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「十津川警部捜査行 SL「貴婦人号」の犯罪」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

SL貴婦人号の犯罪小説

初版発行日 2011年9月10日
発行出版社 祥伝社
スタイル 長編

POINT】
殺人事件の「鉄道模型」は何を告げる!?東京、山口、鎌倉、京都。十津川警部が挑む二重三重の謎!
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あらすじ

インターネットで鉄道模型を販売していた男が殺害された。目撃証言から鉄道マニア雨宮の犯行とされ、十津川警部は行方を追って山口へ飛んだ。雨宮が愛するSL・C57 1型の最終運行日に、JR山口線沿線に現われると考えたのだ。だがそこに犯人の姿はなく、線路付近で東京在住の若い女性の他殺体が発見される。さらに、その被害者の横には「貴婦人号」の愛称を持つC57 1の模型があった。雨宮の仕業なのか。そして被害者たちを結ぶものは?捜査が混迷を深める中、鎌倉、京都でも新たな殺人が……。

本作のキーアイテムは、「C57 1やまぐち号

小説の目次

  1. C57 1の誘惑
  2. 撮影ポイント
  3. 接点
  4. 四人目の犠牲者
  5. 第五の標的
  6. 爆弾
  7. 最後の叫び

冒頭の文

最初に警察への連絡があったのは、世田谷区内の、K病院からだった。

小説に登場した舞台

  • 山口宇部空港(山口県宇部市)
  • 仁保駅(山口県山口市)
  • SLやまぐち号
  • 新山口駅(山口県山口市)
  • 津和野駅(島根県・津和野町)
  • 第一阿武川橋梁(山口県山口市)
  • 長門峡駅(山口県山口市)
  • 鎌倉(神奈川県鎌倉市)
  • 嵯峨野(京都市右京区)

登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 小笠原刑事:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 本多時孝:
    警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

事件関係者

  • 大野修:
    26歳。M銀行三鷹支店第一営業部につとめる銀行員。
  • 河野博史:
    30歳。インターネットでSL模型を売っていた。スパナで殴られて死亡する。
  • 雨宮健一:
    26歳。大野修の友人。ジャパントラベルという旅行会社に勤務。
  • 西岡由香:
    30歳。東京都江戸川区内のマンション在住。インターネットでブランド品を売っていた。
  • 荒木浩一郎:
    36歳。独身。インターネットで骨董品を売っていた。
  • 宮脇麻美:
    25歳。タレント。二宮あさみの芸名で活動していた。
  • 御園生健一郎:
    60歳。ジャパントレードカンパニーの社長。
  • 横井美由紀:
    大野修と交際していた女性。3か月前に自殺している。

その他の登場人物

  • 伊地知:
    K病院の医師。
  • 太田:
    山口県警の警部。
  • 新田:
    山口県警の刑事。
  • 岸本亜矢:
    25歳。大野修と同僚で交際している。
  • 浅井:
    神奈川県警の警部。
  • 最上誠:
    45歳。サラリーマン。河野博史から偽の模型を買った。
  • 野村雄作:
    26歳。サラリーマン。河野博史から偽の模型を買った。
  • 川添:
    京都府警の刑事。
  • 水野:
    京都府警の警部。
  • 大村卓:
    二宮あさみのマネージャー。

印象に残った名言、名表現

 

総評

本作でもっとも印象に残ったのは、”貴婦人号”と称される、SLやまぐち号の描写である。

作中では、鉄道マニアの容疑者が、SLやまぐち号の撮影に訪れると踏み、十津川警部をはじめ、10人の警視庁の刑事が山口県へ向かった。

そこで、容疑者が現れるであろう、撮り鉄たちの撮影ポイントで、刑事たちが張り込む。刑事たちが配置されたのは、SLやまぐち号の代表的な撮影ポイントだ。

  1. 大歳から仁保津の間
  2. 宮野から仁保の間
  3. 地福から鍋倉の間
  4. 津和野から船平山

これらの撮影ポイントについて、どのタイミングで、どの角度で、どのような写真を撮ればよいのかを、複数ページにわたって詳細に説明している。

これだけでも、SLやまぐち号への”愛”が感じられる。

ちなみに、SLやまぐち号は、2014年に刊行された「鳴子こけし殺人事件」にも登場しているのだ。それだけ、西村京太郎先生のお気に入りの列車なのだろう。

最後に、本作について、西村京太郎先生が記したことばを紹介しておく。

日本のいくつかの路線で、SLが復活している。黒煙を噴き上げ、汽笛を鳴らしながら、黒光りする機関車が、健気に走る姿は、心躍らせる。なかでも「貴婦人」と謳われるC57 1号機は美しい。

昭和四十年代になって、新幹線の登場とともに、各地でSLが姿を消していった。その頃のSLは評判が悪かった。トンネルに入ると、急いで窓を閉めないと、顔や洋服が煤で汚れてしまう。沿線の住民からは、洗濯物が汚れるという、苦情が相次いだ。

そのSLが、今、人々の心を引きつけている。正確さとスピードが優先される現代と、逆なものに、郷愁を感じるのだろうか。

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