初版発行日 1991年4月5日
発行出版社 講談社
スタイル 長編
私の評価
罠に嵌められた親友・亀井刑事を救うため、十津川警部は奔走する!
あらすじ
あの亀井刑事が逮捕!?故郷の青森に帰る途中、妻子を誘拐された亀井は、犯人の指示どおり旅を続ける。が、金木・宮古で連続殺人に遭遇、容疑は亀井にかけられてしまった。親友の亀井を救うため、十津川警部は立ちあがったが、犯人の仕掛けた罠は、あまりにも巧妙かつ大胆で!
小説の目次
- 帰郷
- 推理
- 死体の傍に
- 罠の中身
- 死者が増えて
- 疑惑の中心に
- 最後の対決
冒頭の文
警視庁捜査一課の亀井刑事は、五年ぶりに、故郷の青森に帰ることになった。
小説に登場した舞台
- 仙台駅(宮城県仙台市青葉区)
- 北上駅(岩手県北上市)
- 盛岡駅(岩手県盛岡市)
- 特急「はつかり5号」
- 二戸駅(岩手県二戸市)
- 青森駅(青森県青森市)
- 弘前駅(青森県弘前市)
- 五所川原駅(青森県五所川原市)
- 金木駅(青森県五所川原市)
- 芦野公園駅(青森県五所川原市)
- 宮古駅(岩手県宮古市)
- 浄土ヶ浜(岩手県宮古市)
- 上野駅(東京都台東区)
- 松本駅(長野県松本市)
- 成田空港(千葉県成田市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 清水新一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田原:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 三浦:
青森県警の警部。 - 新田:
青森県警の刑事。 - 倉田:
岩手県警の警部。 - 鈴木:
宮城刑務所の看守。 - 小坂井:
埼玉県警の警部。 - 安藤:
長野県警の警部。 - 加東:
福井県警の警部。 - 外山清:
49歳。城西署の署長。一身上の都合により退職することに。 - 片山:
城西署の副署長。 - 亀井公子:
亀井刑事の妻。
事件関係者
- 小田功:
亀井刑事を脅して連れました男。中野に住む経営コンサルタント。浄土ヶ浜で死体となって発見された。 - 原勇一:
49歳。9年前、12億円の宝石強盗で亀井刑事に逮捕され服役していた男。中野のマンションに在住。現在行方不明。その後、死体となって発見された。 - 水島徹:
36歳。9年前、12億円の宝石強盗で亀井刑事に逮捕され服役していた男。池袋のマンションに在住。青森県の生まれ。芦野公園内の池の中で死体となって発見された。 - 石渡久男:
貴金属店の店主。 - 金子あさみ:
30歳。新宿にあるクラブのホステス。原勇一の女。宮古出身。現在行方不明。 - 島崎:
銀座に事務所をかまえる弁護士。原勇一と水島徹の弁護をした。木曾の馬籠近くで車が道路から転落して死亡した。 - 島崎秋子:
島崎弁護士の妻。 - 内山:
島崎法律事務所の弁護士。 - 五井邦夫:
36歳。小田功の仲間。フリーター。池袋に在住。亀井刑事の家族を誘拐した実行犯の一人。東北新幹線の車内で何者かに殺害される。 - 高木亮介:
銀座にある高木宝石店の店主。東尋坊の近くで水死体となって発見された。
その他の登場人物
- 内藤:
亀井刑事の叔父。 - 谷沢章子:
25歳。スナックのホステス。五井邦夫の女。 - 山本市也:
49歳。東北新幹線やまびこの専務車掌。 - 高木和子:
高木亮介の妻。 - 佐々木:
駒沢大学駅前にあるM不動産の社長。
印象に残った名言、名表現
■故郷は東京から離れていてほしい。
おかしないい方だが、いつまでも東京からは、遠く離れた場所であって欲しいのだ。あまり東京に近くなってしまうと、故郷が消えてしまうような気になってくるのである。
感想
衝撃的なオープニング、魅力的な謎、スピード感と緊迫感のある描写、二転三転するストーリー、大どんでん返しが起こる真犯人。すべてのバランスが取れた良作である。
亀井刑事が罠に嵌められて殺人犯に仕立て上げられ、逮捕されてしまう。その後も、立て続けに起こる殺人事件。通常、連続して事件が起これば、亀井刑事への疑惑が晴れる展開なのだが、逆に、容疑をより強固なものになっていくという、泥沼展開。
十津川班が必死の捜査を続けるが、容疑者が二転三転する。そして、黒幕は、まさかの人物…。さすがにこれは誰も予想はできないはずだが、とんでもない所に真犯人が存在していた。驚天である。
この、とんでも大どんでん返しをぜひ味わってもらいたい。
また、本作では、地方警察の、警視庁への対抗意識もよく描かれていた。亀井刑事をなんとしても起訴したい地方警察。逆に、亀井刑事の無実を信じ、何としても釈放したい警視庁捜査一課。この対立も面白かった。
最後に、西村京太郎先生のことばを紹介しておこう。
地名を昔の呼び名にすると、景色までが違って見える時がある。地名は死語になっていて、歴史の中にしか存在しない。だが、地方に旅すると、この景色だけは、昔の名前で呼んだ方が適切ではないかと思う時が、時々ある。そんな時は、嬉しくなる。川は、大都会のそれのように汚れてはいなくて、山も、昔の緑の濃さを残してくれているからだ。津軽や陸中も、そんな昔なつかしい場所に思って、この小説を書いた。
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