初版発行日 1992年9月30日
発行出版社 徳間書店
スタイル 長編
私の評価
六本木のクラブで男が死んだ。謎を追って北海道へ飛んだ十津川は、スーパーとかちの個室で新たな殺人事件に遭遇する。連続殺人を追う十津川警部の苦悩!
あらすじ
六本木のクラブで、男が喧嘩に巻き込まれて死亡した。被害に遭う前、男はホステスに「二十四日から北海道旅行をする」と楽しげに話していた。女性同伴の旅らしく、財布から飛行機や個室付特急の切符をみせていたという。その財布が遺体から消えていた。十津川警部は、出頭してきた被害者の恋人から「旅行の件は知らない」と聞かされる。犯人の狙いは切符にあった、と睨んだ十津川は、男が乗るはずだった列車をスーパーとかち5号と推理し、北海道へ飛ぶ。当日、特急の個室で発見されたのは、新たな女性の死体だった!
小説の目次
- 二月二十四日個室
- 容疑者
- ジグザグな関係
- 自殺への組立て
- 再び北への旅
- 郷愁の町
- コンパニオン
- データバンク
- 意外な展開
- 次の犠牲者
- ラストチャンス
- 後継者
冒頭の文
ケンカは、突然、起きた。それまでは、むしろ、和気あいあいの感じで、飲んでいたのだ。
小説に登場した舞台
- 千歳空港(北海道千歳市)
- スーパーとかち
- 新夕張駅(北海道夕張市)
- 札幌駅(北海道札幌市北区)
- 特急北斗
- 函館駅(北海道函館市)
- 啄木小公園(北海道函館市)
- 帯広駅(北海道帯広市)
- 十勝川温泉ホテル大平原(北海道・音更町)
- ワイン城(北海道・池田町)
- 愛国駅(北海道帯広市)
- 幸福駅(北海道帯広市)
- 特急踊り子号
- 伊豆急下田駅(静岡県下田市)
- 下田港(静岡県下田市)
- 晴海埠頭(東京都中央区)
- 吾妻橋(東京都墨田区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 清水新一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 佐野:
北海道警の警部。 - 青木:
北海道警の刑事。 - 小林:
帯広署の刑事。 - 中本:
静岡県警の警部。
事件関係者
- 田崎功:
M工業営業部に勤務。独身。六本木のクラブで3人組に殴られて死亡する。 - 早川君子:
25歳。銀行員。田崎功とケンカした3人組の一人。 - 加東裕一郎:
早川君子が勤める銀行のお得意様。田崎功とケンカした3人組の一人。 - 羽田恵子:
27歳。無職。北海道帯広市出身。東京都港区赤坂に在住。去年まで六本木のクラブ「シベール」のホステスをしていた。スーパーとかちの車内で死体となって発見された。 - 田代ゆみ子:
26歳。六本木のクラブ「シベール」のホステス。初台の自宅マンションで死体となって発見された。 - 片山亘:
46歳。六本木のクラブ「シベール」のマネージャー。函館市内の啄木小公園で死体となって発見された。 - 小田切秀夫:
53歳。M工業の社長。羽田恵子と親しかったクラブの客。 - 五井専一郎:
51歳。S製薬の副社長。羽田恵子と親しかったクラブの客。 - 野口彰:
46歳。タレント。羽田恵子と親しかったクラブの客。 - 安達幸一郎:
札幌市内にあったアダチデータバンクの元社長。かつて羽田恵子が社長秘書をしていた。2年前に倒産している。 - 真田宜一:
29歳。F組の組員。
その他の登場人物
- 新井かおり:
田崎功の恋人。 - 小田切明子:
小田切秀夫の妻。 - 原口勇:
32歳。六本木のクラブ「シベール」のバーテン。 - 青木信也:
27歳。六本木のクラブ「シベール」のボーイ。 - 杉山幸夫:
26歳。六本木のクラブ「シベール」のボーイ。 - 岡田弘:
23歳。六本木のクラブ「シベール」のボーイ。 - 菊池誠:
21歳。六本木のクラブ「シベール」のボーイ。 - 渡辺真一郎:
45歳。六本木のクラブ「シベール」の常連客。 - 野村久成:
50歳。六本木のクラブ「シベール」の常連客。 - 田久保清:
39歳。六本木のクラブ「シベール」の常連客。 - 水沼正男:
45歳。スーパーとかちの車掌。 - アイコ:
帯広のコンパニオン。 - 二宮アキ子:
羽田恵子の高校時代の同級生。白金台のマンションに在住。 - 小坂:
札幌市内でラーメン店を営む。アダチデータバンクの元社員。 - 松本良夫:
札幌市内の興信所に勤務。安達幸一郎と高校時代の同級生。 - 中田:
札幌市内のサラリーマン。安達幸一郎の大学時代の同級生。 - 江上:
札幌市内にある旅行会社に勤務。安達幸一郎の大学時代の同級生。
印象に残った名言、名表現
■帯広の風景。
道路は、あくまでも、真っすぐに伸び、両側に、広大な麦畠と、牧草地帯が広がっている。それに、アクセントをつけているのは、赤松林や、イチイの林である。
感想
本作は、丁寧な捜査と論理的な推理が魅力の、十津川警部シリーズらしい作品である。
今回は、登場人物が多く、殺された人数も多い事件であったが、関係者を一人も漏らさずピックアップし、一つ一つ検証する丁寧な捜査が進められた。この細かさが、十津川警部シリーズの真骨頂である。
この捜査のおかげで、少しづつ、犯人像が見えてきて、一人に絞り込まれていく。だが、ここで手を緩めないのが十津川流。
”神は細部に宿る”ごとく、ストーリーが完全に出来上がるまで、ひたすら地道な捜査を続けるのだ。
そして、捜査線に浮上したある男の人物像が少しずつ、変化していくのがわかる。
最初は、純粋な男という印象だったが、次第に金目当ての殺人鬼へと変わっていったかのような印象を覚える。
どれが、本当の姿なのか?あるいは、男が変貌していったのか?
最後、意外などんでん返しが待っている。このどんでん返しは、”心理的なトリック”と呼べるものだろう。物理的なトリックではなく、心理的なトリックというのがミソだ。
どんなトリックが仕掛けられていたのか?本書を手にとって確かめてもらいたい。
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