〈景品表示法に基づく表記〉当サイトはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。

十津川警部「金沢・絢爛たる殺人」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

金沢・絢爛たる殺人小説

初版発行日 2007年10月4日
発行出版社 講談社
スタイル 長編

POINT】
オーレリア共和国の大統領と金沢の怪しい関係……。警察庁、外務省までもが登場するスケールの大きいミステリー!
スポンサーリンク

あらすじ

都内のビル屋上で、加賀宝生流の能衣装をまとった男の死体が発見された。被害者は死ぬ前に能を舞ったらしい。近くのホテルに滞在する某国の大統領に見せるためだったと推測された。学生時代に金沢に滞在していた大統領が昔愛した女性が、二年前に失踪していたことが判明。現地で捜査を続ける十津川を待ち受けていたのは、古都に秘められた大きな陰謀だった。

小説の目次

  1. 加賀宝生ほうしょう
  2. 不審な動き
  3. 女川
  4. 錯綜する人間たち
  5. 石油オイル
  6. ある男
  7. 解決へ

冒頭の文

その死体は、女の能面を付け、きらびやかな能衣装を着て、うつ伏せに倒れていた。

小説に登場した舞台

  • 特急しらさぎ
  • 金沢駅(石川県金沢市)
  • 兼六園(石川県金沢市)
  • 浅野川(石川県金沢市)
  • 泉鏡花「滝の白糸」像(石川県金沢市)
  • 加賀友禅会館(石川県金沢市)
  • 金沢市役所(石川県金沢市)
  • 小松空港(石川県小松市)

登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 本多時孝:
    警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

警察関係者

  • 木村肇:
    総理の外交担当の特別補佐官。元外務省の事務次官。
  • 佐久間:
    警察庁外事課の警視。
  • 中西:
    石川県警の警部。
  • 青木:
    金沢東警察署の刑事。
  • 高田:
    金沢東警察署 生活安全課の刑事。
  • 岩城:
    金沢東警察署の署長。
  • 井上:
    SP。

事件関係者

  • 小日向善三郎:
    加賀友禅問屋「えり膳」の社長。ビルの屋上で女の能面をつけて死んでいた。
  • ロハス:
    オーレリア連邦共和国の大統領。
  • 久保田絵理子:
    12年前、ロハス大統領と交際していた女性。現在は行方不明。
  • 辻村健:
    トラック運転手。
  • 草野光一郎:
    元加賀信用金庫査察部の職員。2年前に退職している。
  • 太田:
    弁護士。草野光一郎の代理人。
  • 高橋啓吾:
    30歳。下M組の組員。

その他の登場人物

  • 吉田清太郎:
    能役者。
  • サトウ:
    ロハス大統領のSP。
  • 田中文也:
    加賀友禅の職人。
  • 木村恵子:
    金沢市役所の職員。久保田絵理子の大学時代の友人。
  • 葛城:
    加賀宝生流の事務所の事務長。
  • 大場:
    外務省条約課の課長。
  • 井上:
    加賀友禅伝統産業会館の職員。
  • 渡辺:
    加賀友禅の職人。
  • 高木守:
    金沢市内の弁護士。

印象に残った名言、名表現

(1)十津川警部の苦手な相手。

エリート官僚の中でも、とびきりの、エリートといっていい。そういう相手は、どうも、十津川は苦手なのだ。

(2)組織の司令には逆らえない十津川警部の苦悩。

「実は、私たちは上司から、東京に帰るようにと、いわれているんです。私としては、金沢に、捜査のヒントがあると、そう思っているんですが、宮仕えですからね。」

(3)組織の命令には従うが、タダでは従わない十津川警部。

「命令には、従いますが、一つだけ、願望を、いってもいいですか?」

総評

本作は、オーレリア共和国の大統領と金沢市の女性の出会いが発端となった事件である。当時は、若い男女のロマンスだったのだが、大統領の立場が変わり、オーレリア共和国の情勢が変わった。

そのため、”若気の至り”が大問題になった、これが事件の根にある。

当然、国際問題に発展する可能性があるので、警察庁の外事課という国の機関が現れる。外務省の人間も登場する。話が壮大になってくる。

ただし、あくまでもミステリーの本筋は、殺人事件の犯人の捜査と失踪者の捜索なのである。

本作については、オーレリア共和国の政治的背景、国の機関の動きについての描写がほとんどで、本筋となる殺人事件の捜査については、ほとんど動きがないまま終盤を迎えてしまう。

端的にいうと、前振りが長すぎて、最後にドタバタする感が否めないのである。終盤で新たな人物が浮上して、バタバタと逮捕して、自供させて、真犯人にたどり着く。犯人が最後に登場するだけなので、逮捕したときの感動もない。

本作は、オーレリア共和国や金沢友禅について語りたかったのかも知れない。しかし、もう少しだけ、ミステリー部分の描写を増やし、被害者や犯人の人物を描いた方が、よかったのではないかと思う。

個人的には残念な作品である。

コメント