)
- 松江駅(島根県松江市)
- 宍道湖(島根県松江市)
- 下田(静岡県下田市)
- 特急「おおぞら号」
- 経堂駅(東京都世田谷区)
- 板橋駅(東京都板橋区)
- 出雲縁結び空港(島根県出雲市)
- 出雲市駅(島根県出雲市)
- 成田空港(千葉県成田市)
- 寝台特急「はやぶさ」
- 名古屋駅(愛知県名古屋市中村区)
- 大阪駅(大阪府大阪市北区)
- 新倉敷駅(岡山県倉敷市)
- 岩国駅(山口県岩国市)
- 大牟田駅(福岡県大牟田市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 清水新一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 堀井:
北海道警の刑事。 - 皆川:
静岡県警の警部。 - 平田:
御殿場署の刑事。 - 花井:
警視庁捜査四課の警部。 - 田口(通常は田島の名前で登場):
中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。
20年前
- 小坂井:
警視庁捜査一課の警部。 - 佐々木完治:
警視庁捜査一課の刑事。 - 井上:
警視庁捜査一課長。 - 浜田:
警視庁の刑事部長。 - 長山しのぶ:
20歳。N大学の学生。日比谷公園で死体となって発見された。 - 広田淳:
長山しのぶの婚約者だった男。 - 矢代ゆき江:
28歳。歌舞伎町にあるクラブ「シャノアール」のホステス。新宿中央公園で死体となって発見された。 - 木崎雅之:
25歳。新橋にあるK工業の事務。宝石店社長の息子。鍋屋横丁近くのマンションに在住。愛車のポルシェを運転中、トラックと衝突して死亡した。 - 木崎治郎:
木崎雅之の父親。宝石店の社長。 - 北条みち子:
26歳。主婦。京王多摩川の河原で死体となって発見された。 - 長田実:
25歳。サラリーマン。北条みち子と不倫をしていた男。 - 堀江正志:
代議士。元国務大臣。 - 石崎駿:
堀江代議士の後援会「正志会」の会員。堀江の秘書。四谷三丁目のマンションに在住。連続殺人事件の容疑がかけられていたが自殺した。 - 原田昌子:
石崎駿の見合い相手。中堅電機メーカー社長の娘。成城学園のマンションに在住。 - 青木:
弁護士。堀江代議士の元秘書。 - 平木やよい:
23歳。OL。明治神宮外苑で死体となって発見された。 - 松本はるか:
小樽運河で死体となって発見された。
現代の事件関係者
- 佐々木完治:
62歳。中央鉄鋼の人事部に勤務していたが11月に退職。20年前まで警視庁捜査一課の刑事だった。井の頭公園で死体となって発見された。 - 佐々木季見子:
25歳。佐々木完治の娘。M銀行の総務部に勤務。 - 伊藤定子:
小樽の行商。自宅で死体となって発見された。 - 北原行夫:
30歳。佐々木完治殺害で自首してきた男。前科あり。 - ミユキ:
歌舞伎町にあるクラブのホステス。北原行夫の恋人。自宅で死体となって発見された。 - 三村:
36歳。N組の幹部。 - 寺本卓造:
政治結社「N会」の会長。N組の組長。 - 堀江正彦:
代議士。堀江正志の息子。 - 寺岡順一郎:
37歳。堀江正彦の秘書。 - 前島:
神田にある週刊スクープの編集長。練馬に在住。 - 吉岡雅史:
28歳。六本木にあるバーに勤務。渋谷のマンションに在住。深町吾郎の別荘近くに停めてあったクルーザーの中で死体となって発見された。 - 深町吾郎:
青年実業家。下田にある別荘近くに停めてあったクルーザーの中で死体となって発見された。 - 松本ふみ:
出雲市駅近くにある菓子店の店主。20年前に死亡した松本はるかの母親。 - 松浦明:
歌舞伎町のスナックのボーイ。 - 下村:
政治団体のリーダー。 - 山脇:
カメラマン。
現在のその他の登場人物
- 柴田タキ:
70歳。小樽の行商。 - 後藤功:
25歳。井の頭公園近くに住むサラリーマン。 - 松沼:
52歳。四谷でレストランを営む。元M組の幹部。 - 可奈子:
松江にある会員制クラブのママ。 - 岡本富雄:
元代議士。松江市内に在住。 - 内藤:
フランス料理店の店主。 - 矢部浩:
商事会社の秘書課長。 - 梶山:
建設省の職員。 - 馬場:
小樽駅近くにある喫茶店の店主。元北海道警の刑事。 - 平沼:
56歳。経堂駅近くに事務所をかまえる税理士。 - 松本:
板橋駅前にある質屋の店主。
感想
圧倒的なボリューム感のある力作だったと思う。
上下巻あわせて650ページ超え。これは十津川警部シリーズでは、かなり長い方である。また、現在の連続殺人事件は、20年前の連続殺人事件が発端となっており、20年前の事件についても、数百ページを割いて、その時の出来事を描いていた。
政治の世界を描き、さらに暴力団も登場する。
十津川警部シリーズでは、政治家が登場すると、だいたい登場人物が多くなる。政治家はステークホルダーが多いため、関係者も多くなってしまうのだろう。本作も、登場人物がかなり多かったと思う。ここまで多い作品はあまり多くない。
舞台も広範囲だった。北は北海道から南は福岡まで。寝台特急での犯人の攻防も描かれた。十津川警部シリーズの真骨頂である。
このボリューム感と緊張感の続く展開は読み応えがあるのだが、ひとつ残念なのは、人物の感情や風景描写、哀愁といった要素が描かれていないことである。
基本的には、事実+会話+推理が中心になっている。だから、読んでいて疲れるのだ。ここに感情や哀愁の表現が挟まると、リフレッシュがあると思うのだが、今回はそれがなかった。ここが残念な点である。
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