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十津川警部「湖北の幻想」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

湖北の幻想小説

初版発行日 2005年10月5日
発行出版社 講談社
スタイル 長編

POINT】
柴田勝家が羽柴秀吉に賤ヶ岳の戦いで勝った?歴史のifに十津川が挑む!
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あらすじ

時代小説作家・広沢弘太郎ひろさわこうたろうは自分の妻である美奈子を戦国時代の美女になぞらえて「おいちかた」と呼んでいた。が、妻には愛人がおり、その男が刺殺体となって発見される。殺害現場には「オイチ」とダイイングメッセージが、残されていたー。時代小説に描かれる虚実の間で、十津川警部がたどりついた真相とは?

小説の目次

  1. お市の方
  2. ダイイングメッセージ
  3. 虚実の間
  4. 変節
  5. ライバルの死
  6. からくり
  7. 敗れし者

冒頭の文

「小説時代エイジ」の若い編集者、井上は、編集長の小田沼と二人で、渋谷のマンションに、作家の広沢弘太郎に会いに行った。

小説に登場した舞台

  • 余呉湖(滋賀県長浜市)
  • 賤ヶ岳古戦場(滋賀県長浜市)
  • 米原駅(滋賀県米原市)
  • 長浜(滋賀県長浜市)
  • 長浜城(滋賀県長浜市)
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登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三上本部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

事件関係者

  • 井上:
    「小説時代」の編集者。
  • 小田沼:
    「小説時代」の編集長。
  • 広沢弘太郎:
    50歳。時代小説作家の巨匠。
  • 富永美奈子:
    40歳。画家。広沢弘太郎の妻。父親は富永製薬の創業者一族の資産家。
  • 富永みどり:
    25歳。富永美奈子の妹。
  • 山内慶:
    画家。富永美奈子の不倫相手。
  • 木村由紀:
    30歳。広沢弘太郎の不倫相手の秘書。元K出版の編集者。
  • 白川純也:
    40歳。人気作家。時代小説作家。
  • 野中秀雄:
    白川純也のマネージャー兼運転手。元作家。かつて有望視されていた。
  • 北村誠一郎:
    ベテランの時代小説作家。

その他の登場人物

  • 田原:
    新聞記者。
  • 田中純:
    20歳。モデル。
  • 向井:
    画家。
  • 柴崎:
    デザイナー。
  • 高柳かおり:
    デザイナー。山内慶と交際していた。
  • 大田黒:
    画家&陶芸家。人間国宝。
  • 後藤:
    白川純也の主治医。
  • 桜井美由紀:
    30歳。銀座にあるクラブのママ。元看護師。白川純也がよく通っていた。
  • 楠木文恵:
    時代小説作家。白川純也を尊敬していた。
  • 杉山仁:
    中堅作家。

印象に残った名言、名表現

(1)刑事の勘が、何かあると告げている。

「冷静に考えれば、問題の小説と、現実の事件とは、何の関係もありません。そう思うのですが、しかし、どうしても引っかかってしまいます」

(2)近年の傾向。

「律儀に、雑誌を毎月購読して、ゆっくりと読んでいく読者よりも、本になるのを待ってから買って読むという、読者のほうが圧倒的に多いんだ。雑誌を作っているわれわれにとっては、少しばかり残念な傾向だがね」

感想

本作は、ミステリー小説の中に、歴史小説を組み込んだ、作品になっている。

お題は、「もし、賤ヶ岳の戦いで柴田勝家が豊臣秀吉を破ったら」である。

本能寺の変で、明智光秀が織田信長を殺害した後、豊臣秀吉が明智光秀を滅ぼし、さらに柴田勝家を滅ぼして、天下を治めるのが、史実であるが、「史実のif」に挑んでいる。

この作品だけでも、読み応えがあり、おもしろい。

また、この作品が、事件の真相を描いている、という趣向を凝らしたものだ。歴史小説は、次の8人の動向について、注意を凝らして読むと、いいだろう。

  1. 柴田勝家
  2. 丹羽長秀
  3. 徳川家康
  4. 酒井忠次
  5. お市の方
  6. 浅井長政
  7. 豊臣秀吉

ちなみに、十津川警部シリーズでは、こうした歴史小説組み込み型の作品が、多数刊行されている。

例えば、徳川家康公の死因の謎や東海道にまつわる歴史を描いた「謎と裏切りの東海道-徳川家康を殺した男」、出雲大社や日本の神道の歴史がテーマの「出雲 神々の殺人」、天草四郎の島原の乱にまつわる歴史がテーマの「天草四郎の犯罪」、日本の太平洋戦争の終戦がテーマの「八月十四日夜の殺人」、忠臣蔵の歴史小説を組み入れた「三河恋歌」、鎌倉幕府3代の盛衰の歴史小説を組み入れた「修善寺 わが愛と死」、桃太郎伝説の歴史小説を作中に組み入れた「吉備 古代の呪い」などがある。

こちらも、読み応え抜群なので、ぜひ読んでほしい。

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