初版発行日 2017年2月20日
発行出版社 中央公論新社
スタイル 長編
私の評価
土佐藩家老の末裔で地元の権力者・早川秀典の娘ゆきが高知への帰省直前に刺殺された!容疑者は同郷の恋人原田か、それとも……。
あらすじ
東京の大学に通う早川ゆきは、同郷の恋人・原田と高知へ帰省する当日、自室で刺殺され、乗車予定のJR切符は消えていた!原田に疑いがかかる中、十津川と亀井は高知で地元の権力者であるみゆきの父・秀典に会う。秀典は四国新幹線開通の夢を持つ一方で、なぜか土佐くろしお鉄道が走る安芸を嫌悪していた。十津川は、南国土佐で何を見るのか!?
小説の目次
- 土佐の人々
- 持ち時間
- 北のルート
- 報告書
- 八月の三日間
- 郷土史
- 歴史に挑む
冒頭の文
原田一郎は、去年、国家公務員試験の成績が良かったので、財務省に入る事になった。財務省と言っても、国税局の方である。
小説に登場した舞台
- 特急南風
- 後免駅(高知県南国市)
- 安芸駅(高知県安芸市)
- 岩崎弥太郎生家(高知県安芸市)
- 高知駅(高知県高知市)
- 北海道新幹線はやぶさ
- 新函館北斗駅(北海道北斗市)
- 札幌(北海道札幌市)
- 新千歳空港(北海道千歳市)
- 女満別空港(北海道・大空町)
- ウトロ(北海道・斜里町)
- ホテル知床(北海道・斜里町)
- 高知龍馬空港(高知県南国市)
- 土居廓中武家屋敷(高知県安芸市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 片山明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 十津川直子:
十津川警部の妻。 - 橋本豊:
私立探偵。元警視庁捜査一課の刑事で十津川警部の元部下。 - 高田:
北海道警の警部。
事件関係者
- 原田一郎:
24歳。財務省国税局の職員。高知県安芸市出身。 - 早川ゆき:
S大学の4年生。原田一郎の恋人。高知県高知市出身。自宅マンションで死体となって発見された。 - 早川秀典:
65歳。早川ゆきの父親。高知市の市議会議長。高知の有力者。 - 早川秋子:
早川ゆきの母親。高知婦人会の幹部。 - 斉藤加代:
早川一郎のかつての恋人。安芸市在住。 - 三田愛:
25歳。新宿にある大学病院の看護師。早川一郎が北海道で知り合った女性。知床で何者かに撃たれて負傷する。 - 松下徳太郎:
高知県人会の会員。橋本豊ら5人の探偵に原田一郎の事を調べるよう依頼した。 - 上原大助:
19歳。東京の大学に通う大学生。安芸市出身。4年前、安芸市で行方不明になる。
その他の登場人物
- 安藤:
高知市長の助役。 - 上原節子:
上原大助の母親。安芸市内に在住。 - 藤野巖:
78歳。安芸市に住む郷土史家。 - 木下:
安芸市内にある酒屋の主人。
印象に残った名言、名表現
■十津川警部の苦手な事件。
「みんな真面目で、一生懸命生きている。こういう人ばかり出てくる事件は、苦手なんだ。むしろ悪人ばかりが出てきてくれた方が、楽に、捜査が出来る」
感想
本作は、ミステリー作品を通して、安芸市や土佐藩の歴史を探っていく、構成になっている。2010年代以降の、十津川警部シリーズの特徴的なかたちである。
もちろん、トラベルミステリーとしての色も残している。安芸市内の観光案内、岩崎弥太郎生家や土居廓中も登場する。また、土佐くろしお鉄道やごめん・なはり線についても、詳しく説明があった。
ただし、今回の事件で登場した北海道の知床のシーン。このシーンを知床にする必要があったのかは、甚だ疑問である。事件としては、知床であった意味が見いだせなかった。北海道が登場してしまったことで、高知色が弱まってしまった気さえする。
今回は、安芸市や土佐藩がテーマなのだから、場所を高知県内に絞ってほしかったというのが正直な感想である。
また、本作のタイトルを、「わが愛する土佐くろしお鉄道」にした意味も、わからなかったのが残念である。
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