初版発行日 1976年5月20日
発行出版社 光文社
スタイル 長編
私の評価
9人の乗組員はどこに消えたのか!?十津川警部、海の怪事件に挑む!壮大な謎とサスペンスが魅力、第一級の海洋ミステリー!
あらすじ
「魔の海」と恐れられる小笠原諸島沖で、行方を絶っていた大型クルーザーが発見された。船には九名が乗っていたはずだが、船内は無人で荒らされた様子もなかった。用意された人数分の朝食と不気味に切り刻まれた後方マスト…。やがてクルーザーを発見したヨットマンたちが、次々と変死をとげていく。
小説の目次
- 魔の海
- 海難審判
- 十津川警部
- 審判第一回
- 雨の能登
- 審判第二回
- 指輪の謎
- 審判第三回
- 突破口
- 古都
- 雨中の罠
- 審判最終回
- エピローグ
冒頭の文
その日が、五月十三日の金曜日だったからではあるまいが、三浦半島の油壷のヨットハーバーからタヒチに向かった外洋ヨット「シャーク(鮫)Ⅰ世号」は、小笠原近くで、小型だがかなり強い低気圧にぶつかってしまった。
小説に登場した舞台
- 油壺ヨットハーバー(神奈川県三浦市)
- 神奈川県警察本部(神奈川県横浜市中区)
- 金沢駅(石川県金沢市)
- 急行「能登路1号」
- 輪島駅(石川県輪島市)
- 琴ヶ浜(泣き砂の浜)(石川県輪島市)
- 京都駅(京都府京都市下京区)
- 焼津港(静岡県焼津市)
- 逗子駅(神奈川県逗子市)
- 荒崎公園(神奈川県横須賀市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 小川:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 宮前:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西崎:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 武田:
神奈川県警の刑事。 - 三吉:
神奈川県警の刑事。 - 茂井:
調布警察署の刑事。 - 長根:
石川県警の刑事。 - 三根沢:
滋賀県警の刑事。
外洋ヨット「シャークⅠ世号」の乗組員
- 永田史郎:
31歳。外洋ヨット「シャークⅠ世号」の艦長で持ち主。都内にあるレストラン5店舗のオーナー。油壷ヨットハーバーで死体となって発見された。 - 岡部孝夫:
29歳。コック長。本職はコック。永田史郎が営む新宿2丁目にあるレストラン「ナガタ」に勤務。代田橋のアパートに在住。 - 久本功一郎:
クルー。大学生。 - 野村英雄:
25歳。クルー。元銀行員。行方不明になった後、泣き砂の浜で水死体となって発見された。 - 山本良宏:
28歳。クルー。国家公務員。深大寺近くのアパートに在住。自宅アパートのお風呂で死体となって発見された。
外洋ヨット「アベンジャーⅡ世号」の乗組員
- 細見竜太郎:
40歳。海洋研究家。外洋ヨット「アベンジャーⅡ世号」のオーナー。資産家。 - 細見伸子:
35歳。細見竜太郎の妻。 - 吉村昭之:
42歳。科学評論家。 - 今西敏郎:
30歳。新日本テレビのカメラマン。 - 日下部武:
29歳。新日本テレビのカメラマン。 - 山口令二:
36歳。新日本テレビ報道部の記者。 - 北島正夫:
32歳。クルー。W電機営業課の社員。 - 松木孝:
30歳。クルー。イラストレーター。 - 本田嘉昭:
28歳。コック長。駒込で妹とスナックを営業している。
横浜地方海難審判
- 日高洋太郎:
58歳。理事官。3年前まで大型タンカー「大洋丸」の船長だった。 - 小西弘:
事務官。 - 津島:
主席審判官。 - 丹羽:
審判官。 - 土方:
審判官。 - 白根:
補佐官。T大学教授。 - 山野辺:
補佐官。V大学教授。 - 佐藤:
参審員。M大学の教授。心理学専門。 - 大庭正太郎:
証人。かつて船員をしていた男。
事件関係者
- 児玉:
調布市深大寺近くにあるA新聞販売店のアルバイト。高校一年生。 - 風見美津子:
23歳。野村英雄の恋人。中野にある喫茶店「ロマンス」の店員。中野のアパートに在住。泣き砂の浜で水死体となって発見された。 - 矢崎豊行:
新聞社「新東京ジャーナル」社会部のデスク。十津川警部の大学時代の同級生。 - 桜井道雄:
「新東京ジャーナル」にシャークⅠ世号の5人を殺したのは自分だと電話した男。渋谷区内のマンションに在住。 - 伊久地奈美:
京都・嵯峨にある号的に在住の資産家の姪。細見竜太郎の恋人。 - 矢頭:
焼津漁業共同組合の副組合長。 - 三好幸夫:
相模新聞社会部の記者。
感想
トラベルミステリーの第一人者として知られる西村京太郎先生。その代表的な交通手段は、やはり「電車」である。電車に関する豊富な知識を背景に、列車を駆使ししたトリックや、旅情あふれる電車旅を描いてきた。
トラベルミステリーの中でも、「トレイン・ミステリー」こそが、西村京太郎先生の代名詞なのかもしれない。そして、トレインミステリーの代表作は、やはり十津川警部シリーズと言えるだろう。
そんな十津川警部シリーズは、初期作品においては、海洋ミステリーがメインだったといえる。本作「消えた乗組員」をはじめ、十津川警部第1作の「赤い帆船」、3作目の「消えたタンカー」は、船がテーマの、海洋ミステリーなのだ。
本作は、十津川警部シリーズ初期の代表作であり、海洋ミステリー3作の代表作ともいえる。それほどの緊張感とサスペンスあふれる作品だった。また、海洋についての熱量溢れる説明も魅力的たった。
現代の幽霊船「マリー・セレスト号」に仕立てたと思われる本作。トレインミステリーとは、一味違う、ダイナミックで大胆なミステリーをぜひ味わってもらいたい。
コメント