初版発行日 2014年1月20日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 長編
豪華車両<グランクラス>で殺人が!二つの事件の間に何があったのか!?有力政治家とのつながりは!?
あらすじ
東京から新青森へ向かう東北新幹線の「はやぶさ」豪華客室<グランクラス>車内で、車両の最後尾の座席にいた男が死亡した。その男は東京・六本木の高級マンションに住む経営コンサルタントで、保守党の有力代議士・君原清道が射殺された事件の容疑者として十津川がマークしていた人物だった。現場に居合わせた専門誌「鉄道の友」の編集者・立花とカメラマン白石由美も巻き込んだ捜査の行方はー!?
小説の目次
- グランクラス
- 二の会
- 八ヶ月の闇
- 若者と老人の世界
- あるメッセージ
- 反転
- 本当の終わりは
冒頭の文
「鉄道の友」という月刊の専門誌がある。鉄道関係の、専門誌としては、新しいほうである。発行している出版社、鉄道の友社は、四谷三丁目にある。
小説に登場した舞台
- 四谷三丁目駅(東京都新宿区)
- 東京駅(東京都千代田区)
- 東北新幹線はやぶさ
- 新青森駅(青森県青森市)
- 盛岡駅(岩手県盛岡市)
- 石垣島(沖縄県石垣市)
- 晴海埠頭(東京都中央区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 立花遼:
鉄道の友社の編集者。 - 白石由美:
鉄道の友社のカメラマン。 - 佐々木要:
45歳。六本木に住む経営コンサルタント。東北新幹線はやぶさの車内で殺される。 - 浅野かおり:
40歳。独身。銀座のクラブ「あさの」のママ。月島の高級マンションに住む。 - 松井裕二:
六本木のマンションの管理人。
政治関係者
- 宮本政一郎:
代議士。保守党の官房副長官。 - 緒方良夫:
宮本政一郎の秘書。元清原清道の秘書。 - 崎田信一:
宮本政一郎の秘書。 - 中本:
宮本政一郎の個人秘書。 - 姫野俊夫:
宮本政一郎の個人秘書。 - 里村:
宮本政一郎の顧問弁護士。 - 清原清道:
72歳。元保守党の大物代議士。政治家引退後も「ニの会」を開き、影響力を保持する。 - 大西:
清原清道の秘書。 - 内村:
清原清道の秘書。 - 三浦博:
28歳。保守党の若手代議士。宮本政一郎の腰巾着と呼ばれている。 - 高橋雅治:
49歳。保守党の副幹事長。青森選出。 - 本田良二:
高橋雅治の個人秘書。 - 田辺修:
高橋雅治の個人秘書。 - 河野啓太:
保守党の若手代議士。 - 今井孝志:
保守党の若手代議士。 - 豊田泰明:
保守党の若手代議士。 - 児玉多恵:
30歳。保守党に所属していた元政治家の娘。宮本政一郎と交際している。 - 小野寺:
資産家。かつて宮本政一郎の個人秘書だった。
その他の登場人物
- 安藤:
鉄道の友社の編集長。 - 小室えりか:
銀座のクラブのママ。 - 平田:
清原清道の伝記を書いた新聞記者。 - 藤田:
警視庁捜査二課の警部。 - 竹田:
海上保安庁の副本部長。 - 須藤:
世田谷署の刑事。
印象に残った名言、名表現
(1)2012年10月に生まれ変わった東京駅の変貌。
立花が瞠目するのは、東京駅の内側の変貌の激しさである。八重洲口のほうは、九月にグランルーフが完成している。
丸の内口は、昔の設計通りに、造り直されているから、高さは低い。その代り、地下は五階まで、掘り下げていて、総武線の乗り場は、地下五階である。
(2)児玉多恵が話した日本の政治についての話。政治だけでなく、どんな事物も座学でわかることと、座学では学び得ないものがある。
「日本の政治って、新しい部分が半分、古い部分が半分でしょう?新しい部分については、本を読めば、かなり分かるのです。でも、古い部分は、本を読んだだけでは分かりません。まるで、タヌキのばかし合いのようなところが、ありますものね」
感想
本作は、東北新幹線はやぶさで起こった殺人事件が発端となった。この殺人事件の裏側には、仁義なき政治闘争があった、というのが全体像である。
複雑な人間関係や、一筋縄ではいかない利害関係。この作品内では、魑魅魍魎といわれる政治の舞台裏が緻密に描かれており、大変興味深い。
また、”昭和維新”をかかげ、昭和維新の歌を口にしていた若者たちが、二・二六事件を起こし、戦争に突き進んでいったという、日本政治の近現代史にも触れており、登場する若手政治家たちが、”平成維新”と銘打ち、権力掌握に突き進むのだ。
事件の最初が東北新幹線はやぶさのグランクラス、最後が大型客船という、実に豪華な舞台になっているのも、見どころだ。
コメント