初版発行日 2013年2月25日
発行出版社 中央公論新社
スタイル 長編
余命なき女が東京で殺され、白浜では特急くろしおの爆破事件が!二つを結ぶのは”30年前、あの夏の一日……”
あらすじ
病床で「白浜温泉に行きたい」と望んだ余命一年の女が、その二日後に殺された。十津川は小説家志望で無職の息子・雄介に疑いの目を向ける。一方、雄介は母の言葉が気になり南紀白浜に向かうが、乗車した特急くろしおが爆破されてしまう!雄介を尾行していた三田村刑事と北条早苗から報告を受けた十津川は、ある推理を胸に南紀へ飛んだ!
小説の目次
- 母の死
- さっちゃん
- 過去からの声
- 母の面影
- 反応
- 兄妹
- さらば南紀の海よ
小説に登場した舞台
- 三軒茶屋(東京都世田谷区)
- 逗子(神奈川県逗子市)
- 月島警察署(東京都中央区)
- 新大阪駅(大阪市淀川区)
- 特急くろしお
- 白浜駅(和歌山県・白浜町)
- 南紀白浜(和歌山県・白浜町)
- 崎の湯(和歌山県・白浜町)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 伊藤雄介:
28歳。無職。小説家志望。 - 伊藤美由紀:
50歳。伊藤雄介の母親。三軒茶屋で「みゆき」という飲み屋を営む。ガンで余命一年。 - 結城幸子:
35歳。「みゆき」を手伝っていた女性。 - 結城明:
結城幸子の父親。三軒茶屋で喫茶店「プチモンド」を営んでいる。 - 結城澄子:
結城幸子の母親。 - 梶礼介:
70歳。梶興業の社長。 - 野々村:
白浜駅前派出所の巡査。 - 山本三男:
梶興業の秘書。 - 梶礼太郎:
梶礼介の息子。梶興業の副社長。 - 梶節子:
梶礼介の妻。去年他界している。
その他の登場人物
- 三五郎:
伊藤美由紀が営む「みゆき」の常連客。三軒茶屋でラーメン店を営む。 - 浅野:
南紀白浜のホテルにあるバーのマネージャー。65歳。 - 今西:
南紀新聞社のデスク。 - 太田:
梶興業の秘書。 - 葛城由美:
南紀白浜にある美容院のオーナー。 - 梶晴美:
梶礼太郎の妻。 - 加藤:
白浜駅前派出所の巡査。 - 沼田:
梶興業の秘書。
印象に残った名言、名表現
■白浜温泉の”リゾート感”がよくわかる一節。
ただの田舎道を、しばらく走っていると、突然、目の前に、海が開けた。コバルトブルーの海である。そして、近代的なホテル群が、林立している。
駅の周囲は、白浜温泉ではなかったのである。白浜温泉は、ここから、始まる、そんな感じの景色の変わりようだった。
ほかの温泉地のように、和風の旅館というものは、ほとんど、見当たらない。全てが、近代的で巨大なホテルである。
目の前に広がる海は、太陽の光を受けて、きらきらと、輝いている。
総評
本作の感想をひと言で言うならば、「とてもスッキリまとまっている」であろう。
物語の前半は、本作のサブ主人公である伊藤雄介の視点がメインで進んでいく。彼の視点を追うことで、事件の大まかなあらましが見えてくる。しかし、その真相が見えない。
ここからは刑事のおでましだ。中盤以降は伊藤雄介のあとを追い、北条早苗刑事と三田村刑事のコンビが大活躍。南紀白浜に飛び、捜査と推理を重ねていく。最後に機が熟したところで、十津川警部のお出ましだ。
伊藤雄介、北条早苗&三田村刑事、十津川警部。この3つの視点が入れ替わるが、視点の入れ替わりごとに事件が進展していくので、読者が混乱することはない。
現在の事件を引き起こす原因となった30年前の出来事との関連性も納得性が高い!
コンパクトでスッキリしていて、スピード感のあるよく練り込まれたミステリー。最後のオチも面白い。さすが西村京太郎先生。
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