初版発行日 1994年1月31日
発行出版社 徳間書店
スタイル 長編
私の評価
ふと目にとめた奇妙な新聞の三行広告から、恐るべき脅迫事件へとたどり着いた十津川警部。頭脳版と十津川のスリリングな対決!
あらすじ
警視庁捜査一課の十津川警部は、ある朝、奇妙な新聞広告に目をとめた。<ヒロシ 1031Dのことで話がついた……>。その三行広告が掲載されて間もなく、ヒロシという名の青年が相次いで殺害された。1031Dを特急ひだ11号の列車番号と推理した十津川たちが凶悪犯罪の予感を抱きつつひだ11号に警乗を続けるうち、列車内で若い乗客が毒死した。ボストンバッグに時限爆弾を隠し持っていたこの男の名もヒロシだった。一連の事件の背後にJR東日本への脅迫があることを察知した十津川は、犯人の割り出しを急ぐが……。
小説の目次
- 1031D
- 若い乗客
- 連結
- 戦いの始まり
- のぞみ19号
- 終局への加速
冒頭の文
警視庁捜査一課の十津川は、朝食の時、新聞に、丹念に眼を通す。
小説に登場した舞台
- 名古屋駅(愛知県名古屋市中村区)
- 特急ワイドビューひだ11号
- 富山駅(富山県富山市)
- 下呂駅(岐阜県下呂市)
- 東京駅(東京都千代田区)
- 小田原駅(神奈川県小田原市)
- 福島駅(福島県福島市)
- 仙台駅(宮城県仙台市青葉区)
- 一ノ関駅(岩手県一関市)
- 北上駅(岩手県北上市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 清水新一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 菊池:
岐阜県警の刑事部長。 - 三崎:
岐阜県警の警部。 - 平野:
愛知県警の警部。
事件関係者
- 木下広:
28歳。N建設資材部資材一課の社員。高円寺のマンションに在住。新宿二丁目で死体となって発見された。 - 森口博:
28歳。明大前のガソリンスタンドに勤務。井の頭公園脇の歩道で死体となって発見された。 - 中野広志:
28歳。去年の暮れまでW建設で働いていた。世田谷区松原のマンションに在住。特急ワイドビューひだ11号の車内で死体となって発見された。 - 五十嵐昭:
52歳。中野区に住む資産家。2月にトラックに轢かれて死亡した。 - 服部知男:
杉並区宮前のマンションに住む男。去年の4月まで名古屋のT電話局で働いていた。 - 井上要介:
60歳。私立探偵。 - 山崎信太:
28歳。ファクトリーチームに所属するレーサー。 - 大野健夫:
KA電機に勤務していが今年の1月に退職した。 - 大野明子:
30歳。大野健夫の妻。元KA電機の社員。 - 柴邦夫:
42歳。大野明子の兄。かつてJR東海に勤めていた。 - 小早川:
JR東日本の社長。 - 杉本:
JR東日本の保安部長。
その他の登場人物
- 新井:
N建設資材部資材一課の課長。 - 原みどり:
23歳。N建設資材部管理課の社員。木下広の恋人。 - 三田勇:
下呂にあるホテルのマネージャー。 - 石川:
W建設の計画部長。 - 河野:
W建設の社員。中野広志の友人。 - 今井:
名古屋のT電話局の職員。 - 高橋:
レーサー。ファクトリーチームのリーダー。 - 佐野:
KA電機の社員。大野健夫の上司だった。 - 小沢:
コンピュータの技師。 - 浅野大二郎:
新宿にあるコンピュータ会社「R・K」の社長。
印象に残った名言、名表現
■警察からみた始まりは、犯人にとって終わりである。
十津川が、いつも感じるのは、事件を、なぜ、未然に防げないのだろうかということだった。
死体が見つかってから、警察は動き出すのだが、犯人から見れば、それは、事件の初めではなく、終りなのである。
感想
本作は、JR東日本を相手取った、身代金の脅迫が、事件の本筋であった。この本筋に関連して、連続殺人が発生し、十津川警部たちが捜査をすることになったのである。
事件の発端というよりかは、十津川が事件の匂いに気がついたのは、新聞に掲載された三行広告である。
<ヒロシ 1031Dのことで話がついた……>
なんとも、怪しい匂いをプンプンさせた広告であるが、これを発見し、この広告から事件の捜査を展開させた十津川警部は、やはりプロである。
事件の姿が明確になってからは、犯人たちと十津川警部の頭脳戦となる。狐と狸の化かし合いではないが、犯人たちの巧妙な策略を、十津川警部がどう見破って対処していくかの戦いであった。
神経をすり減らすような、ピリピリとした展開が、続いていく。
正直、トラベルミステリーとしての楽しみは少ないが、この心理戦が本作の魅力である。
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