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「愛の伝説・釧路湿原」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

愛の伝説・釧路湿原小説

初版発行日 2001年5月30日
発行出版社 光文社
スタイル 長編

私の評価 3.9

POINT】
タンチョウの舞う美しい釧路湿原を舞台に、ロマンの香り漂うミステリー意欲作!
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あらすじ

釧路湿原にあるタンチョウサンクチュアリに、ボランティアを志願してやってきた白井香織。責任者の持田は、香織の謎めいた雰囲気に惹かれる。しかし、香織を調査に来た私立探偵と、その妻の殺害事件が、二人の運命を引き裂いた。事件を捜査する十津川の尋問を受けた翌日、香織が姿を消したのだ!香織の「過去」を追って、十津川は横浜に飛んだ。そして、彼女の逃避行が選挙違反の連座制から、県会議員の夫を守るためであることを知る。

県有地の払い下げ問題で揺れる神奈川県議会と、その陰で策謀をめぐらす大企業のエゴ。タンチョウの舞う美しい湿原を舞台に、いま黒い魔の手が、香織に迫る!

小説の目次

  1. タンチョウのいる風景
  2. 一人の男
  3. 十津川警部
  4. 失踪
  5. 裏切りのデート
  6. 黒い回廊
  7. タンチョウによろしく

冒頭の文

三月末の釧路湿原には、まだ雪が残っているし、風も冷たい。

小説に登場した舞台

  • 釧路湿原(北海道・釧路町)
  • 釧路湿原駅(北海道・釧路町)
  • 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ(北海道・鶴居村)
  • 塘路駅(北海道・標茶町)
  • 塘路湖(北海道・標茶町)
  • 網走駅(北海道網走市)
  • たんちょう釧路空港(北海道釧路市)
  • 釧路市湿原展望台(北海道釧路市)
  • 逗子海岸(神奈川県逗子市)
  • 細岡駅(北海道・釧路町)

登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 片山明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 田中大輔:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

警察関係者

  • 鈴木:
    釧路警察署鶴居村駐在所の巡査部長。
  • 大月:
    北海道警捜査一課の警部。
  • 小暮:
    神奈川県警捜査二課の刑事。

事件関係者

  • 持田:
    39歳。「鶴居村・伊藤タンチョウサンクチュアリ」の責任者。
  • 中田悦子:
    39歳。世田谷区のマンションに在住。自宅で絞殺された後、火をつけられた。
  • 中田治:
    45歳。中田悦子の夫。私立探偵。塘路湖で水死体となって発見された。
  • 中西正和:
    37歳。神奈川県会議員。S物産の元社員。横浜の旧家の息子。
  • 中西可奈子:
    32歳。中西正和の妻。小田原の海産物問屋の娘。中西正和の県会議員選挙でお金をばらまいた選挙違反容疑がかけられている。白井香織の偽名で「鶴居村・伊藤タンチョウサンクチュアリ」のボランティアをしていた。
  • 中西利夫:
    5歳。中西夫妻の息子。

M商事

  • 長友準:
    40歳。M商事本社企画室から神奈川支店に派遣された社員。
  • 五島正明:
    35歳。M商事本社企画室から神奈川支店に派遣された社員。
  • 安藤重彦:
    35歳。M商事本社企画室から神奈川支店に派遣された社員。
  • 甲斐信良:
    M商事本社の事業部長。
  • 笠原廉二:
    50歳。M商事の元社員。交通事故死する。

その他の登場人物

  • 井上:
    「鶴居村・伊藤タンチョウサンクチュアリ」の職員。
  • 小坂井:
    「鶴居村・伊藤タンチョウサンクチュアリ」の職員。
  • 阿部:
    「鶴居村・伊藤タンチョウサンクチュアリ」のボランティア。東京にあるM大学の学生。
  • 花村:
    「日本野鳥の会・本部」の広報担当。
  • 木下:
    獣医。
  • 森:
    「鶴居村タンチョウ愛護会」の職員。
  • 浜崎:
    釧路市内に住むサラリーマン。持田の大学時代の同級生。
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印象に残った名言、名表現

■鳥は親鳥を真似て飛べるようになる。

「親鳥が飛んでみせる。それを、子供は、見てまねるんです。親は、上空を飛びながら、じっと見守る。すべて、親鳥がやるんですよ」

感想

本作は、企業と政治家が企んだ”ドス黒い世界”と、釧路湿原とタンチョウの美しい”白銀の世界”のコントラストが際立った作品だったと思う。

前半は、鶴居村にある伊藤タンチョウサンクチュアリが舞台。釧路湿原の大自然や美しいタンチョウ、そこで働く人々の様子が描かれており、穏やかで美しい世界である。

後半は、県有地の払い下げ問題を根本とした、政治とカネの問題や、企業の悪巧み、殺人事件の捜査など、サスペンスフルな展開が続く。前半の美しさから、後半のドス黒さのギャップが激しい。

個人的には、最初から最後まで、釧路湿原を舞台にしてほしかったが、それだと、警視庁捜査一課がお出ましする機会がなくなってしまうので、仕方ないのであろう。

ただ、最後の最後で、釧路湿原の穏やかな世界に戻ったのは良かった。

最後に、西村京太郎先生のことばを紹介しておく。

釧路湿原と聞いて、まず思い浮かべるのはタンチョウヅルだろう。

その優美な姿は、千円札にも描かれている。あの絵は、タンチョウのオスとメスの求愛ダンスの様子が描かれているという。大きくは羽ばたき、首を空に向けて鳴く。タンチョウヅルは、一生同じつがいで過ごすといわれ、愛の純粋さを示すようだともいわれる。

求愛ダンスはその象徴だが、同時に、そのダンスは、ライバルに対する威嚇行為でもあるらしい。

愛は、美しいと同時に残酷なのだ。

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