初版発行日 2000年8月31日
発行出版社 徳間書店
スタイル 長編
東京、郡山、宇都宮、大阪、函館、成田、香港、伊豆高原。犯人逮捕と人質の開放のために、十津川&亀井、必死の追跡!!
あらすじ
女子大生・小野ミユキが誘拐された。身代金は二億円。犯人の指示で父親の敬介が現金を携えて上野から<カシオペア>に乗り込んだ。十津川と亀井は東北新幹線で先回りし郡山から乗車するが、敬介も二億円も消えていたのだ!
小説の目次
- 誘拐
- ラウンジカー
- 閉鎖集団
- 新たな事件
- 地下通路
- 終局への始まり
- 終章
冒頭の文
東京のR女子大の一年生、小野ミユキが、誘拐された。
小説に登場した舞台
- 上野駅(東京都台東区)
- 寝台特急カシオペア
- 郡山駅(福島県郡山市)
- 宇都宮駅(栃木県宇都宮市)
- 長万部駅(北海道・長万部町)
- 札幌駅(北海道札幌市北区)
- 新大阪駅(大阪府大阪市淀川区)
- 十三(大阪府大阪市淀川区)
- 函館(北海道函館市)
- 函館空港(北海道函館市)
- 新宿駅(東京都新宿区)
- 成田空港(千葉県成田市)
- 香港国際空港(中国香港特別行政区)
- 伊豆高原(静岡県伊東市)
- 海老名サービスエリア(神奈川県海老名市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 片山明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 大野刑事:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。犯人を追う香港行きの飛行機に乗る。 - 南刑事
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。犯人を追う香港行きの飛行機に乗る。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上本部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 松下:
北海道警の警部。 - 岸辺:
北海道警捜査一課長。 - 片桐:
北海道警の警部。 - 杉本:
大阪府警の警部。 - 波多野:
大阪府警の警部。 - 市川:
京都府警の警部。 - 武田:
静岡県警の警部。
事件関係者
- 小野ミユキ:
18歳。東京のR女子大の一年生。何者かに誘拐される。 - 小野敬介:
45歳。小野ミユキの父親。小野精機の社長。小樽生まれで札幌工大を卒業。娘を救出するために2億円をもってカシオペアに乗ったが、その後行方不明になる。 - 小野悦子:
42歳。小野ミユキの母親。世田谷区のサラリーマン家庭に生まれた。R女子大学の英文科を卒業。ミスキャンパスに選ばれている。 - 木村誠:
小野敬介の大学時代の同級生。かつて、小野敬介とともに会社を立ち上げたが、株に手を出して2億円近い借金を背負ったため、クビになった。寝台特急カシオペアの車内で射殺される。 - 彫玄:
本名は菊村竜次 60歳。大阪・十三の彫り師。7年前に亡くなった彫り師・彫正の弟子の一人。 - 戸田克彦:
40歳。彫玄の恩人である浅草橋の刃物問屋主人の息子。 - 村越けいこ:
浅草国際通りにあるクラブ「センチュリー」のホステス。寝台特急カシオペアの車内で射殺される。 - 島村英男:
浅草にある島村酒店店主の息子。戸田克彦の弟分。 - 畠中由利:
島村英男の恋人。大阪に住んでいた。 - 小坂井香織:
京都の料亭の長女。白川と結婚していたが、戸田克彦と不倫をして失踪。 - 遠藤亜美:
19歳。東京のR女子大の一年生。小野ミユキの友人。何者かに誘拐される。 - 遠藤祐一郎:
遠藤亜美の父親。K製菓の重役。 - 遠藤美津子:
遠藤亜美の母親。
その他の登場人物
- 阿部:
JR北海道の職員。 - 山下:
JR北海道の職員。 - 弘子:
十三の飲み屋「菊水」のママ。彫玄とは十年来の付き合い。 - 彫昌:
浅草の彫り師。 - 矢野:
入れ墨愛好会の会員。浅草で映画館を営む。 - ゆうこ:
浅草国際通りにあるクラブ「センチュリー」のホステス。村越けいこの同僚。 - 真田:
鳶職の頭。 - 島村美佐子:
島村英男の母親。 - 近藤真一郎:
デザイナー。
印象に残った名言、名表現
(1)誘拐事件にも種類がある。
誘拐事件は、全て、同じではない。純粋に、金目的の犯行もあるし、人質にとった人間への恨みのケースもある。また、両親を恨んでいて、子供を、誘拐するケースもあるのだ。
(2)警察同士のメンツの張り合い。
「道警が、こちらの誘拐事件に、介入してきて、ひょっとすると、こちらの事件まで、解決してしまうかも知れん。そうなったら、警視庁の面目は、丸つぶれになる」と、三上は、いう。
(3)警官だって組織人であり、評価制度がある。誰だって手柄を自分のものにしたい。
合同捜査になると、半分ずつの手柄ということにはならないことが多い。片方が、犯人を逮捕して、一方は、その補助的な位置になってしまう。
誰だって、そうなりたくはない。だから、ぎくしゃくしてしまう。
(4)不安を感じると人はヘマをする。
不安を感じた犯人たちが、ヘマをやるというのは、十津川の期待である。しかし、全くの、根拠のない期待ではない。二十年間の刑事生活で、どんな犯人も、不安に襲われると、ヘマをやるのだと確信している。ただ、どんなヘマをやるかは、わからないのだ。犯人の性格によっても違うし、単独犯か、複数犯かによっても違ってくる。
感想
壮絶な追跡劇だった。
犯人を追って、東京、郡山、宇都宮、大阪、函館、成田、伊豆高原と、ニシヘヒガシヘ奔走し、ついには、海を超えて、香港まで犯人を追いかけた(正確にはバンコクであるが)。十津川警部の執念の追跡だった。
その発端となったのが、小野寺ミユキの誘拐である。この誘拐の身代金に2億円を要求され、父親の小野寺敬介は、身代金をもって寝台特急カシオペアに乗車。十津川警部と亀井刑事が郡山で待ち伏せていたにも関わらず、2億円も奪われ、小野寺敬介も失踪してしまったのである。
これが事件を難しくしてしまった。
もし、郡山で犯人を逮捕していれば、事件は簡単に解決していたし、その後の殺人事件も発生しなかったと思われる。ここから、十津川班の必死の捜査と追跡が開始される。
身代金を奪われても、人質は帰ってこない。その後、殺人事件が起こり、さらに、新しい誘拐事件が発生。おまけに、寝台特急カシオペアに爆弾をつけて警察を脅すという、前代未聞の規模にまで発展していく。
警視庁の総力戦とも呼べる必死の追跡劇が始まるのだ。もちろん、指揮官は十津川警部。
ここからどんな追跡撃が始まるのか?最後に待ち受ける、意外な結末とは?ぜひ、本書を手にとって楽しんでもらいたい。
ちなみに、十津川警部シリーズでは、これまで何度も誘拐&追跡劇が描かれている。例えば、2001年刊行の「しまなみ海道追跡ルート」、2013年刊行の「長野新幹線の奇妙な犯罪」などがそうである。
これらの作品も、手に汗握るスリリングな作品だ。
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