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「近鉄特急 伊勢志摩ライナーの罠」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

近鉄特急 伊勢志摩ライナーの罠小説

初版発行日 2008年9月10日
発行出版社 祥伝社
スタイル 長編

私の評価 3.8

POINT】
失踪した老夫婦を追って、歴史と自然の地へー。十津川警部、”円空仏”の謎に挑む!
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あらすじ

熟年雑誌の読者モデルをつとめる鈴木夫妻が失踪しっそうした。楽しみにしていたお伊勢いせ参りの旅に出けかる当日、乗車予定の「のぞみ」に姿を見せなかったのだ。それどころか、二人の名をかたり旅行を続ける不審な中年カップルが出現。夫妻に何が起こったのか?捜索願が出されるが、直後、隅田川すみだがわに他殺体が浮かぶ。遺体は伊勢路いせじに現れたカップルの女性と判明。捜査に乗り出した十津川は、鈴木家で厳重に保管された円空仏えんくうぶつを発見する。木彫りの仏像と事件に関わりはあるのか?謎を追って、十津川は伊勢志摩いせしまに向かうが……。

小説の目次

  1. 還暦の旅
  2. 失踪
  3. 小さな秘密
  4. 円空に賭ける
  5. 脱出・救助
  6. 京都別宅
  7. 逆転

冒頭の文

月刊誌「マイライフ」は、来るべき老人社会を見据えて、一昨年創刊された雑誌である。

小説に登場した舞台

  • 名古屋駅(愛知県名古屋市中村区)
  • 伊勢志摩ライナー
  • 宇治山田駅(三重県伊勢市)
  • おかげ横丁(三重県伊勢市)
  • 五十鈴川にかかる宇治橋(三重県伊勢市)
  • 伊勢神宮(三重県伊勢市)
  • ミキモト真珠島(三重県鳥羽市)
  • 伊勢市駅(三重県伊勢市)
  • 鳥羽駅(三重県鳥羽市)
  • 賢島駅(三重県志摩市)
  • 岐阜羽島駅(岐阜県羽島市)
  • 近江長岡駅(滋賀県米原市)
  • 関ケ原古戦場(岐阜県・関ケ原町)
  • 醒ヶ井駅(滋賀県米原市)
  • 醒井養鱒場(滋賀県米原市)
  • 伊吹山(滋賀県米原市)
  • 高山駅(岐阜県高山市)
  • 上三之町通り(岐阜県高山市)
  • 片田漁港(三重県志摩市)
  • 立神の薬師堂(三重県志摩市)
  • 弥勒寺(岐阜県関市)
  • 奥多摩(東京都・奥多摩町)
  • 払沢の滝(東京都・奥多摩町)
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登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 田中大輔:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 本多時孝:
    警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
  • 三上本部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

事件関係者

  • 有田:
    月刊誌「マイライフ」の編集長。
  • 楠本弘志:
    月刊誌「マイライフ」の編集者。
  • 味岡みゆき:
    月刊誌「マイライフ」の編集者。
  • 鈴木明:
    60歳。AK実業に勤務するサラリーマン。月刊誌「マイライフ」の読者モデル。
  • 鈴木京子:
    60歳。鈴木明の妻。月刊誌「マイライフ」の読者モデル。
  • 小田天成:
    60歳。資産家。美術品収集家。
  • 近藤康友:
    資産家。美術品収集家。数年前、飛行機事故で亡くなる。
  • 近藤房江:
    近藤康友の妻。

その他の登場人物

  • 鈴木徹:
    30歳。鈴木夫妻の息子。
  • 鈴木さくら:
    26歳。鈴木夫妻の娘。
  • 井上健一:
    三鷹署生活保安課の刑事。
  • 中村:
    三鷹署生活保安課の刑事。
  • 太田美奈子:
    鈴木夫妻が利用していた銀座にある旅行会社の係員。
  • 安藤:
    110番司令室の担当官。
  • 田島:
    中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。
  • 剣持:
    三重県警の警部。
  • 三宅優子:
    小田天成のお手伝い。
  • 片桐絹香:
    小田天成が京都別邸に囲っている女。

印象に残った名言、名表現

(1)宇治山田駅のレトロな建物。

昔風の、宇治山田駅のアンティークな美しさに、二人は、鈴木夫妻のことを忘れて感動した。

駅舎は、クリーム色のタイルが貼られ、屋根が、スペイン風の赤で、駅舎の中は、八角形の明かり取りの窓があったりして、落ち着いた美しさを、醸し出していた。

(2)どんなに些細なことでも調べ尽くす。これが十津川流。

「われわれの考えが及ばないような過去のことが原因で、誘拐されたり、殺されたりすることもあるからな。念のため、調べてほしいんだ」

感想

本作には、二つのポイントがある。

一つは、円空仏である。

円空は、一六三二年、寛永九年、美濃国、今の岐阜県で、生まれている。その後、日本各地を巡礼しながら、生涯、十二万体の木像を彫ったといわれている。

円空がキーワードになっており、この円空の作品が事件の中心に添えられている。そのため、本作では、円空という人物について、円空の作品、円空と深く関わった場所が、登場するのだ。

よって、円空についてのあらましを学ぶことができる、教養の書になっている。

二つ目は、上質なミステリー作品であることだ。

本作は、ミステリーの王道である、大どんでん返しがある。この大どんでん返しを、最初から気づける読者は、それほど多くはないだろう。途中から、いくつかのヒントや伏線が顔を出し始めるので、勘の鋭い読者は、「もしかして!」と気づくかもしれない。

ちなみに、わたしは十津川警部が、答えを告げてくれるまで、気がつかなった。

この大どんでん返しを、十津川警部より先に、明かすことができるか?ぜひ、挑戦してもらいたい。

最後に、本作刊行にあたり、西村京太郎先生の談話が発表されいているので、紹介しておこう。

毎年、日本各地に取材に行くと、思わぬ事件、事故にぶつかることがある。伊勢志摩の取材の時も、赤福事件が起きた。

あの時は、赤福が、悪者扱いされたが、丁度、伊勢に行っていた私の眼から見ると、赤福は、とても悪者には見えなかった。今、観光客で賑わう、「おかげ横丁」は、赤福が建てたもので、赤福が復活すると、みんなが祝福した。こんなことは、現地に行かないとわからないから、誰が善者で、誰が悪者かも、簡単にはわからない世の中である。

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