初版発行日 2014年6月17日
発行出版社 光文社
スタイル 長編
東京駅で発生した殺人事件の裏に隠された壮大な計画!リニューアルされた東京駅・東京ステーションホテルを舞台に十津川警部の名推理が冴えわたる!
あらすじ
修復されて美しく生まれ変わった東京駅と東京ステーションホテル。一人の新人作家がここに滞在し、鉄道ミステリーの構想を練っていた。その部屋から見下ろせるコンコースで、人待ち顔で佇んでいた女性が、深夜に謎の死を遂げた。さらに駅で開かれるコンサート「エキコン」に爆破するとの脅迫電話が!
小説の目次
- エキコン
- 二日前
- 臨戦一課
- 駅の怪談
- 関連を探る
- 事件発生
- 終局
小説に登場した舞台
- 東京駅(東京都千代田区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 谷村誠:
JR東日本の東京駅駅長。55歳。 - 高見沢明彦:
新人小説家。「鉄道研究」の公募小説に応募し、入選した。鉄道作家として東京駅を舞台にした小説の創作をはじめる。 - 田中勇作:
「鉄道研究」編集部の編集者。 - 長谷川千佳:
30歳。「世界平和の集い」というグループで働いている。東京駅丸の内南口のコンコースで何者かに殺される。 - 羽田伍郎:
45歳。宮城刑務所に入っていたが、最近出所した。 - 太田美由紀:
38歳。東京駅の女子トイレて気を失っていた女性。 - 平野洋介:
長谷川千佳殺害事件で自首をしてきた男。 - ヤン:
池袋にあるインドネシア料理店の店主。 - スハルノ:
インドネシアの運輸大臣。 - 吉野弥生:
10年前、スハルノ大臣と交際していた女性。
その他の登場人物
- 谷村八重子:
谷村誠の妻。 - 中村:
警視庁捜査四課の警部。 - 阿部:
公安調査庁職員。 - 野中:
公安調査庁職員。 - 木下:
警視庁の爆発物処理班。 - 井上さやか:
32歳。東京駅の駅員。 - 美花:
スハルノ一行の通訳。中国系。 - 外山誠一:
商社の課長。
印象に残った名言、名表現
■東京駅をひとつの町として表現した。
「駅というのは、いってみれば、町と同じなんですね。町の中も、誰だって、自由に歩けます。町の中で、バスやタクシーに乗ることもできます。」
総評
本作は、9作品ある”駅シリーズ”最後の作品であった。
はじめに事件が起こる。中盤戦はとても静か。もちろん、小さな事件はあるが、些細なものである。そして、最後にドカンと動き出す。そんな構成である。
中盤戦があまりにも静かなので、終盤の激しい動きとの落差が楽しめる。
さて、舞台になったのは東京駅。2012年にリニューアル工事が完成し、2014年に東京駅開業100周年を迎えていた。本作は2014年6月に初版が発行されたので、当時の時流に乗ったテーマだった。
東京駅のリニューアルに合わせて、東京ステーションホテルも新しくなった。そのステーションホテルの描写が実に艶めかしい。
東京駅に合わせて、ステーションホテルもリニューアルして、真新しくなった。東京駅は細長いので、当然、ステーションホテルも、細長い造りになっている。壁の白い大理石が、やたらに眩しい。
実際、西村京太郎先生がステーションホテルに宿泊し、食堂も利用されたのだろうと思われる。食堂の様子も実に精密に描かれている。
ステーションホテルの客室は、二階から四階の一部だが、屋根の下に、広い、空間がる。そこを、食堂に、改装したのである。屋根の下の広い空間を食堂に変えたので、普通の食堂という感じはなかった。とにかく、天井が高くて、その天井が斜めになっている。そこから、明かりが入ってきて、やたらに明るい食堂である。
今度は十津川警部の視点でステーションホテルの様子が描かれている。
いかにも、クラシックな造りである。ヨーロピアンクラシックというらしい。階段も広々としているし、バーなどの造りにも格調がある。
ステーションホテル特有の構造についてもこんな記載があった。
東京駅の、北と南にそれぞれ設けられたドームであり、その二つのドームそれぞれに面して、ホテルの部屋が南北合計で二十八室もあることだった。
縦長の大きな窓から、北と南のそれぞれのドーム内が、はっきりと見え、その上、そのドームの中を、通行する人々の姿も、はっきり見ることができる。
筆者は本作を読み、ステーションホテルに宿泊し、舞台になった東京駅をもう一度じっくり眺めようと思う。そして、東京駅というひとつの街をじっくり体感したい。
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