初版発行日 2010年2月11日
発行出版社 文藝春秋
スタイル 長編
社長の殺人は正当防衛か?計画殺人か?「家康公顕彰会」をめぐる血の惨劇。
あらすじ
同郷の偉人として徳川家康への敬慕を公言し、生まれ故郷の静岡に多額の寄付を絶やさず名誉市民にもなっていた警備保障会社の社長・松永。その彼に脅迫状が届き、襲われた。思わず「暴漢」を殺してしまったという彼の正当防衛の主張に、十津川警部は不審を覚える。松永が隠していた「過去の貌」。そこに、事件を解く鍵があったー。
小説の目次
- 静岡(府中宿)
- 徳川家康公顕彰会
- 家康の最期
- 神になろうとした家康
- 歴史の暗号
- 斬奸状
- 徳川家康を殺した男
冒頭の文
秘書課長の加藤久雄は、社長の松永公生に呼ばれた。
小説に登場した舞台
- 静岡駅(静岡県静岡市葵区)
- 更科(静岡県島田市)
- 駿府城公園(静岡県静岡市葵区)
- 教導石(静岡県静岡市葵区)
- 静岡浅間神社(静岡県静岡市葵区)
- 久能山東照宮(静岡県静岡市駿河区)
- 久能山駅(静岡県静岡市駿河区)
- 日本平ロープウェイ(静岡県静岡市駿河区)
- 日本平ホテル(静岡県静岡市清水区)
- 安倍川(静岡県静岡市葵区&駿河区)
- 宇津ノ谷峠(静岡県静岡市駿河区・藤枝市)
- 鞠子宿(静岡県静岡市駿河区)
- 田中城跡(静岡県藤枝市)
- 掛川駅(静岡県掛川市)
- 静岡市役所(静岡県静岡市葵区)
登場人物
警視庁
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 中村:
警視庁初動捜査班の警部。
事件関係者
- 加藤久雄:
40歳。警備保障会社GSAの秘書課長。 - 松永公生:
64歳。警備保障会社GSAの社長。元警視庁の警視正。静岡生まれ。徳川家康を尊敬している。 - 松永信正:
松永公生の息子。警備保障会社GSAの副社長。 - 西田恵一:
警備保障会社GSAの副社長。 - 佐伯美奈子:
40歳。K女子短大の非常勤講師。歴史の研究家。東海道の歴史に精通している。加藤久雄の大学時代の同級生。 - 小野徳次:
徳川家康公顕彰会の副会長。 - 長田征也:
徳川家康公顕彰会の若手会員。 - 本多正之:
徳川家康公顕彰会の会長。
印象に残った名言、名表現
(1)徳川家康公の東照公御遺訓。
「人の一生は重荷を負て、遠き道をゆくが如し。いそぐべからず。不自由を常とおもへば不足なし。こゝろに望おこらば困窮したる時を思ひ出すべし。堪忍は無事長久の基。いかりは敵とおもへ。勝事ばかり知てまくる事をしらざれば害其身にいたる。おのれを責て人をせむるな。及ばざるは過たるよりまされり」
(2)静岡の由来。
「昔から、ずっと府中と呼ばれていたんだけど、明治になった時に、府中というのは不忠、忠義を尽くさない、不忠に通じるから、変えたほうがいいということになったらしいわ。最初は、この辺りの地名、賤機山から賤ヶ丘といっていたらしいんだけど、それでは賤の字が分かりにくいというので、静岡になった。そういわれているわ」
感想
徳川家康公は徳川幕府260年の礎を築いた人物であり、戦国の世を終わらせた天下人でもある。織田信長、豊臣秀吉とならび、戦国武将のなかで、もっとも人気がある武将の一人だ。
「これ1冊で、徳川家康公にまつわる歴史やエピソード、東海道の地理や歴史に詳しくなる」
本作はそういった趣向をこらしたミステリーだ。とくに、徳川家康公の死因についての謎が、ミステリーの解決の鍵を握る、という面白い仕掛けが用意されている。
歴史に精通し、歴史小説においても非凡な才能をもつ、西村京太郎先生らしい、作風だと感じる。
なお、十津川警部シリーズでは、本作のように、歴史を題材にしたミステリーも数多く刊行されている。
例えば、出雲大社や日本の神道の歴史がテーマの「出雲 神々の殺人」、天草四郎の島原の乱にまつわる歴史がテーマの「天草四郎の犯罪」、日本の太平洋戦争の終戦がテーマの「八月十四日夜の殺人」、忠臣蔵の歴史小説を組み入れた「三河恋歌」、鎌倉幕府3代の盛衰の歴史小説を組み入れた「修善寺 わが愛と死」、桃太郎伝説の歴史小説を作中に組み入れた「吉備 古代の呪い」などがある。
こちらも必見だ。
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