初版発行日 2007年4月25日
発行出版社 中央公論新社
スタイル 長編
会社社長の失踪と、大学の同窓生の殺人。二つの事件を結ぶカギは、35年前の洞爺湖にあった。
あらすじ
六十歳ー還暦という人生の節目を迎えた会社社長が、五千万円の小切手を持って失踪。十日後には、大学の同窓生がホテルの一室で絞殺された。ふたつの事件を結ぶ鍵は、三十五年前の北海道・洞爺湖にあるらしい。謎を追って十津川警部は当時の同窓生を徹底的に追いつめていく。果たして失踪の裏に隠された、驚くべき真実とは何か!?
小説の目次
- 失踪一週間
- 還暦の旅
- 北へ向かう
- 訪ね歩く
- 告白
- 四人の容疑者
- 救出作戦
冒頭の文
小川憲之は、いつものように、迎えの車に乗ると、会社に向かった。
小説に登場した舞台
- 東京駅(東京都千代田区)
- 浅虫温泉(青森県青森市)
- JR青森駅(青森県青森市)
- 洞爺駅(北海道・洞爺湖町)
- 洞爺湖(北海道・洞爺湖町)
- 洞爺湖温泉(北海道・洞爺湖町)
- 弘前市役所(青森県弘前市)
- 新大阪駅(大阪府大阪市淀川区)
- 道頓堀(大阪府大阪市中央区)
- 鎌倉(神奈川県鎌倉市)
- 軽井沢駅(長野県・軽井沢町)
- 草津温泉(群馬県・草津町)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 佐々木由香里:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 小川憲之:
60歳。小川物産の社長。K大学の卒業生。大学時代はワンダーフォーゲル部に所属していた。 - 小川美弥子:
55歳。小川憲之の妻。 - 田崎健二:
60歳。東京・八重洲にデザイン事務所をもっている。小川憲之の大学時代の同級生。ワンダーフォーゲル部に所属していた。 - 橋本豊:
私立探偵。元警視庁捜査一課の刑事で十津川警部の部下。 - 細川香織:
札幌のG女子大の学生。35年前、洞爺湖で仲間とキャンプをしていた時に、行方不明になった。 - 渡辺孝則:
社会評論家。小川憲之の大学時代の同級生。ワンダーフォーゲル部に所属していた。 - 白石忠:
旧姓・太田忠。大阪の白石宝石の副社長。小川憲之の大学時代の同級生。ワンダーフォーゲル部に所属していた。 - 平山光弘:
画家。鎌倉にアトリエを持っている。小川憲之の大学時代の同級生。ワンダーフォーゲル部に所属していた。 - 木村真一:
弘前文化協会の理事長。文化庁からの天下り。小川憲之の大学時代の同級生。ワンダーフォーゲル部に所属していた。
その他の登場人物
- 鈴木:
小川憲之の運転手。 - 三田:
小川憲之の秘書。 - 長谷川:
小川物産の重役。 - 田崎聡子:
田崎健二の妻。 - 青木:
田崎健二のデザイン事務所の副所長。 - 荒木:
65歳。洞爺新報の嘱託の記者。 - 青山文武:
国立にある女子校の校長。小川憲之の大学時代の同級生。 - 加藤:
洞爺湖にある派出所の巡査長。 - 笠松:
北海道警捜査一課の刑事。 - 高橋喜美子:
若手の女流画家。平山光弘の弟子。 - 渡辺文子:
渡辺孝則の妻。 - 木村章子:
木村真一の妻。 - 竹村:
草津診療所の医師。 - 水沼:
長野県警の警部。
印象に残った名言、名表現
■別荘地・軽井沢の歴史。
軽井沢は、昔は、中山道の宿場町で、軽井沢のほかに、追分、沓掛と三つの、宿場があった。そのうちの軽井沢が、別荘地・避暑地として、脚光を浴びるようになると、沓掛のほうも、軽井沢と名前を変えて、発展していった。
感想
本作は、大会社の社長がある日、突然、姿を消すところからはじまる。
家族の依頼をうけて、私立探偵の橋本豊が社長の捜索を開始。それから間もなくして、社長の大学時代の同級生が殺害されてしまう。非常にショッキングな幕開けとなった。
この殺人事件が起きたことで、十津川班が捜査に乗り出す、という流れである。
本作のミッションは次の2つ。
- 失踪した小川憲之の行方探し
- 殺された田崎健二の犯人探し
小川憲之の行方を橋本豊が探し、田崎健二の殺害事件は十津川班が捜査する、という構図だ。
当然、この2つの事件は、密接に関係している。小川憲之の行方を探せば、田崎健二の殺害事件に行き着き、田崎健二の事件を調べれば、小川憲之の行方も追うことになる。
橋本豊と、十津川班は違うアプローチから、この事件の真相を暴いていくことになる。当然、行き着いた答えはまったく同じ結果になった。
その答えは、35年前の洞爺湖に根があり、タイトルの「時効なき殺人」に答えの一端がある。
容疑者の絞り込みから断定、逮捕に至るまでの流れは、十津川警部シリーズならではの面白さがある。とくに最終章のスピード感は、圧巻だった。
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