初版発行日 1991年11月30日
発行出版社 祥伝社
スタイル 長編
十津川警部たちは犯人を追い、西へ東へ。尾道、因島、熊本、天草、阿蘇、日田、弘前、新発田、新潟、松江、倉敷。東北から九州にいたる大追跡!
あらすじ
「妹がおぼれかけた!?」広島県尾道市の病院からの一報に、日下刑事は驚愕した。妹の京子は、同地を旅行中に姿を消した親友ユキの足取りを追っていたのだ。駆けつけた兄に、京子は因島からの帰路、何者かに船から突き落とされたと告げた。これは、ユキを探すなという警告なのか。日下とともに捜査に乗り出した十津川警部だが、やがてユキの水死体が上がったー。
小説の目次
- 友が愛した町
- 連絡船
- 土生港
- タクシー
- キャンプ
- 平凡な人々
- 聞き込み
- ブルートレイン
- 罠にかける
- 組織
- 金の行方
- 追い詰めて
小説に登場した舞台
- 新尾道駅(広島県尾道市)
- 尾道市街(広島県尾道市)
- 尾道の桟橋(広島県尾道市)
- 向島(広島県尾道市)
- 因島(広島県尾道市)
- 因島大橋(広島県尾道市)
- 土生港(広島県尾道市)
- 因島公園(広島県尾道市)
- 天狗山(広島県尾道市)
- いんのしまロッジ(現:ホテルいんのしま)(広島県尾道市)
- 水軍スカイライン(広島県尾道市)
- 椋浦港(椋浦港)
- 大浜崎キャンプ場(大浜崎キャンプ場)
- ブルートレイン「はやぶさ」
- 熊本駅(熊本県熊本市)
- 天草五橋(熊本県宇城市、上天草市)
- 天草パールセンター(熊本県上天草市)
- 大観峰(熊本県阿蘇市)
- 阿蘇駅(熊本県阿蘇市)
- 特急「ゆふいんの森」
- 日田駅(大分県日田市)
- 耶馬渓(大分県中津市)
- 中津警察署(大分県中津市)
- 弘前市街(青森県弘前市)
- 特急「白鳥」
- 新発田駅(新潟県新発田市)
- 新津駅前(新潟市秋葉区)
- 新潟駅(新潟市中央区)
- 寝台特急「出雲1号」
- 松江駅(島根県松江市)
- 宍道湖(島根県松江市)
- 特急「やくも8号」
- 倉敷駅(岡山県倉敷市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 清水宏:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
尾道署、上野署、熊本県警、大分県警、新発田警察署
- 柴田:
尾道署の刑事。 - 野村:
尾道署の刑事。 - 三宅:
上野署の刑事。 - 小野田:
熊本県警の警部。 - 渡辺:
大分県警の刑事。 - 内山:
新発田警察署の刑事。
事件関係者
- 日下京子:
日下刑事の妹。 - 林ユキ:
日下京子の友達。尾道へ旅に出た後に失踪する。 - 早川良介:
企業コンサルタント。旅行グループ「ピノキオ」のリーダー。 - 山崎繁:
カメラマン。旅行グループ「ピノキオ」のメンバー。 - 豊田新一郎:
シナリオライター。旅行グループ「ピノキオ」のメンバー。 - 村川ゆう子:
OL。旅行グループ「ピノキオ」のメンバー。 - 高林麻里。
モデル。旅行グループ「ピノキオ」のメンバー。
その他の登場人物
- 佐伯:
尾道の自動車工場の社長。 - 宮本:
日下京子が因島で乗ったタクシーの運転手。 - 加瀬:
宮本の親戚。 - 磯辺:
因島市役所の観光課職員。 - 畑中功:
大浜崎キャンプ場でキャンプをしていた男。 - 豊田良子:
豊田新一郎の妻。 - 上田:
高林麻里が所属しているプロダクションの社長。 - 八木:
十津川警部の大学時代の同級生。サラリーマン。ときおり旅行雑誌に随筆を書いている。 - 小阪功一:
上野のローン会社の社員。 - 山下:
ブルートレイン「はやぶさ」の車掌。
個人的な推しポイント
- 尾道や因島の美しい情景。
- 尾道、因島、熊本、阿蘇、天草、日田、弘前、新発田、新潟、松江、倉敷など、東北から九州までの日本各地が登場する。
- 犯人と十津川警部の激しい”心理戦”。
総評
十津川警部の魅力は論理的な捜査にあると思う。論理的な捜査とは、原因から結論への筋道がしっかりしており、原因をささえる根拠もしっかり出揃っているということだ。
その論理的な捜査をささえる土台になっているのが、捜査の緻密さであろう。そう、十津川警部班は緻密なのである。
例えば、本件では旅行グループ「ピノキオ」の行動を時系列ですべて洗い出した。
9月11日 朝 東京出発
熱海着 一泊
9月12日13日 京都着 二泊
9月14日 姫路着 一泊
9月15日 尾道着 因島でロッジに泊まる
9月16日 同じく因島泊
9月17日 四国に渡り高知 一泊
9月18日 高知→東京 フェリーで帰京
東京着は19日である。
このすべての行程について宿泊したホテルや旅館を確認し、彼らが行った場所の周辺で事件が起きていないかすべて列挙していった。とても骨の折れる作業だと思う。
しかし、データがそろわないとロジックは弱々しいものになってしまう。
物語の終盤、十津川警部はロジックを組み立てて、華麗な推理を行い、見事に犯人逮捕にいたる。これを支えているのが、前半から中盤にかけて行われる緻密なデータ集めである。
これらがベースにあるからこそ、後半のロジカルな推理に説得力があるのだ。
そして、今回もクライマックスのスピード感は素晴らしい。
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