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十津川警部「湯けむりの殺意」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

湯けむりの殺意小説

初版発行日 2006年7月31日
発行出版社 徳間書店
スタイル 短編集

POINT】
道後温泉、宇奈月温泉、城崎温泉、湯村温泉、下呂温泉。5つの温泉が舞台の傑作短篇集!
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あらすじ

1.道後温泉で死んだ女

警視庁の本多捜査一課長宛てに、三田村刑事が道後温泉の老舗ホテルの娘を殺したと告発する手紙が届いた。愛媛県警に確認すると、確かに事件が起こっており、三田村も叔父の葬儀で道後に行っていたことがわかる。そして、三田村に不利な証拠が次々と出てきたのだ……!?

2.黒部トロッコ列車の死

亀井刑事の息子、健一が車に轢かれて左足を骨折した。健一は3日前にも車に轢かれそうになったという。原因は家族が旅行した宇奈月温泉にあると踏んだ亀井は、ひとり、宇奈月温泉へ向かう。旅館でおきた失踪騒動から思わぬ事件に発展する…。

3.城崎にて、死

近所に新しくできたコンビニで気になる女性と出会った日下刑事。彼女はいつも週刊誌を立ち読みして立ち去ってしまう。ある日、彼女のあとを尾行した日下は、何者かに頭をなぐられて気絶する。翌日、京王多摩川の河川敷でコンビニ店員が死んでいるのが発見される。さらに、城崎温泉の海岸に彼女の死体も打ち上がり…。コンビニで行われていた恐るべき組織犯罪とは?

4.恐怖の清流 昇仙峡

湯村温泉の近く、昇仙峡で立て続けに水死体があがった。遺書があり事件性がないことから、山梨県警は自殺と認定する。しかし、この2件に不可解な共通点をみつけた十津川は捜査に乗り出す!なぜ、昇仙峡なのか?なぜ、湯村温泉の同じホテルに宿泊したのか?なぜ遺書の文体が似ているのか?

5.下呂温泉で死んだ女

高山本線の列車内で、胸から血を流して死んでいる女性が発見された。第一発見社は列車に乗ってきた学生だが、その車内ではほかにも乗客がいたという。なぜ、列車内で人が刺されたのに、ほかの乗客は気がつかなったのか?十津川警部は下呂温泉に行き、謎に挑む!

小説に登場した舞台

1.道後温泉で死んだ女

  • 道後温泉(愛媛県松山市)
  • 吉祥寺(東京都武蔵野市)

2.黒部トロッコ列車の死

  • 特急「うなづき号」(富山県黒部市)
  • 宇奈月温泉(富山県黒部市)
  • 宇奈月温泉駅(富山県黒部市)
  • 欅平駅(富山県黒部市)

3.城崎にて、死

  • 寝台特急「いずも3号」
  • 城崎温泉駅(兵庫県豊岡市)
  • 日和山海岸(兵庫県豊岡市)

4.恐怖の清流 昇仙峡

  • 甲府駅(山梨県甲府市)
  • 昇仙峡(山梨県甲府市)
  • 羅漢寺(山梨県甲斐市)
  • 仙娥滝(山梨県甲府市)
  • 湯村温泉(山梨県甲府市)
  • 井の頭公園(東京都武蔵野市)
  • 水上温泉(群馬県・みなかみ町)
  • 諏訪峡(群馬県・みなかみ町)

5.下呂温泉で死んだ女

  • 下呂駅(岐阜県下呂市)
  • 下呂温泉(岐阜県下呂市)
  • 高山警察署(岐阜県高山市)
  • 高山駅(岐阜県高山市)
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登場人物

1.道後温泉で死んだ女

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 本多時孝:
    警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。
  • 木下めぐみ:
    道後温泉のS旅館を営む両親の次女。20歳。N公園の中で死体で発見される。
  • 井上:
    愛媛県警の警部。
  • 藤本恵美:
    木下めぐみと同じ大学に通う友人。
  • 木下秀哉:
    木下めぐみの父親。
  • 木下章子:
    木下めぐみの母親。
  • 木下絵理:
    木下めぐみの姉。1年前、ひき逃げ事件で死亡している。
  • 三村誠:
    木下絵理と交際していた男。

2.黒部トロッコ列車の死

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 本多時孝:
    警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
  • 亀井公子:
    亀井刑事の妻。
  • 亀井健一:
    亀井刑事の息子。
  • 三原良:
    フリーライター。
  • 林亜希子:
    三原良と交際していた。麹町の片山建築事務所で働いていたが4月1日で退職する。
  • 片山均:
    片山建築事務所の所長。
  • 柳田杏子:
    銀座のホステス。30歳。三原良と交際している。

