初版発行日 2000年2月29日
発行出版社 光文社
スタイル 長編
私の評価
京都駅爆破を予告する犯人に十津川警部が立ち向かう!「駅」シリーズ第8弾!
あらすじ
東京の浪人生・橋本眞人の部屋で同級生の撲殺死体が見つかった。時限爆弾を作っていたらしい橋本の行方を追う十津川警部は、京都駅爆破を予告する脅迫状が届いたことを知り、京都へ向かう。「自分たちで新しい駅舎を破壊しろ」という要求の真意を測りかねているとき、京都駅3番ホームで爆発が起きた!脅迫犯人の真の目的は何か!?
小説の目次
- 十八歳
- 事件の広がり
- 後継者
- 犯人像
- 罠にかける
冒頭の文
それは、最初、東京で始まった。
小説に登場した舞台
- 京都駅(京都府京都市下京区)
- 京都タワー(京都府京都市下京区)
- 新大阪駅(大阪府大阪市淀川区)
- 四条河原町(京都府京都市下京区)
- 八坂神社(京都府京都市東山区)
- 渡月橋(京都府京都市右京区)
- 円山公園(京都府京都市東山区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 片山明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
京都府警
- 吉田肇:
京都府警の本部長。 - 石本:
京都府警捜査一課の警部。 - 加藤:
京都府警の刑事。 - 小林:
京都府警の刑事。 - 竹下:
京都府警の爆発物処理班の隊長。
京都駅関係者
- 広川貢太郎:
京都駅・JR西日本の駅長。 - 野原謙一郎:
京都駅の助役。 - 新藤:
京都駅の管理部長。 - 藤井誠:
広川貢太郎の運転手。 - 三波:
京都駅・JR東海の駅長。
事件関係者
- 橋本眞人:
18歳。浪人生。調布のメゾン「石原」505号室の住人。部屋から木村誠の死体が発見された。現在、行方不明。 - 橋本かおり:
橋本眞人の母親。仙台在住。 - 橋本明人:
30歳。橋本眞人の兄。K建設の福岡支社に勤務。 - 木村誠:
18歳。浪人生。橋本眞人の友人。橋本眞人の部屋で死体となって発見された。 - 木村敏江:
木村誠の母親。 - 早坂やよい:
45歳。五条大橋近くの喫茶店「プチ・モンド」のオーナー。 - 高見要介:
50歳。五条橋近くにあるバイク販売店の店主。 - 木下利也:
木下印刷工房の社長。 - 君原哲也:
N建設の設計部門に勤務。橋本明人の大学時代の同級生。かつて新京都駅構想プロジェクトで新駅舎の設計に応募したが、落選した。
印象に残った名言、名表現
(1)若さ。
十津川は、自分の十八歳のときのことを考えてみた。今と、いちばん違うのは、死ぬことが怖くなかったということである。
十八歳は、まだ死が身近な存在になっていない。だから、死を実感できない。死を怖がらないのだ。無茶のやれる年齢である。
(2)京都駅が人質にされた。
この事件は、誘拐事件と同じだと、十津川は思っていた。人質になっているのは、京都駅とそこを利用する人たちである。
(3)今回の犯人の性格。
「変に、潔癖というか、ピュアというか。」
感想
2021年現在、駅シリーズは9作品が刊行されている。
- 東京駅殺人事件(1984年)
- 上野駅殺人事件(1985年)
- 函館駅殺人事件(1986年)
- 西鹿児島駅殺人事件(1987年)
- 札幌駅殺人事件(1988年)
- 長崎駅殺人事件(1991年)
- 仙台駅殺人事件(1995年)
- 京都駅殺人事件(2000年)←本作
- 新・東京駅殺人事件(2014年)
本作は、「駅シリーズ」第8作目の作品である。
事件は、殺人事件と”京都駅を人質にとった”脅迫事件という、構成になっている。おもしろいのが、犯人が後継されるという点である。
最初は、明確に犯人がわかっていた。だから、十津川たちも対処がしやすかった。だが、後継者は、犯人像がまったくわからない。それが、捜査を難しくしたといえるだろう。
事件の内容については、ここで明かすことができないが、本作のテーマになっているのが、京都駅新駅舎についてである。
現在の京都駅は、4代目といわれており、1997年に京都駅ビルが完成。この当時から、この駅ビルについては、賛否両論があった。
本作では、犯人が、京都駅の新駅舎を”ディスる”発言が、何度も登場している。
京都の新しい駅は、醜怪である。歴史の町京都には、まったくふさわしくない。古都の景観を損ない、内外の笑い物だ。
その巨大さについての記述もある。
「あの航空母艦みたいな京都駅は、びくともしないんじゃありませんか」
さらに、十津川と亀井は、京都駅構内のエスカレーターで最上階に登り、空中庭園から京都駅の中を眺めるシーン。
ジェラルミンのパイプが頭上で交錯しているのを見て、
「まるで檻の中だな」
と、呟いている。
これだけ、京都駅のデザインに対するマイナス意見の多い、本作だが、西村京太郎先生は、本作刊行にあたり、次のように談話を発表している。
京都に十数年住んだ。東京に比べると変化の少ない京都だが、それでも少しずつ変化してきている。
外観上の最初の大きな変化は、多分、京都タワーだろう。京都の美観を破壊するという批判が相次いだが、いつのまにか京都の街並みになじんでしまった。最近では、なんといっても京都駅の改造である。京都タワーのときと同じように、新しい駅についても賛否がやかましい。
この京都駅も、駅自体がさまざまな洗礼を経て、市民に認められていくだろう。その中には、あるいは、殺人事件も入っているかもしれない。
この談話を見る限り、西村京太郎先生は、京都駅のデザインに対しては、冷静に中立的な立場で、俯瞰しているのだと思う。
それでも、もしかしたら、もしかしたらではあるが、西村京太郎先生の本音としては、今の京都駅のデザインは、京都にふさわしくないと、感じているのではないだろうか?
そう邪推してしまうくらい、京都駅のデザインに対する、マイナス評価の意見が、説得力たっぷりに描かれていたのだ。
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