初版発行日 1988年4月5日
発行出版社 講談社
スタイル 長編
私の評価
【POINT】
事件の真相を追って十津川と亀井は北海道に飛んだ!広大な舞台で繰り広げられる傑作長編推理!
事件の真相を追って十津川と亀井は北海道に飛んだ!広大な舞台で繰り広げられる傑作長編推理!
あらすじ
太陽興産社員の古谷伸行は、一億円を横領して北海道に逃走した。愛人の中村エリ子と合流するため、急行<まりも>に乗り込んだ古谷を待っていたのは、エリ子の絞殺死体!そして、居場所を通報されたくなければ、網走で一億円を渡せという謎の電話が……。さらに、社の女性経理部員の殺人容疑も古谷にかかる。
小説の目次
- 急行「まりも」
- 石北本線
- 東京
- 新しい疑問
- 新たな殺人
- 調査依頼
- 足跡を追う
- 反撃
- 指名手配
- 冷たい海
- 確執
- 再編成
- 真相に向って
- 最後の殺人
- 最後の切り札
冒頭の文
古谷は、札幌にいた。すでに、夜が深い。時計の針は、十時を廻っている。
小説に登場した舞台
- 札幌駅(北海道札幌市北区)
- 急行「まりも」
- 帯広駅(北海道帯広市)
- ぬかびら温泉(北海道・上士幌町)
- 糠平湖(北海道・上士幌町)
- 三国トンネル(北海道・上川町)
- 大雪湖(北海道・新得町)
- 層雲峡(北海道・上川町)
- 層雲峡温泉(北海道・上川町)
- 上川駅(北海道・上川町)
- 特急オホーツク号
- 丸瀬布駅(北海道・遠軽町)
- 遠軽駅(北海道・遠軽町)
- 網走駅(北海道網走市)
- 特急「おおとり」
- 千歳空港(北海道千歳市)
- 女満別空港(北海道・大空町)
- 網走湖(北海道網走市)
- 紋別駅(北海道紋別市)
- 定山渓温泉(北海道札幌市南区)
- 特急北斗号
- 登別駅(北海道登別市)
- 登別温泉(北海道登別市)
- 室蘭駅(北海道室蘭市)
- 室蘭港(北海道室蘭市)
- 小樽運河(北海道小樽市)
- 会津高原(福島県・南会津町)
- 駒沢オリンピック公園(東京都世田谷区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 羽田:
釧路警察署の警部。 - 寺西:
網走警察署の刑事。 - 辻:
室蘭署の警部。 - 三迫:
福島県警の警部。
太陽興産
- 古谷伸行:
31歳。太陽興産の業務課長。一億円を横領して北海道に逃走する。 - 日野:
太陽興産の管理部長。 - 畑野ひろ子:
29歳。太陽興産の経理部の社員。自宅マンションで死体となって発見された。 - 浜谷夕子:
29歳。太陽興産の経理部の社員。 - 鳥井優:
太陽興産の社長。 - 鳥井良:
太陽興産の常務。社長の弟。桂エンタープライズも経営している。 - 林文彦:
38歳。太陽興産の秘書課長。 - 安藤:
35歳。太陽興産の秘書課の社員。
事件関係者
- 中村エリ子:
銀座にあるクラブKのホステス。古谷伸行の愛人。急行「まりも」の車内で殺されていた。 - 長田かおり:
26歳。欧州ブランド物販売会社「マリアンヌ」に勤務。東京都世田谷区下馬に在住。網走駅前の電話ボックスの中で死体となって発見された。 - 村川明:
30歳。四谷三丁目に事務所をかまえる私立探偵。太陽興産の林課長と親しくしていた。 - 田中ユキ:
21歳。村川調査事務所の事務員。 - 桂あや子:
銀座のクラブ「桂」のママ。登記上は桂エンタープライズの社長。原宿のマンションに在住。 - 木下清:
32歳。桂エンタープライズの役員。日野管理部長の甥。 - 原田美知子:
25歳。無職。村川明と親しくしていた。
その他の登場人物
- 島田:
急行「まりも」の車掌。 - 横田:
経営コンサルタント。十津川警部の大学時代の友人。 - 吉田昭子:
古谷伸行の元妻。渋谷でブティックを営む。 - 林恵子:
林文彦の妻。 - 本間守:
欧州ブランド物販売会社「マリアンヌ」の人事部長。 - 三浦冴子:
欧州ブランド物販売会社「マリアンヌ」の社員。長田かおりの同僚。 - 山崎:
四谷三丁目に事務所をかまえる私立探偵。 - 矢木:
糠平温泉の個人タクシー運転手。 - 入江:
「週刊・事件」の編集者。
印象に残った名言、名表現
■層雲峡。
大雪ダムを左手に見て、トンネルを抜けると、両側に、雄大な絶壁が広がった。観光地図には、「柱状節理の絶壁」と書いてある。
とにかく、のみで引っかいたような絶壁である。それが、石狩川の両岸にえんえんと続いているのだ。
感想
本作は、北海道の広大な大地が舞台になっている、旅情をかきたてる作品であった。
札幌からスタートし、帯広、糠平温泉、層雲峡、網走、定山渓温泉、登別、室蘭、小樽と登場する。今作では、1億円を横領して逃げた古谷伸行の道程であるが、読者もいっしょになって旅をしている気分になるだろう。
そして、自分も同じように、北海道の大地を縦横無尽に気が向くままに、旅をしたいと思うのである。わたしも、北海道を旅したいと思った。
もちろん、ミステリーとしても、読み応えがある作品である。殺人事件の裏には、会社のお家騒動による対立と、巨額の不正事件があったという構図である。
旅情とサスペンスの両立。これぞ、トラベルミステリーの真骨頂とも呼べる作品だった。
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