3.城崎にて、死

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 清水新一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 立花弘:
    コンビニ店員。N大学の学生。バスケットボール部に所属。
  • 小山ゆかり:
    OL。城崎出身。
  • 林:
    城崎署の刑事。
  • 山田:
    小山ゆかりの高校時代の彼氏。城崎温泉駅前でそば屋を営む。
  • 原島:
    警視庁捜査四課の刑事。
  • 市原:
    S組の幹部。
  • 加藤麻子:
    28歳。新宿のクラブ「レミ」のホステス。S組の市原の女。

4.恐怖の清流 昇仙峡

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 清水新一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 本多時孝:
    警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。
  • 広瀬克己:
    R精工の重役。昇仙峡で水死体として発見される。
  • 広瀬保子:
    広瀬克己の妻。
  • 森下健:
    中堅のテレビタレント。昇仙峡で水死体として発見される。
  • 高田久美子:
    森下健の内縁の妻。
  • 奥田功:
    湯村温泉Kホテルの社長。50歳。
  • 奥田由紀:
    湯村温泉Kホテルの女将。40歳。
  • 清乃:
    湯村温泉の芸者。
  • 宮崎八千代:
    Kホテルの仲居。
  • 浅川良治:
    渋谷のパチンコ店「グッド・ラック」の店員。27歳。高田久美子と交際していた。
  • 竹内士朗:
    四谷に事務所をかまえる弁護士。
  • 平川栄:
    竹内法律事務所で働いていたがクビになった弁護士。40歳。
  • 富田正:
    M建設の営業部長。
  • 中井みゆき:
    富田正と交際していたクラブのホステス。

5.下呂温泉で死んだ女

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 明日香令子:
    タレントの浅井尊之と離婚した女性。慰謝料3億円を受け取っている。高山本線の車内で胸から血を流して死んでいるのが見つかった。
  • 浅井尊之:
    売れっ子タレント。明日香令子と離婚した。
  • 小田:
    高山署の刑事。
  • 河西:
    高山署の刑事。
  • 明日香悠子:
    明日香令子の妹。
  • 小野豊:
    明日香令子の叔父。弁護士。
  • 牧田かおり:
    25歳。新宿のクラブ「コネクション」のホステス。

印象に残った名言、名表現

(1)十津川が亀井にいった、警察と一般人の関係。

「一般の人たちは、自分が事件に巻き込まれた時は、われわれを頼りにする。しかし事件がない時は、われわれは邪魔な存在なんだ。私は、それでいいと思っているがね。もう一つ、人々は、われわれのミスを、ひそかに待っているようなところがある。取り締まる側の人間が、逆に取り締まられるのを見るのは、楽しいんだ。特にマスコミは、それが激しい。

(2)男の性質について、十津川警部の考え。

屈辱感は、男はいつまでも覚えているものである。特に、若い男にとっては。

(3)三田村と北条早苗の性格がわかる一文。

三田村は、大ざっぱに、部屋の中を見ていたが、早苗の方は、女らしく、丁寧に、見ていた。

(4)当時の時代を感じさせる。

<四、五日、旅行に行って来ます。新聞、牛乳は、入れないで下さい。>

(5)夜行列車に乗るメリット。2020年現在、サンライズ出雲と瀬戸だけになってしまったのが残念。

日下の友人で、ひとりで考えごとをしたい時には、何処行きでもいいから、夜行列車に乗るという男がいる。車窓にもたれて、流れる夜景を見つめていると、自分の人生を、振り返っているような気がするのだと、いっていた。それに、感傷的になれるのもいいらしい。

(6)十津川警部、必殺の”殺し文句”

「もう何人もの人間を殺しているんだ。君もわれわれに協力しないと、殺人の共犯になる。終身刑どころか、死刑にだってなりかねないんだ。それをよく、考えてみなさい」

総評

本作は、温泉を舞台にした5つの短編集である。

1作目、「道後温泉死んだ女」は、愛媛県松山市の道後温泉が舞台。三田村刑事を犯人だと、名指しで指名されたことから始まる。2作目の「黒部トロッコ列車の死」は、富山県黒部市の宇奈月温泉が舞台。亀井刑事の息子・健一が車で轢かれるというショッキングな事件が発端であった。

3作目の「城崎にて、死」は、兵庫県豊岡市の城崎温泉が舞台。日下刑事の”ちょっとした恋心”から、大きな事件に発展していく。4作目の「恐怖の清流 昇仙峡」は、山梨県甲府市の湯村温泉が舞台。自殺で処理された2つの事件の謎を追い、十津川警部と亀井刑事が山梨へ飛ぶ。

そして、最後の「下呂温泉で死んだ女」は、岐阜県下呂市の下呂温泉が舞台。温泉ならではのトリックを使った事件である。

十津川警部シリーズといえば、「列車」のイメージが強いが、温泉街も何度となく登場している。十津川警部とともに、全国各地の温泉を堪能するのも、ひとつの楽しみ方だ。

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