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「死のスケジュール 天城峠」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

死のスケジュール 天城峠小説

初版発行日 2009年11月30日
発行出版社 角川書店
スタイル 長編

POINT】
天城峠、旧天城トンネル、踊子歩道、河津七滝、湯ヶ野温泉。川端康成の『伊豆の踊り子』が舞台!北朝鮮問題を背景にした国内の政治闘争が火花を散らす!
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あらすじ

総理大臣・安達の個人秘書がマンションのベランダから転落して死亡した。現場には謎めいたスケジュールが残され、不吉な文字━「警戒」「抗争」「共謀」「ジ・エンド」━が書かれていた。十津川警部が捜査を開始すると、首相の暗殺計画の情報がもたらされる。やがて第2の殺人事件が発生。被害者はまたも政治家の秘書だった。捜査を妨害する謎の勢力。十津川は手掛かりを元に伊豆・天城峠あまぎとうげに向かい、決死の捜査を遂行する!

小説の目次

  1. 首相秘書官
  2. 圧力
  3. 来日
  4. 踊子歩道おどりこほどう
  5. 行方不明
  6. 密約
  7. 最後の旅

冒頭の文

四月三日午後十時十七分、麹町こうじまちにあるマンションの四階ベランダから、一人の若い男が、転落した。

小説に登場した舞台

  • 修善寺(静岡県伊豆市)
  • 河津駅(静岡県・河津町)
  • 秘湯の宿 運龍(静岡県・河津町)
  • 天城峠(静岡県伊豆市・河津町)
  • 踊子歩道(静岡県伊豆市)
  • 湯ケ島温泉 湯本館(静岡県伊豆市)
  • 河津七滝(静岡県・河津町)
  • 浄蓮の滝(静岡県伊豆市)
  • 筏場のわさび田(静岡県伊豆市)
  • 寒天橋(静岡県・河津町)
  • 旧天城トンネル(静岡県伊豆市)
  • 昭和の森会館(静岡県伊豆市)
  • 湯ヶ野温泉 福田家(静岡県・河津町)
  • 大川端キャンプ場(静岡県伊豆市)
  • 旧天城峠(静岡県伊豆市)
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登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 田中大輔:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 片山明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 本多時孝:
    警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

事件関係者

  • 上杉明:
    35歳。安達総理大臣の個人秘書。安達首相の甥。マンションのベランダから転落して死亡する。
  • 二階堂隆司:
    36歳。総務大臣秘書。
  • R・ケインシー:
    スウェーデンの政治評論家。元外務大臣。
  • 安田:
    外務省のアジア局長。
  • 島崎要:
    三沢国交省の秘書。
  • 木下俊介:
    35歳。中国大使館に勤務している。
  • 五十嵐清之:
    外務省のOB。外交戦略研究会を組織している。
  • 三浦誠二:
    32歳。フリーライター。外交戦略研究会のメンバー。
  • 君塚肇:
    36歳。外交戦略研究会のメンバー。

その他の登場人物

  • 安藤:
    総理大臣・安達の個人秘書。
  • 上杉綾子:
    上杉明の母親。
  • 森田哲郎:
    静岡県警捜査一課の警部。
  • 井上:
    総務大臣。
  • 田島:
    中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。
  • 森下健三:
    安達首相の後援会の会長。
  • 川上:
    35歳。森下健三の秘書。

印象に残った名言、名表現

(1)初期段階は、情報の質より量を重視する。

「今は、いろんな情報に接したい。そして、それが、少しでも捜査の参考になればと、思っているんだ」

(2)外だけに目を向けるのではなく、内部の動きにも目を配らなければならない。組織人の宿命。

十津川は、わざと、自分の考えとは、反対のことを口にした。それは、上からの政治的圧力を、回避するための作戦だった。

感想

本作の舞台は、伊豆である。

劇中のキーマンである、スウェーデンの元外務大臣・R・ケインシーが、川端康成の『伊豆の踊り子』の大ファンであるため、来日して『伊豆の踊り子』の舞台を歩く、という設定になっている。

そのため、本作には川端康成が『伊豆の踊り子』を書いた湯本館、さらに、『伊豆の踊り子』の舞台になった旧天城トンネルや、湯之元温泉 福田屋なども登場する、旅情たっぷりの作品だ。

本作で、面白いと思ったシーンがひとつ。

十津川は、亀井と二人で、釣り人の格好をして、伊豆に行くことにした。釣り人ならば、竹で編んだ笠をかぶって、顔を隠すこともできる。

西本と、日下は、二人とも自動二輪の免許を持っているので、ほかの六人が、電車で伊豆へ行くのとは別に、バイクに乗り、ヘルメットをかぶって、別行動を、取ることにした。

三田村と北条早苗の二人は、若いカップルという格好で、残りの田中と片山は、伊豆の名所をスケッチしながら旅をしているという設定にした。

十津川班が、自分たちの正体を隠すため、それぞれ変装して、伊豆に向かうのである。普段は背広姿で凛々しい刑事たちが、それぞれプライベートな装いで、出かけるのである。

緊張する事件の中で、ここだけおだやかな時間が流れている。緩急を感じさせるシーンだった。

実際の事件については、2009年当時の北朝鮮問題が背景にある。金日成の後継者、拉致被害者問題、深まるアメリカと北朝鮮の対立などが反映されており、北朝鮮問題に対する日本国内の政治闘争も描かれる。

社会派ミステリーとしても、実に読み応えがあった。

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