初版発行日 1991年4月25日
発行出版社 角川書店
スタイル 長編
私の評価
海を越えた十津川の名推理!華麗なるオリエント急行に隠された謎。舞台はベルリン、そして厳寒のシベリアへー。
あらすじ
国内でのイベントのため、オリエント急行が再来日した。ところが上陸したオリエント急行から大量の拳銃と、人間の手首が発見された…。政界絡みの拳銃密輸の謎を追う十津川は、極秘捜査のためヨーロッパへ飛ぶ。一方、日本での捜査に当たる亀井の前に現れる謎の外国人たちと、彼らの奇怪な行動―。
小説の目次
- 再来日の日
- トカレフ自動拳銃
- 偽装
- 出発
- 私立探偵
- 亡命者
- ベルリンの壁
- ライター
- 保護者
- ココム
- モスクワ
- 赤い流星号
- 連動
- 誘拐
- 危険信号
- 接触
- ノボシビルスク
- 日本人
- 決断
- SL出発
- 迎撃
- 凍土の中で
- 時間との戦い
- 夜の別荘
冒頭の文
十月八日の午後一時六分。ウラジオストクから、ソビエトの貨物船ユージン・オーリア号(1万トン)が、瀬戸内海を通り、徳山工業地帯の一角にある下松港に入港した。
小説に登場した舞台
- 徳山下松港(山口県下松市)
- 成田空港(千葉県成田市)
- フランクフルト空港(ドイツ)
- フランクフルト中央駅(ドイツ)
- ベルリン中央駅(ドイツ)
- 青山葬儀所(東京都港区)
- ブランデンブルク門(ドイツ)
- シェレメーチエヴォ国際空港(ロシア)
- ヤロスラヴリ・グラーヴヌィ駅(ロシア)
- シベリア鉄道
- 箱根(神奈川県・箱根町)
- イルクーツク旅客駅(ロシア)
- ウラン・ウデ(ロシア)
- ウラジオストク(ロシア)
- 広島空港(広島県三原市)
- 広島駅(広島県広島市)
- 下松駅(山口県下松市)
- 南紀白浜空港(和歌山県・白浜町)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。ベルリンで行方不明になった警察庁の外事課職員・佐伯を捜索するためにドイツへ渡る。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。ドイツ語とフランス語が堪能なため、十津川と同行しドイツへ渡る。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 佐伯:
警察庁の外事課の職員。十津川警部の友人。オリエント急行の捜査でベルリンに渡ったが行方不明になる。 - 新田:
警察庁の国際部長。 - 尾形:
警視庁の副総監。 - 高野:
警視庁交通係の刑事。 - 相川:
和歌山県警の警部。 - 十津川直子:
十津川警部の妻。 - 橋本豊:
私立探偵。元警視庁捜査一課の刑事、十津川警部の元部下。
事件関係者
- 三崎:
綜合出版社「ジャパン」の営業部長。オリエント急行招待の実行委員長。 - 松井勝彦:
元国務大臣。元S大学の学長。今年の8月に他界している。 - 松井ゆみ:
23歳。松井勝彦の娘。 - ゲルト・ハイマー:
63歳。ドイツ人。六本木にあるドイツ料理店の店主。神宮外苑内で車にはねられて死亡した。 - ハインリッヒ:
ドイツ人。松井ゆみの恋人。 - 五十嵐弘:
五十嵐工業の社長。松井勝彦の弟。S大学の学長。 - 藤川史郎:
S大学の教授。ゲルト・ハイマーの友人。 - エレナ:
藤川史郎の妻。ドイツ人。 - 代田:
松井家の顧問弁護士。 - 平野:
代議士。 - 村田保太郎:
かおる交易の社長。 - ・F・ブラウン:
35歳。元東ドイツ軍の将校。佐伯の行方を知っていたが、東ベルリン地区の廃工場で何者かに射殺された。 - 藤本収一郎:
太平洋戦争後にシベリアに渡ったが、その後ソビエトに帰化した男。鉄道の整備工場で働いている。
その他の登場人物
- 田代:
亡命者援助グループ東京支部の副支部長。 - 美江:
ゲルト・ハイマーの妻。 - 塩谷利夫:
N電気の営業部長。ゲルト・ハイマーの友人。 - 佐川:
N興信所の所員。 - 小川:
ソビエトに経済視察団を送っているK社の渉外部長。
感想
本作は、ドイツ、ソビエト連邦(現在のロシア)、そして、日本を舞台にした国際的な武器の密輸入の事件を追うストーリーだった。もちろん、この事件の一環として殺人事件が発生している。
十津川警部といえば、犯人をおって日本津々浦々まで足を運ぶイメージが強いが、海外で活躍するインターナショナルな一面も持ち合わせている。
もともと英語が堪能であるため英語圏では問題なく活動できるほか、本作ではドイツ語とフランス語が堪能な日下刑事を同行させた。このように、必要とあらば海外にもでかけていくのが、十津川警部の真骨頂である。
本作意外にも、海外を舞台にした作品が刊行されており、例えば、フランスのパリを舞台にした「パリ発殺人列車 十津川警部の逆転」、シベリア鉄道を舞台にした「シベリア鉄道殺人事件」、中国の上海を舞台にした「上海特急殺人事件」、台湾を舞台にした「愛と絶望の台湾新幹線」、韓国を舞台にした「韓国新幹線を追え」などがある。
日本国内の事件とはまた違った魅力があるので、ぜひ一度読むことをおすすめする。
最後に、西村京太郎先生のことばを紹介しておこう。
作家というのは、因果なもので、どんなに美しいものでも、犯罪と結びつけて考えてしまう。オリエント急行が、その豪華で美しい車体をきらめかせて、日本国内を走った時も、この列車には、どんな犯罪が似合っているだろうかと、考えた。
空想が、空想を生んで、とうとう、シベリアの原野まで広がってしまったが、小説自体もそのくらい面白ければいいのだが。
コメント