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十津川警部「記憶」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

記憶小説

初版発行日 2004年11月20日
発行出版社 角川書店
スタイル 長編

私の評価 3.8

POINT】
鹿児島、熊本、大分、福岡、山口、島根、奈良、静岡…。SLと桜の記憶を巡る謎。前代未聞の事件に、十津川警部の推理が冴え渡る!
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あらすじ

東京郊外で若手カメラマン誘拐事件が発生。しかし犯人からの要求はなく、三日後にカメラマンは無事保護された。十津川警部が被害者の身元を調べると、幼少時に河原で発見され養護施設で育てられたことがわかる。それ以前の彼の記憶は「SL、桜、二人の男女」という曖昧なものだった。十津川はこの記憶が事件に関わる鍵と睨み、捜査を開始する。その矢先、静岡の大井川鐵道で第二の事件が発生し……。

21年前、永井俊の身の回りに何が起こったのか?

小説の目次

  1. 誘拐
  2. 桜前線
  3. 第二の誘拐?
  4. 大井川鐵道の桜
  5. 誰がSLに乗っていたか
  6. 一家崩壊
  7. 記憶の感性

冒頭の文

その一一〇番があったのは、二月二十日の午後五時すぎだった。東京の街も、薄暗くなっていた。

小説に登場した舞台

  • 鹿児島空港(鹿児島県霧島市)
  • 隼人駅(鹿児島県霧島市)
  • 肥薩線
  • 吉松駅(鹿児島県・湧水町)
  • いさぶろう号
  • 矢岳駅(熊本県人吉市)
  • 大畑駅(熊本県人吉市)
  • 八代駅(熊本県八代市)
  • 熊本駅(熊本県熊本市)
  • SLあそBOY号
  • 宮地駅(熊本県阿蘇市)
  • 大分駅(大分県大分市)
  • 九大本線
  • 豊後中川駅(大分県日田市)
  • 久留米駅(福岡県久留米市)
  • SLやまぐち号
  • 津和野駅(島根県・津和野町)
  • 津和野殿町通り(島根県・津和野町)
  • 新山口駅(山口県山口市)
  • 岡山駅(岡山県岡山市)
  • 大阪阿部野橋駅(大阪府大阪市阿倍野区)
  • 特急さくらライナー
  • 壺阪山駅(奈良県・高取町)
  • 吉野駅(奈良県・吉野町)
  • 吉野ロープウェイ(奈良県・吉野町)
  • 吉野温泉元湯(奈良県・吉野町)
  • 掛川駅(静岡県掛川市)
  • 金谷駅(静岡県島田市)
  • 大井川鐵道
  • 家山駅(静岡県島田市)
  • 千頭駅(静岡県・川根本町)
  • 寸又峡温泉(静岡県・川根本町)
  • ふじのくに茶の都ミュージアム(静岡県島田市)
  • 金谷駅(静岡県島田市)
  • 福井市役所(福井県福井市)
  • 箱根(神奈川県・箱根町)
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登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 本多時孝:
    警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
  • 三上本部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

中央テレビ

  • 大竹功:
    51歳。中央テレビのプロデューサー。ドキュメンタリー番組を担当している。
  • 杉本博史:
    中央テレビの職員。
  • 中島美香:
    中央テレビの職員。
  • 辻:
    中央テレビのカメラマン。

事件関係者

  • 永井俊:
    23歳。フリーのカメラマン。何者かに誘拐される。
  • 品田清之:
    金谷で大茶園を営んでいた資産家。21年前、火事で死亡。
  • 星川敏夫:
    30歳。大竹功が社長をつとめるBB研究所の所員。
  • 山本一郎:
    29歳。大竹功が社長をつとめるBB研究所の所員。
  • 塚原良:
    31歳。大竹功が社長をつとめるBB研究所の所員。

その他の登場人物

  • 田中:
    旅の雑誌『旅のストーリー』の編集長。
  • 加山:
    静岡県警の警部。
  • 小林:
    50歳。静岡県警の刑事。
  • 原:
    静岡県警の刑事。
  • 塩谷:
    55歳。金谷にある総合病院の医師。品田夫妻の主治医をしていた。
  • 野村:
    産婦人科医。品田夫妻が相談をしていた。
  • 小池:
    静岡文芸サロンの事務局員。
  • 井上:
    福井市内にある飲食店の店主。長井家と付き合いがあった。
  • 小野田:
    N新聞社の主筆。大竹功の大学時代の同級生。

印象に残った名言、名表現

(1)桜の名所、大畑駅。

大畑駅は、肥薩線の中の桜の名所で、ホームから延々と続く桜並木が、よく見える。駅全体が、桜で彩られている感じだった。

(2)車窓から見た、春の由布院。

由布院が近づいてくるにつれて、春らしい桜並木と、菜の花のお花畑が、車窓に点在する。単線の線路を走っていると、時々、大きな桜の木が、列車に覆い被さるように、満開の花を咲かせている。

(3)人気観光スポット、津和野殿町通りの掘割。

津和野の町は、いつものように、観光客であふれていた。道の両側の水をたたえた堀割には、大きな鯉が、群れをつくって泳いでいる。どれもこれも、栄養がよくて、太っている鯉だ。

(4)有名な桜の名所、吉野山。

吉野山は、春は桜、秋は紅葉で有名な山で、桜は、下千本、中千本、上千本、奥千本と、一ヶ月かかって、咲きあがっていくと、いわれている。

(5)花の吉野山。

吉野駅のホームに降りた途端、目の前は、桜だらけになった。花の吉野山である。

感想

本作は、「記憶」というタイトルにふさわしい、作品だったと思う。21年前、八王子の浅川の河原で捨てられていた永井俊の、記憶をたどるストーリーである。

21年前の記憶は、「SL、桜、二人の男女」。この3つのキーワードの謎を探るために、長井俊が桜前線にそって、鹿児島、熊本、大分、福岡、山口、島根、奈良、静岡と南下しながら、旅をする。

各地の桜の名所の描写がとにかく美しい。自分も旅をしている感覚になるし、その場所へ出かけたいと思う、旅情と感傷たっぷりのストーリーである。

やはり、過去の記憶は、桜とともにあるのが、美しいのだと、本作を読んで思った。

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