初版発行日 1999年9月25日
発行出版社 光文社
スタイル 短編集
私の評価
次々起こる難事件に、十津川警部が全身全霊をこめて死闘の限りを尽くす!力作短編4本を収録!
あらすじ
1.心中プラス1
一週間前に心中したとされる運送会社の社長夫婦に、評論家で首相ブレーンの小早川勇が関わっているという噂があるため、極秘捜査を命じられた十津川警部。小杉夫妻が心中したKホテルの部屋から、小早川が出てきたところを目撃した、元ルームサービス係の原田君子から話を聞くために、彼女の行方を追っていたが、原田君子が死体となって発見される。
2.処刑のメッセージ
インターネットのホームページに小坂井ゆきという人物の葬儀を知らせる奇妙な伝言が。伝言によると葬儀会場は首都高速羽田線?西本刑事から話を聞いた十津川警部は、これは「処刑のメッセージ」と直感、小坂井ゆきは女優の小坂井ゆかの旧芸名であることをつかんだそのとき、ゆかが首都高速で車を狙撃され死亡した!犯人はなぜゆかの旧芸名を使ったのか?インターネットにアクセスした謎の人物とゆかとの意外な接点とは?
3.加賀温泉郷の殺人遊戯
東京の私立探偵・小泉明が、片山津温泉のKホテルに宿泊中、心臓麻痺で死亡した。3ヶ月前の大晦日、同じKホテルで東京在住の古川治も心臓麻痺で死亡している。石川県警が捜査したが事件性は見当たらなかった。偶然起きた死亡として処理された矢先、同じKホテルで3人目の死亡者が出る……。
4.特別室の秘密
短編集「裏切りの街 東京」に収録。下記を参照↓↓
→「裏切りの街 東京」
小説に登場した舞台
1.心中プラス1
- 修善寺駅(静岡県伊豆市)
- 修善寺温泉(静岡県伊豆市)
- 三島駅(静岡県三島市)
- 東京駅(東京都千代田区)
2.処刑のメッセージ
- 成田空港(千葉県成田市)
- 那覇空港(沖縄県那覇市)
- 新大阪駅(大阪府大阪市淀川区)
- 特急「サンダーバード45号」
- 金沢駅(石川県金沢市)
- 和倉温泉(石川県七尾市)
- 能登島大橋(石川県七尾市)
- 能登島(石川県七尾市)
3.加賀温泉郷の殺人遊戯
- 片山津温泉(石川県加賀市)
- 柴山潟(石川県加賀市)
4.特別室の秘密
短編集「裏切りの街 東京」に収録。下記を参照↓↓
→「裏切りの街 東京」
登場人物
1.心中プラス1
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。 - 土田:
修善寺署の刑事。 - 小杉健一郎:
53歳。小杉運送の社長。資金繰りに苦しみKホテルで心中したとされている。 - 小杉美代子:
49歳。小杉健一郎の妻。資金繰りに苦しみKホテルで心中したとされている。 - 小早川勇:
評論家。K大学の助教授。現在の首相のブレーンの一人。 - 原田君子:
42歳。元Kホテルのルームサービス。三鷹市内のマンションに在住していたが、引っ越した。その後、四トントラックの荷台の中から死体となって発見された。 - 青木文子:
Kホテルのルームサービス。阿佐ヶ谷のマンションに在住。 - 井上匡:
26歳。車の部品メーカーの社員。原田君子の死体が入っていたトラックを運転していた。 - 山口:
警視庁初動捜査班の警部。 - 杉本卓:
35歳。小早川勇のマネージャー。サラ金会社「㈱オネス」の社員。 - 大場進太郎:
68歳。サラ金会社「㈱オネス」の社長。 - 滝ゆう子:
女優。 - 長谷川久志:
倒産した日本料理店「菊乃」のオーナー。3億円の負債を苦に自殺した。 - 長谷川美奈子:
長谷川久志の妻。名古屋出身。
2.処刑のメッセージ
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。 - 小坂井ゆか:
20歳。現代プロに所属する若手女優。本名は石黒きくえ。金沢市生まれ。旧芸名は「小坂井ゆき」だった。首都高速羽田線で何者かに車を狙撃され死亡する。 - 原田:
現代プロのマネージャー。 - 仁木悠:
30歳。フリーカメラマン。世田谷区太子堂のマンションに在住。「金田良介」の名前でインターネットに登録していた男。 - 三浦:
新宿にあるN組の組長。 - 柏原勇:
N組の組員。以前、現代プロ所属のタレントだった。傷害で府中刑務所に1年に服役し、出所した。 - 柏原みさと:
柏原勇の妹。調布市下石原のマンションに在住。 - 林卓一:
沖縄の嘉手納基地で働いている男。 - 佐藤正彰:
沖縄の嘉手納基地で働いている男。 - 玉城:
沖縄県警の刑事。 - 伊地知:
沖縄県警の刑事。 - 八木:
私立探偵。
3.加賀温泉郷の殺人遊戯
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 小泉明:
私立探偵。かつて伊勢佐木署の警察官だった。傷害事件の前科あり。片山津温泉のKホテルの一室で心臓麻痺で死亡した。 - 戸田秋子:
26歳。片山津温泉のマッサージ師。 - 吉田:
石川県警の刑事。 - 辻:
石川県警の刑事。 - 河井:
石川県警捜査一課の警部。 - 古川治:
60歳。世田谷区太子堂に在住。去年の大晦日、片山津温泉のKホテルの一室で心臓麻痺で死亡した。 - 古川浩:
古川治の息子。 - 浅井清二:
30歳。世田谷区成城のマンションに在住。古川浩の大学時代の後輩。片山津温泉のKホテルの一室で心臓麻痺で死亡した。 - 金子タキ:
片山津温泉のKホテルの仲居。 - 千代:
片山津温泉のKホテルのラーメン屋女将。元芸者。 - 小菊:
片山津温泉の芸者。
4.特別室の秘密
短編集「裏切りの街 東京」に収録。下記を参照↓↓
→「裏切りの街 東京」
印象に残った名言、名表現
なし。
感想
今回の短編集は、「秀作を揃えたな」と感じた。
いずれも、短編らしい小気味良さがあり、サクサクと読み進められる。だからといって、ミステリーにも手を抜いていない。しっかりと、作り込まれたミステリーであり、余韻を残す結末も秀逸である。
個人的にイチオシの作品は、「加賀温泉郷の殺人遊戯」である。片山津温泉のKホテルで起こった3件連続の不審死。とある理由から、十津川警部が一般客になりすまし、Kホテルに宿泊するのである。
ある意味、命がけのミッションを、自ら身体を張って捜査する。「もしかしたら殺されるかもしれないから…」と、亀井刑事に電話するほどの緊迫感があったのだ。
十津川警部の推理と最後の賭けも素晴らしい。
最後に、本作刊行にあたり発表された、西村京太郎先生のことばを紹介しておく。
最近になって、同じ小説でも、長編と短編はまったく別のものだということがわかってきた。
正直に言って、短編のほうが緊張する。私の場合、長編はラストだけ決めて書き出してしまう。もちろん、書き出しには凝るし、始めてしまえば何とかなるのだが、短編はそうはいかない。きちんと起承転結を考えておかないと、謎の提示だけで、枚数がつきて、バランスのとれない作品になってしまう。その代わり、うまく書きあげたときは、長編にはない満足感を味わうことができる。
果たしてこの作品で、読者は満足感を得られたかどうか、それが心配だが……。
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