初版発行日 2005年12月20日
発行出版社 光文社
スタイル 長編
韓国新幹線KTXがハイジャックされる!?犯人の目的は?終盤の闘いは、まさに瞠目!!
あらすじ
日韓関係が険悪さを増す中、日本川特使を暗殺する計画が密かに練られていた。舞台は、韓国新幹線KTX。危険を察知した十津川と亀井は韓国に飛ぶが、時速300キロで疾走するKTXは、犯人グループにハイジャックされてしまう。十津川らは計画を阻止できるのか。
小説の目次
- 暗殺プラン
- 接点
- 光州へ
- 爆発
- 列車ジャック
- 圧力
- ラスト・アタック
冒頭の文
連休が始まる直前の四月二十五日の午後、警視庁捜査一課宛てに、小さな小包が、届けられた。宛名は、警視庁捜査一課長殿。差出人の名前は、ない。
小説に登場した舞台
- 等々力渓谷(東京都世田谷区)
- 羽田空港(東京都大田区)
- 金浦(キンポ)国際空港(大韓民国ソウル特別市)
- ソウル(大韓民国ソウル特別市)
- 龍山(ヨンサン)駅(大韓民国ソウル特別市)
- 光州(クワンジュ)駅(大韓民国光州広域市)
- コリアハウス(大韓民国ソウル特別市)
- KTX
- 井邑(チョンウプ)駅(大韓民国全羅北道井邑市)
- セマウル号
- 長城(チャンソン)駅(大韓民国全羅南道長城郡)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- イ・シンジョン:
30歳。在日韓国人。N物産の国際課で勤務。等々力渓谷の中で死体で発見される。 - 小野塚勲:
副総理。 - 小野塚由美子:
小野塚副総理の夫人。 - 長谷川智子:
32歳。輸入販売店を営む。 - 小森:
日本のSP刑事。 - 荒木:
日本のSP刑事。 - 関口英雄:
35歳の男。 - 赤木雅彦:
25歳の男。
韓国
- アン・テジュン:
ソウル警察の刑事。 - キム・ソンドク:
韓国の国際局長。 - パク:
韓国のSP刑事。 - ハン:
韓国のSP刑事。
その他の登場人物
- 田口:
中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。 - 戸田:
N物産国際課の課長。 - 木下:
警視庁捜査二課の刑事。韓国への留学経験がある。
印象に残った名言、名表現
(1)韓国は、休戦中の国である。
何人か、迷彩服の兵隊の姿もある。その兵士の姿が、ここは、北朝鮮と接していて、約二年間の徴兵制がある国だということを、十津川に、思い出させた。
(2)軍隊と警察の違い。
「私の父は、昔の、日本陸軍の士官だったからね。その父が、よくいっていたことがあるんですよ。私も母から、それをきいて、覚えているんだけど、それは、こういうことなんです。国民は、軍隊が自分たちを守ってくれる。そう信じているが、実は、軍隊というのは、国民を守るものではないんだ。それを、はっきりと覚えていたほうがいい」
「元々、軍隊というのは、そういうもので、敵と戦うことが、本来の任務だから、戦いやすいように行動する。それが、軍隊の本質なんだ」
感想
本作は、韓国の新幹線・KTXを舞台にした作品である。
十津川警部といえば、日本国内というイメージが強いが、海外にも足を運ぶ、インターナショナルな刑事なのだ。実際、本作以外にも、海外を舞台にした作品が多数ある。
例えば、フランスのTGVを舞台にした「パリ発殺人特急」、シベリア鉄道を舞台にした「シベリア鉄道殺人事件」をはじめ、「オリエント急行を追え」、「パリ・東京殺人ルート」、「十津川警部・怒りの追跡」、「愛と絶望の台湾新幹線」、「十津川警部 海峡を渡る」などが、ある。
いずれの作品も、日本の旅情とは一味違い、ダイナミックだ。
さて、KTXを舞台にした本作。特筆すべきは、KTXの緻密な描写である。これは列車に精通している西村京太郎先生らしい、緻密さだと感銘を受けた。
西村京太郎先生は、本作の刊行にあたり、KTXに乗ったときのことを、次のように話している。
「作品の舞台として、外国の列車を使うのは、フランスのTGV、ロシアのシベリア鉄道についで、三度目である。日本の新幹線とは様式が違い、TVGと同じと聞いていたので、興味があった。実際に乗ってみて、型はTVGだが、細かいところに、韓国らしさが出ていて、感心した。最高時速三百キロを超え、韓国語、英語、日本語、中国語の四ヶ国語の車内放送が、いかにも、時代の先端を行く列車である」
日本の新幹線との比較も、端的に説明されているので、わかりやすい。
また、本作には、悪化する日韓関係という、政治的背景を作品に反映させている。この政治的背景があるので、犯人グループが求める要求の中身がつかみやすい。
日本と韓国の要人が、韓国で会談を行う。その途中で、KTX車内で命を狙われる。犯人グループには、韓国の青年将校、日本の青年将校がおり、それぞれ、自国の政府に、「弱腰外交をやめろ」と要求してくる。この要求のために、犯人はトレインジャックという非常手段に出た。
作品の中盤以降は、一気にスピードが加速していく。韓国軍が登場し、強烈な爆撃があったり、激しい銃撃戦が行われる。終盤の戦いは、本当に凄まじいものだった。
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