初版発行日 1984年5月10日
発行出版社 講談社
スタイル 短編集
私の評価
十津川警部は、踊り子号の、特異な運行に着目する!表題作ほか2編をふくむ傑作短編集!!
あらすじ
1.L特急踊り子号殺人事件
東京駅総合指令所に、「踊り子5号に爆弾を仕掛けた」と、電話がかかった。緊急停車をした踊り子号の車内点検が徹底的に行われたが、爆発物は発見されなかった。その代わり、背中にナイフが突き刺さった、サラ金会社の社長の死体が発見された。有力容疑者が捜査線上に浮上するが、アリバイが…。
2.特急しらさぎ殺人事件
調布の団地に住む花井宏は、妻の冴子とともに金沢へ旅行するが、帰りに乗った特急「しらさぎ14号」の死電区間で冴子が何者かに刺殺されてしまう。滋賀県警は殺人事件として捜査し、警視庁に捜査協力の依頼が入る。一方、十津川警部は毎週月曜日に起こる連続殺人事件の捜査に忙殺されていた。が、特急「しらさぎ14号」の事件と十津川警部が捜査していた連続殺人事件に、ある共通点が見つかる……。
3.振り子電車殺人事件
短編集「古都に殺意の風が吹く」に収録。下記を参照↓↓
→「古都に殺意の風が吹く」
小説に登場した舞台
1.L特急踊り子号殺人事件
- L特急「踊り子」号
- 三島田町駅(静岡県三島市)
- 伊東駅(静岡県伊東市)
- 熱海駅(静岡県熱海市)
- 伊豆急下田駅(静岡県下田市)
- はまゆう荘(静岡県下田市)
- 修善寺駅(静岡県伊豆市)
- 来宮駅(静岡県熱海市)
2.特急しらさぎ殺人事件
- 特急「しらさぎ14号」
- 金沢駅(石川県金沢市)
- 敦賀駅(福井県敦賀市)
- 米原駅(滋賀県米原市)
3.振り子電車殺人事件
短編集「古都に殺意の風が吹く」に収録。下記を参照↓↓
→「古都に殺意の風が吹く」
登場人物
1.L特急踊り子号殺人事件
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 桜井:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 井上:
東京駅の総合司令所の所員。 - 青山:
東京駅の総合司令所の所長。 - 佐藤:
三島田町駅の駅長。 - 水谷:
静岡県警捜査一課の警部。 - 鈴木:
静岡県警捜査一課の刑事。 - 田島久仁男:
若手タレント。 - 久木庸三:
サラ金会社「久木クレジット」の社長。L特急「踊り子号」の車内で何者かに殺害された。 - 君島由紀:
下田にある「はまゆう荘」の経営者。 - 原田久夫:
32歳。久木庸三の甥。「久木クレジット」の副社長。 - 新井冴子:
39歳。原田久夫の知人。下高井戸のマンションに在住。 - 日下今日子:
原田久夫の恋人。女子大生。修善寺出身。
2.特急しらさぎ殺人事件
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。 - 花井宏:
28歳。新宿に本社のある証券会社に勤務。調布市の団地に在住。 - 花井冴子:
26歳。花井宏の妻。金沢出身。8月16日に特急「しらさぎ14」の車内で何者かに刺殺される。 - 松田:
滋賀県警の刑事。 - 井原:
滋賀県警の刑事。 - 里見:
滋賀県警捜査一課の警部。 - 長谷川一郎:
60歳。城西信用金庫の重役。世田谷区駒沢に在住。7月26日に自宅近くの公園の林の中で殺害された。 - 秋本貢:
52歳。新宿にある服飾モード学園の理事長。新宿西口のマンションに在住。8月2日に自宅マンションの1F物置き場で死体となって発見された。 - 前田:
秋本貢の秘書。 - 田原敏郎:
53歳。杉並の田原病院の院長。8月9日に愛車のジャガーの車内で絞殺された。 - 笹本あさみ:
24歳。モデル。田原敏郎の愛人。 - 小坂井照夫:
26歳。芦花公園のスーパーに勤務。芦花公園のマンションに在住。 - 南条:
警視総監。
3.振り子電車殺人事件
短編集「古都に殺意の風が吹く」に収録。下記を参照↓↓
→「古都に殺意の風が吹く」
印象に残った名言、名表現
(1)昔と今の二枚目の違い。
昔の刑事には、甘さがなかったことである。同じ二枚目でも、現代は、甘い二枚目なのだ。子供っぽさが残ったまま、青年になってしまったといってもいいかも知れない。
(2)怒りに満ち溢れている世界。
今は、やたらに、怒りたいことにぶつかる。街を歩いていても、電車や、タクシーに乗っていても、不愉快なことが、待ち構えているような気がする。
感想
本作は、3編からなる短編集であるが、それぞれ、短すぎず長すぎず、ちょうど良いボリュームである。電車での移動時間に読み切れるので、ちょっとした暇つぶしには最適だろうと思う。
3作品とも良作であるが、2作目の「特急しらさぎ殺人事件」が最も、秀逸であった。自分の不遇に対する怒り、社会に対する怒りを、殺人という形で発散してしまった、男の末路が描かれている。
この犯人は、4人の男女を殺した後、警視総監をターゲットにするのだが、この警視総監は、警察組織の威信をかけて、絶対に守らなければならない。刑事たちの鬼気迫る捜査は、スリリングで面白い。
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